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第1章 幸と不幸

  序章


(第一章 幸と不幸)


 人は,ある切っ掛けがあるか、若しくは、追い込まれないと変われない。

 特にこの男もそうである。結婚してからも何も変わらず、女房にばかり働かせてのヒモでニートの引きこもり生活。

 赤ん坊がいて、面倒を見ないと行けないとの理由を着けて、外に出る事もほとんどせずに引きこもり。

 家事などもほとんどしないのに、女房に働いてくれと頼まれると「俺の職業は主夫だ! 主夫なんだ!」と言っては無理矢理女房を言い聞かせる。

 そんなだらしない男。女房もよく我慢するものだと思ってしまう。


 特にこの男、この世界とは違う世界からやってきた。

 元々、学校は行かない。働く事も嫌。親元でニートと引きこもり生活をしていた訳だから、何も出来ないのだ。


 そんなどうしょうも無いこの男も、異世界転生をすれば、アニメやマンガ。ライトノベルの主人公の様な日々冒険。

 ━━夢の様な生活が遅れれば宜しいのですけど、実際はニートで引きこもりな訳ですから、現実はそんなに甘くわなし、その様な夢物語など起こるはずもないし、出来るはずもないのだ。


 それに日頃から、楽ばかりをしていますから、体も鍛えていないし、体力もない。

(もしもそんなにも、体を鍛える努力が出来るなら、ニートや引きこもりなど、してはいない)

 だから冒険などすると、本来はその日で、この世から簡単に消えてなくなります……。


 そんなどうしょうも無いこの男。転生した場合が良かったのか!?

 ━━転生して、見知らぬ土地をさ迷い、疲労と空腹とで気絶したのだが、野垂れ死になどせずに、助かったのだ。

 特に男が助かった要因は、人魚と言われる種族の集落近くに、転生したのが良かったのだ。


 ━━目を覚ました男。目覚めると周りには、エメラルドグリーン、青色の髪の人達が彼を取り囲んでいる。


 ━━そんな、まるで海を強調した様な髪の人達。よく見ると、つ〜んと尖った耳は、アニメやライトノベルに出てくる様な、エルフとは違う。魚のヒレの様な形をしており。


 ━━象牙の様な白い肌━━髪色も濃いめのブルーにエメラルドグリーン!

 ━━瞳の色は、清んだ海の様な碧眼の瞳なのだ!


 そんな髪色に碧眼の瞳を持つ人達。よく見ると、指と指の間にもヒレの様な物もあり、最初目覚めた時、男は失礼にもビックリしてしまいました。


 ……たがそんな小さいながらも、ヒレを持つ人達。

━━よくよく観察して見てみると、回りにいるのは女性ばかりで、容姿も大変整っている。

 ━━更に女性達を観察する男──服装の方も、上下ビキニ水着に、まるで腰にパレオを巻いている様な仕様であり、足にヒレこそないが、まるで童話の世界に出てくる人魚姫のようなのだ。

 だから男は、恥ずかしくなり、じろじろと観察するのを辞めて、うっ向いてしまった。


 照れてうつ向く男に、人魚の女性達は興味津々!?

 ベットを取り囲んでじろじろ見つめ。

「大丈夫?━━「痛いとこはない?」━━「何処から来たの?」━━「何故髪が黒いの?」

 男に対して色々と質問が飛んでくる!?


 ……露出の多い服装の、綺麗な女性達に、質問攻めにあう男。

 こんな事など、今迄の人生では、経験などないので「あ、あのう……」と言うだけで対処に困ってしまう。

(どうしよう? どう説明しよう? ここは何処なのだろうか……?)そんな事を考えていると!?

 男を取り囲む女性達の間が割れ。一人の大柄な男性が入って来た!

「──誰なのであろうか?」瞬時に考える男に大柄な男は──


「目が覚めたか兄ちゃん?」

 大柄な男は、兄ちゃんと優しく問いかけてきた?

「はい」と答える男。━━「ここは何処なのですか?」と直ぐに聞き返した。

 すると大柄な男は━━

「ここわな、人魚の集落だ。兄ちゃんはこの集落の近くで、衰弱して倒れてたんだ。もう少しで死ぬ所だったんだぞ、助かって良かったな」

 そう言いながら腰に手を当て、大きな口を開けながら笑いだした。

 ──見た目は怖そうだが、良い人そうなので、男は心底安心した。

「貴方、倒れてた人の容態はどうですか?」

 ──声と共に、大柄の男性の後ろから女性が現れる!

