表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

プロローグ

「あぁっ、取ってー!」


 ここから、少し遠い未来。

 和歌山県の潮岬。

 夏の太陽が照り付ける海岸沿いの岩場。

 そこで、何人かの少年少女達がボールを使って遊んでいる。


「あまり、遠くに行かないようにね」


 20代であろうか、若い女性が声を掛けると、


「わかってるよ、ユカねぇちゃん!」

 集団の中の一人が返事をする。


「もう、みんな、ボールで遊ぶ年でもないのに」

 ユカねぇちゃん、と声をかけられた女性は、楽しそうに遊ぶ7人の少年少女を見つめていた。


「すっかり、平和になったなぁ……」

 そう独りごちながら見せた笑みは、少し憂いを帯びたものであった。


 彼らは、東京にある白クローバー孤児院に暮らす子供たちだ。その多くは、7年前に勃発した世界大戦の戦災孤児である。

 ユカと呼ばれた女性ーー三上有香もその孤児院出身の戦災孤児である。ユカは、大学を出て、博士課程まで進んだ後に、白クローバー孤児院にて先生をしていた。

 そんな彼らは夏休みの余暇を利用して、和歌山県へ遊びに来ていたのである。


「ユカ姉!」


 ふと、集団の中の男の子が、ユカを呼ぶ。

「そんなとこで一人で居ないで、ユカ姉も遊ぶっすよ!」

 そう言いながら、その男の子は、ユカを手招きする。


「わかったわかった。今行くから、待っててね」

 ユカも返事をしながら、声をかけた少年の下へ向かう。

 そして、ボールで遊ぶ子供たちの下へユカが辿り着いた、その時だった。



 突如、地面から地鳴りが響き渡る。



「え、なに?」

 ユカは一瞬戸惑い、すぐにこの地鳴りが地震によるものだと気付く。


「みんな、私の下に来て!」


 そう叫んだ次の瞬間。


 ユカ達の居た地面が、鋏で切られた折り紙の様に裂けた。


「……え」

 ユカが気付いた時。



 ユカを含めた少年達8人は、叫び声を上げて、奈落の底へと落ちて行こうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