「あああ、ごめんごめん。もういいみたいだぞ、大丈夫そうだ」

「そうですか、それは良かった」

 会話を交わす二人。話し終えると、顔を見合せ笑顔を交わし、男の方を向き微笑みかける。

 大柄な男に寄り添う彼女。その後は、自分に抱き寄せる。

 ……仲の良い二人の行動を見とれている男。━━目と目が合うと二人は男に、ここは何処で、どう言った集落なのかと、事細かに説明してくれた。



 ◇◇◇




「━━ここはな兄ちゃん。ロダン王国の南に位置する海辺の町で、人魚といわれる女性しかいない種族がいる集落だ。そしてここにいるのが、長のはシュトリー。そして俺の嫁さんだ。もし解らない事があれば、俺かシュトリーのどちらかに聞いてくれ」

 大柄な男が、話し終えると──嫁のシュトリーが話しかけてきた。

「宜しくね!」と問うてきた後に「……え~と名は……?」と、名前を知らない、長のシュトリーが、困ったような顔をしていたので男は──

「名は直人といいます!」と答えると──「直人君か!宜しくね!」と微笑みながら答えてくれた。


 ──その微笑みを見て、思わず見とれてしまう直人。周りにいる女性達も容姿共々、大変に美しいのだが。

 特にこのシュトリーという名の女性は、群を抜いて綺麗なのである。

 まさに大人の人魚姫とでも言って過言ではない美しさ。青い肌をしていても全く気にならないほど美しいのだ。

 ──そんな容姿に見とれて一目惚れをしてしまう!


 ━━デレ顔で、回りばかりを見ている直人。女性ばかりを観察しているが、ここは見知らぬ土地。これから先どうするのであろうか!?



 ◇◇◇



 直人、この世界に漂流にしてから月日も経ち。ここでの生活も慣れてきた。

 普通ならば、この女性ばかりの集落。お婿さん募集のシーズン以外は、規則で男性を集落に入れないのだが。

 皆に異世界から自分はやって来たのだと言って回る直人。

 別の世界からやって来たから、ここから追い出されると、右も左も解らない自分は、この世界では、生活出来ないから死んでしまうと、長夫婦に泣きついて置いてもらえる事になる。


「やったー!助かった!」そう思う直人。

 この集落、女性ばかりで、男性には甘いし情も深い。

 特に若くてピチピチしている男性など、何十年か何百年ぶりに見るのだから珍しい。


 この集落にも、多種族だが男性がいない訳でもないが、居る者は、皆妻子持ちで、年齢の方も経っている者がほとんどなのだ。

 だから、本来ならば気絶して倒れた時点で、死んでいた直人ではあるが、若さと黒髪、ひょろっとした細身の体。それでいて背が低いのが可愛く見えて拾われたらしいのだ。


 だから直人、ニートで引きこもりしか取り柄もなく、未だ彼女など出来た事などないのだが。

 彼女達と目が合うとすぐに真っ赤になるし━━そんな直人を彼女達から見ると、可愛くてしょうがなく、母性本能をくすぐるらしい。


 この集落で唯一の若くてピチピチとした男性、直人。人魚の女性達は、発情期でもないのに、毎日の様に入れ代わり立ち代わりと、直人に婿にこないかとアプローチを繰り返したのだ。


 特に人魚といわれるこの種族達。人種と違い長寿の種族に分類される。女性盛りの容姿になるまでは、人種と同じ様に年齢を重ねるのだが。

 いざ女盛りの容姿になれば、姿形はそのままで、千年近くも暮らせるのだ。

 だからこの人魚の集落は、容姿の良い、女盛りのムンムンとした独身女性達で一杯なのだ!!


 毎日の様に通いつめて来る女性達。直人には、人生最大のモテ期がやってくるだ。


 ━━やりたい放題、したい放題。直人のピチピチした、勢いのある若いDNAを求めて、人魚の女性達が群がってくるのだから、この集落始まって以来の大騒ぎになる。


 ━━なかなか収まらないこの大騒動!

こんな状態になるから代々長は、男性を発情期以外は、女性達に近付けないようにするし、閉鎖的にしてきた。

 夫を迎えいれる事が可能なのも、毎年選ばれた数少ない者の已で、男性は妊娠が解れば出て行くことが大いい。

 だから男性が定着しないこの集落。若い男性は、大変貴重で珍しいしから、直人の争奪戦で、それはもう大騒ぎなのだ。


 ━━━━━━


 そんな騒動が続く中。月日ばかりが過ぎていく、直人争奪戦も終止符が打たれたのだ。


 ━━その騒ぎを納めたのは、長の娘のであるイレーヌであり、長似の美少女で、母親であるシュトリーに憧れていた直人は、一目見て気に入り。結婚したのであった。


 仲むずましく暮らす二人。子供も出来て幸せの絶好調に!


 ……俺はなんて幸せなんだー! 直人は、声を大にして叫びたくなるし衝動に駆られる。


 ……だがそんな大変幸せな生活も、長くは続かない。━━ある日突然崩れたのだ。


 義理の父を含め集落の男達は、国の海賊討伐の要請に従い。先方を務め皆戦死をしたのだ。

 国からの報を知らされて、大騒ぎになる集落。残された男手は、直人已となってしまった。


 直人にかかる責任と言う名の呪縛……。

 今までに、ニートと引きこもり、結婚してからは、ヒモ生活と……。

 そんないい加減な生活しかした事もなく、どうしたら良いのか解らない?

 それに今からは、死んだ義理の父の代わりに、集落の武の事を補わなくてはならない……。


 どうする?どうする?どうしたものか……?


 義理の母である長のシュトリーには、頼りにしてると言われるし。

 これからは男手を集め、自警団を組織しないと行けないし。

 集落に利益を生むことを考え。ここに住んでる女性達を皆養い、守ってやらないと行けないのだ。

 そんな人魚の集落。武もいるし体力もいる。それに夜も強くなくては行けない。だからここで暮らすのは覚悟はいるし、普通の男性が暮らすのは、難しいのだ。


 なのに直人は、そんな事など全くしらないので、そんな暗黙のルールがある人魚の集落に足を踏み入れてしまったのだ。

 その上、女性達にはやりたい放題して、子供まで作ってしまったのだから、集落の女性達は、若い直人が何とかしてくれると、思っているのだ。


 集落の女性達から、ひしひしと伝わる期待感。直人はそのプレッシャーに押し潰された。

(そんなに期待されても俺には、無理だ、あの人達みたいに、戦にも行けないし、自衛も無理、あんなにもいる女性達を食わす事など無理だ。)

 そう思うと直人は、夜集落の皆が、寝込むと闇に紛れて女房と子どもを連れて夜逃げしたのだった。

 直人を助け、優しく世話してくれた集落を見捨てて、なんとも酷い男なのであろうか……。



 ◇◇◇



 夜な夜な走り続け、大きな街へと着いた直人とイレーヌ。泣く子をあやしながら、自分達がこの街で暮らすための家を探す。


 ━━歩き回る事数十分。家賃も安く、マルシェにも近い賃貸を探した。

 ここに決めようと、二人で決めて、ルーインと言われるこの大きな街で暮らしを始める。


 最初の頃は、日雇いとかで仕事に出てた直人も、力仕事が多いこの世界、段々と続かなくなる。

 元々ニートで引きこもりだった直人。体力には自信がなくて、仕事の最中も休憩が多く、直ぐに仕事を首になって帰ってくる。


 このままの状態では、生活が成り立たないと、女房のイレーヌも、働きに出ることを決意する。


 ……………………


 実は実は、これがよくはなかったのだ、女房のイレーヌ働きに出ると、まだまだ乳飲み子の愛娘のすみれを面倒みる者のいなくなる。

 日雇い扱いの直人。仕事が有る無いが、激しいので自分が面倒を見ようと、言い出したのだ。


 直人とイレーヌ立場が逆転する二人。働きに出るイレーヌ、家で家事をする主夫の直人。

 それでも最初は二人上手くいっていたのだが。月日が経てば、昔の杵柄を取ったニートと引きこもりの癖が、段々と出て来て家事をしなくなってくる。


 仕事から帰るといつも、あれ放題の家の中!

 ……その様子を見てゲッソリしてしまうイレーヌ。

 ……ベッドで寝ている直人を見つめ、溜め息を着きながら、片付ける日々が続くのだが、毎日の仕事と家事に段々と、疲労とストレスも溜まる。


 それに女性が働きに出ても、お給料はたかが知れている。

 直人に働きに出てくれないかと、せがむイレーヌだが、当の直人は、俺は主夫してるから働きに出たくないと駄々をこねる。

 その日説得は、しょうがないかと諦めるイレーヌ。次の日にもお願いをしたのだが、中々「うん」とは言ってくれない。


 朝起き、朝食を作り、売り子の仕事に出る。帰ると夕飯の支度。夕飯を直人と食しながら今日の出来事を話す。そして親子三人で沸かしたお風呂に入り、娘を寝かす。

 その後は、直人と二人して話しをしながら、イチャイチャし、夜伽をしながら愛を確かめあう。

 実際直人は、優しいし、毎晩愛してもくれる。

 こんな生活でもいいか?これでいいのかも?

 ……人魚の集落なら、イレーヌもこれでも良かったのかも知れない……男性は直人だけだから……。


 だが外に働きに出ているイレーヌは、視野も広くなっている。ここは、人魚の集落などとは違って、賑やかで派手やかなのだ。


 ━━それに大勢の種族の男達もいる!


 そして当のイレーヌはというと、とても子供いるようにも見えない。

 それどころか、子供を生んでいるせいか、直人と結婚したころとは違い。可愛い美少女ではなく、美しくさと妖艶さを持った大人の女性へと変身しているのである。


 だから売り子をしていても、彼女目当てで買い物にくる男達も多いし、言い寄ってくる男も多い!

 人魚の集落にいた頃とは、ちやほやされる立場も、直人とイレーヌは入れ替わってしまった。


 人魚の集落では、若い男が珍しく皆が良いと言うので、ムキになり手に入れた直人だが、この街に来たら男性が湯水のごとくいる。

 それどころか、自分目当てで、買い物に来てくれるお客様も沢山いる。

 それに食事のお誘い。お付き合いをしてくれないかと、何度も何度も誘われる。

 主人と子供がいるので無理ですと断っても、それでも良いと誘っくれる人も多い……。

 段々と自分自身の心の中で、直人との貧しい生活に嫌気がさしてくる。


 ……何故こんな男と結婚して、子供を作ってしまったのかと!?



 ◇◇◇



「だだいま……」

「あ、お帰り、今日は遅かったね?」

「うん、今日は店が忙がしくて、店主さんに頼まれて……」

「へえぇえ……そうなんだ……そりゃ大変だったね、じゃ食事どうしょう? 簡単な物で良ければ、今からは作ろうか?」

 寝室から娘のすみれを抱いて連れてくる直人。その様子を見ながらイレーヌは━━

「大丈夫よ、出店で惣菜を買ってきたから……」

「ん?そうなんだ……で、どうしたのこれ、豪華だけど、お金大丈夫……?」

 出店で買ってきたと言っていた惣菜を見て、直人はビックリしてしまう。皆どれを見ても高そうな物ばかりで、こちらの世界では初めて見る物ばかり。

 だからついついと、お金の方は大丈夫なのか? と、心配してしまった。

「うん、大丈夫よ、店主さんが遅くまで頑張ってくれたからって、臨時で給金くれたの……だから大丈夫よ……すみれ、ママ帰ってきたよ〜」

 と、言葉を返し直人から娘のすみれを預かると、そのまま慌てて、服を着替える為に寝室へと向かう。

 その様子を見ながら直人も「そうなんだ……」と言葉を返しながらも──気の性かな? どこか女房が、いつもと違う気がするのだ!?

 そして何処が違うのかと聞かれれば、直人も良くは解らないのだが、何故かいつもと違う気もするイレーヌ!?

 ──そんな彼女を目で追い、直人は『考え過ぎかな』と思ってしまう。

 ま、いいか、女房が遅くまで仕事を頑張り、自分の為に用意してくれた料理だ、労わないといけないと、思いながら食事の準備を始める直人なのだった。



 ◇◇◇



「ふぅ……美味しかった!」

「うん、美味しかったね!」

「お風呂沸いてるから、一緒に入ろうか?」

「え、あ、うん。洗い物もあるし、洗濯物を洗いたいから、貴方は先、すみれと入ってくれるかな?」

 一緒にお風呂に入ろうと誘う直人。イレーヌは洗濯したいからと断る。

「洗い物は、お風呂を出てから俺がするから、それに洗濯も明日しておくよ、今日は遅くまで仕事してたんだから、もうゆっくりとするといいよ」

 お風呂を断るイレーヌに、毎日一緒に入るのを楽しみにしている直人は、食い下がる。

「ううん大丈夫……今日は夜も遅いし。貴方も明日まとめてだと、大変そうだから、代えもいる事だし下着だけは、洗っておくね」

「あ、うん。ごめんね……じゃ片付か無いだろうから、先にすみれと入るね」

 いつもなら「うん」と一言返事で一緒のお風呂に入るイレーヌ。結婚してから毎日行われてきた夫婦の行事が今日初めて中断された。

 毎日の夫婦のコミニュケーションの場だと、楽しみにしていた直人は落胆する。


 ──そして仕事が忙しい時など帰りが遅くなるし、夫婦の時間のずれが生じる様になるのかも!? そう考えると寂しくもなる。


「……しょうがないな……忙しそうだし……」そう自分に言い聞かせる。


 ……でもでも、まだまだ、大丈夫だ、すみれを寝かした後に夫婦二人の時間がある!

 その事を思い出しだ直人は、洗い物や洗濯を終えて、お風呂に入っているイレーヌをベットで待ちながら慌てて子供を寝かし付ける。

 まだかまだかと待つ直人。イレーヌは体を乾かしてベットに入ってくる。━━やっと待ちに待ったお時間だ! 直人嬉しくなりイレーヌ抱き着き甘える。

 するとイレーヌから信じられない態度と言葉が返ってくる。

「──貴方ごめんなさい。今日は仕事で疲れているから、夜は許してもらえるかな……」

 抱き付き甘える直人に、背を向け手で振るい退ける!

 そんな切ない態度と言葉が妻から直人に返ってきた。


「え、あ、うん解ったよ……お疲れ様…お休みなさい……」

 そんな言葉を言われるなど、まさかまさかで考えてもいないし、想像もしていなかった。

 結婚してから初めて妻から言われた言葉……直人のショックはかなり酷く──その日は朝まで眠れなかった……。


 その晩夫婦の行事が二つ、初めて中止になった……。



 ◇◇◇



 あの晩から数日が経ち、直人とイレーヌの夫婦の間での営みは、ほぼ終わった。


 あの日から、毎晩仕事が遅くなり、酷い時には深夜に帰る時もあり、酔ってお酒の匂いがすることも度々あった。

 酔った日などそのまま寝る事も多く、翌日聞問いただすと、、店の人達と飲んでいと告げるのみ。


 とうとう我慢も出来なくなり、昨夜直人は、毎日仕事が遅い事と、お風呂も一緒に入るのも嫌がる事。化粧も濃くなり、派手な下着を妙に着衣しているので、どういう事かと問い詰めた!?

 ただ仕事だとしか言わないイレーヌ。とうとう頭にきた直人は、初めてイレーヌを殴った。


 するとイレーヌは──

「貴方わるいのよ……貴方が働いてくれないから……」と泣きだした……

 その台詞聞いて「ごめんね」とだけ言って直人は、謝罪誤した。

 そして自分達の為に頑張ってくれているのだから、遅くなるのは仕方のない事、実際給金は上がっているみたいだし!?


 ……………………


 ……そう給金は上がってるみたいなのだ!?

 又何故そう直人は、思えるのかは、イレーヌのお金の派手遣いだ。

 仕事の帰りが、遅くなりだした頃から、服の量も増えた。

 子供のすみれにもよくよく服を買ってくる。

 そればかりか宝石などのアクセサリーを買って帰った事もある。


 そんな妻イレーヌの行動を見ながら、度々直人は不振に思う!?

 ……女性の給金でそこまで買える物なのか?

 だから直人は 疑問に思い? いい気かいだとばかりに問い詰めた!

 ……でもでも、ただただ、イレーヌは泣くばかり……。


「ごめんね、殴って、もう怒らないから、お風呂に入ってゆっくりするといい……」

 そうイレーヌに告げると彼女は、慌てて寝室に入り部屋着を持って来て、お風呂に入った。

 それを確認した直人、思わず妻を殴った罪悪感から涙が出て、声を漏らし泣き出した。

 直人が泣く姿にビックリしたイレーヌ。彼の方を見る!

 すると見られた直人。女房に声を出して泣いてるのを見られているのが恥ずかしくなり、慌てて寝室に入る。

 寝室に入るとイレーヌの服と下着が脱いだまま放置されていた。

 それを見て涙を拭きながら「仕方ないな……」と思いながら片付けようと集めると、服と下着から何か違和感を覚える!?

 ………………………?


 ……下着に他の男のDNAの匂い?そして服からも他の男の匂いがする気がする!?


 ……どういう事……?

 何故他のの男の匂いがする……?

『━━ワナワナ……』と涙も止まり、逆に怒りで体が震えてきた!

 どうも妻のイレーヌは、直人以外の男性を会っているみたいだ!?


 ……………………?


 よくよく考えてみると、昔自分がいた世界で見た、ドラマや漫画などに書いてあった話しのパターンと、よくよく似ている様な共通な点がある。


 男に貢いでもらっているのか、身体を売っているのかは判らないが、とにかく浮気をしているのは間違えない。そう考える直人。


 どうしよう?問いただすか?どうする、どうする、どうする……?


 考えれば考える程、怒りと嫉妬心で狂いそうになる。自分は騙された。悔しいイレーヌに浮気相手の名を問い詰めて、呼び付け文句を言うか……?

 頭の中で色々な事を考える。もうパニックになりそう……

「貴方……大丈夫ですか?」

 イレーヌが心配そうに、部屋に入ってくる。

 文句を言ってやるつもりだったが、今問い詰めて家を飛び出されるのがいやだ。

 特に夜だ、このまま男の所に逃げ込まれて、二人で夜を明かされるのが嫌だ。

 だから『ぐっ』と堪えて苦笑いをしながら「あああ、大丈夫だよ……」と告げる。


 そんな夫を見ながら、不思議そうにするイレーヌ。ふと直人の手元を見ると──服や下着を持っているではないか!


 ━━慌ててるイレーヌ!

「貴方それ……?」と言いながら手を差しのべて、服と下着を取り返そうとする。

 そんな慌てるイレーヌに、服や下着から他の男の匂いがしたなど、何も気付いていない素振りで渡しながら「今日はもう遅いから明日洗っておくよ」とだけ言った。

 そんな直人のを顔を見て、何故だか判らないが、イレーヌ萎縮してしまい「は、はい」とだけ言った。


 ──覚めた目でイレーヌ見つめる直人!


 そしてイレーヌにもう遅いので寝ようと告げる……

 一緒にベットに入る二人。相変わらず何も気付いていない素振りで、直人はイレーヌに夜伽を試みる。今日もやはり疲れたとイレーヌは断るが、浮氣を知っている直人はそうはいかない。

 強引に始めイレーヌのあちらこちらから、匂いとDNAの確認を取る。

 お風呂に入っていても、やはり他の男のDNAの匂いが取れてない。

「くそ、くそ、くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 ──何度も最中に声をだした。涙も出た。もう嫌だ辞めようと何度も思った。

 ──イレーヌの悶える顔と、途切れ途切れる甘い声が漏れだすと、他の男のこんな顔をしたのか?そして声を漏らして、悶えたのか?

 ………そう考えると首を絞めて何度も殺してやろうと思った。

 ………そして自分自身を死のうと……

 ……………………でも……出来なかった。好きだから!愛しているから!それに愛娘のすみれもいる。


 ──だから無駄な抵抗だと思うが、直人は上書きを何度も何度もした!嫌がるイレーヌを翌日の朝まで寝かさなかった!


 ……でもこれがいけなかったのかも……嫌がるイレーヌを強引にした事が……


 次の朝目覚めると直人は、イレーヌに浮気の事を問い詰める!

 最初は知らないと言い張る彼女に他のDNAの匂いが服や下着。イレーヌ自身にからしたと問い詰めると諦めて白状した。


 とりあえずは店に通う金持ちの商人とイレーヌは関係持ったみたいで、女にならないかと前々から彼女は誘われていたらしい。

 向こうは浮気の囲い女なので、直人がいても構わないといているみたいなので決めたらしい。


 ━━その話しを聞きイレーヌに「お前ふざけているのか」と言い、駄目だと告げると、今度は、このままでは生活出来ないし、買い物などして、自分自身を着飾りたいから我慢してくれと言ってきた。


 それを聞き直人は、駄目だ、男と別れろ、自分が仕事に出て稼いで、買ってやるから頼むから別れてくれと、何度も何度も頭を下げた。

 イレーヌの目の前で男泣きしながら、今度こそ、今度こそはと、自分が変わるから許しして欲しい。今回の件も見逃すから『あの男と別れてくれよ』とお願いした。


 その話しを聞き。イレーヌも納得したか?

 彼女自身もやり直したいと言ってきた。

 そしてあの男と別れて来るから家で、直人に待っててと告げたのだ。

 良かった良かった、イレーヌと別れずにすんだ。直人は素直に喜んだ。


 ……………………?


 時間だけが、ただただ経過する……。

 お昼も過ぎたころイレーヌがやっと戻ってきた。

 それも沢山の男達を連れて──


「やっぱり直人、私別れるね、すみれは私が育てるから、ここから出て行ってくれるかな!?」

 イレーヌは冷たい目で直人を睨み、低く怒気含んだ声で、台詞を吐いてきた。

 その台詞を聞き憤怒して怒鳴り声あげる直人。

「はぁああ、お前何考えているんだ!いいかげんにしろ!俺は別れる気はないぞ、それにどいつだ男はー!俺の女房だぞ返せー!」

 イレーヌの手も掴み、自分の方に引き寄せようとすると──

「──痛いじゃない放しててよー!」

 掴んでいる直人の手を振り払ってきた!

 こうなると直人も向きになる、無理やりでも離すものかと両手で取り押さえようとする。


『ドゴ!』━━『ボコ!』━━『ガシャーン!』━━

「うげ!」━━「ごほ!」━━「うが……!」

 テーブルの上に倒れて込む直人! 一瞬目から火花が飛ぶ!

──何が起きたのだろうか?全く持って判らない?

 鼻をから生暖かい物が流れている。手で拭いてみると、赤い血。

……どうも直人は周りにいた男達に殴られたみたいだ。


 ━━下から男達を見上げる! 前の直人なら、ここで泣いて土下座をして平謝りしながら許しを乞おうと努力をするのだが。今の直人は違う。自分の女房を取られたくない。なんとして取り返すのだと、立ち上がり再度男達に殴りかかった!


「━━お前らぶっ殺してやる!」

 勢いよく飛びだし!利き腕の右手を腰を入れながら、弓の弦の様に後ろに引き━━男達に殴りかかる。


 そんな直人の力一杯の攻撃を、イレーヌか連れてきたチンピラ風情の大柄な男達は、難なく、ヒヨイ、ヒヨイと交わす!

 ━━『ボカン!』━━『ボゴッ!』━━『ドカン!』━━

 逆に直人から「うが!」━━「げほ!」──「お、えぇええええええ……!」と、声がしている。


『ドゴン!ドゴン!ドゴン!』━━「ドカ!ドカ!ドカ……!」

「いてえええええええな!」──「うぐ、げほげほげほげほ……」

 あちらこちらから、殴る、蹴るはで、男達に袋叩きに合っている直人。

 それでも憤怒しながら何度も何度も、立ち上がり男達に殴りかかるのだが。

 今まで喧嘩などした事の無い直人。

━━殴りかかっても避けられて──再度、懲りもせず、殴りかかるが避けられての──繰り返しなので最後は力尽き、その場にへたり込む──すると今度は男達、殴るの辞めて、蹴っり出した!━━袋叩きに合う直人!


━━直人の本能が、体を丸め、両手で顔をガードし始める!!

「うぐ、ぐは、ごぼ、はぁはぁはぁ、う、うううう、イレーヌを……返せ……う、ううう……うぎゃー……」

 ……直人生まれて初めて他人に逆らい抵抗した。

 元々引きこもりの原因は、同級生による複数からの嫌がらせだ。

 その時は抵抗などせずに、学校へ行くのを拒否することて回避した。

 だが今度は、違う、嫌がらせを受けた同級生達が、可愛く見えるような、チンピラ風情の強靭な男達。

 直人がいた世界の日本では、いないタイプの男達。女房を取り戻す為に真っ向から挑んだ!

 先程迄の勇ましい姿。仮に両親が見たら、強くなったと、感動して嬉し泣きするのでは無いかと思えるぐらいだと直人は内心思ったくわらいだ。


 ……そして果敢に挑んだが、力尽きた……、

 ……遠退く意識の中、殴り返す気力も尽きた……

 家の中で血だらけて倒れている直人。男達はぼろの巻いたジュータンでも持上げるかの様な扱いで、持上げると──家の外に直人を放り投げた━━


 ━━放り投げられた直人。目覚めなければ良いのだが、ついついと、そのショックで目を覚ます!


 ━━薄っすらと見える光景にイレーヌと男達の顔が見えた!

 最後抵抗を試みる直人。

「……くそー!……俺の人魚姫を返せー! お前達顔を覚えたからな……絶対に復讐してやる……絶対に一人づつ見つけて、必ず殺してやるからな……」

 そう男達に、薄ら笑いをしながら、最後の力を振り絞り叫んだー!


その直人の言葉を聞き、男達達は憤怒する!

「はぁ、あああああああああああああくそガキが!」

 一人の男が憤怒しながら怒鳴り、近付いた!

 顔が腫れ上がり、元の原型が解らなくなっている直人。その髪を握り持上げると、いきなり隠し持っていた短剣を抜き━━直人の左の目から頬にかけてを切り裂いた!


「━━うぎゃ、やややややややややややややややややややややややややややややや痛い、痛いよ、痛い。……目が、目が、目が痛い。痛いよー!……助けて……助けて、助けてよー! イレーヌ……」

 直人は切られた目、頬を抑えながら、家の外の道の真ん中で、のたうち回る。

「あ、あ、貴方……」

 直人の酷い様子を見て思わず心配になったのか!?

 イレーヌから声が漏れる。

「貴方達、誰もここまでしろとは、言ってないわ、死んだらどうするの?」

 そうイレーヌが、男達に文句を言うと!

「あれぐらいしないと、あの男、一生あんたに付きまとうぞ、それにあんた言ったんだろう、付きまとわれないようにしてくれと!?」

「えええ、そうだけど………」

同情心か、哀れみか!? 直人を見つめ、近寄事を試みる!

だが、男達の呼ぶ声━━直人にすり寄るの止める!

「人が集まってきたから行くぞ!」

 この騒ぎに野次馬が集まりだした。不味いと思った男達は、イレーヌにこの場を去ると告げる。

 その言葉を聞いた彼女。とっさに慌てて家に入るとイ、すみれを抱き抱え、慌てて男達と人混みの中に消えてった。


 その様子と会話を虫の息ながらも、聞いていた直人。イレーヌの事を信じていたのに……

 男達を連れて来たのは、相手の男ではなく、イレーヌだった事に気付く、どうも無理にやられたのが不満なのか?またやられると行けないので連れて来たのか? それとも自分自身が暴力を振るうとでも思ったのか、その辺りは直人には解らないが?

これで二人の夫婦生活は終わったのだー!


 直人は彼女に捨てられた事が、解ると体の力が抜けていく。

すると今まで、身体中を駆け巡っていた、アドレナリンが止まったのか!?

急に目、頬、身体中の痛みが走りだす━━!

痛みでで、痙攣と寒気。直人は、更に丸まりながら震える!


「悔しいな……マジで悔しいな……俺の人魚姫獲られちゃった……くそー!……絶対にこんな所で死ぬもんか、絶対に生きて再起してやる。……そして絶対に後で後悔させてやる。絶対にあいつらに復讐してやるからな……」

 直人は込上げる憎悪うを抑えながら、深く深く念を込め復讐を誓うのであった。





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