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わがまま王女の騎士道物語  作者: もっこす
騎士になりたい王女
17/26

アルベティーナと不思議な旅人.16

 庭に出たアルベティーナは周りを見渡しながら秘密の出入り口に向けて歩いた。


周りの様々な花が太陽に照らされて綺麗に輝く。


アルベティーナはその輝きを微笑みながら眺め、秘密の出入り口に着いた。



 秘密の出入り口に着くと、すでに先客がいた。


茶色の髪に、そばかすのある顔。


アルベティーナの親友のモナであった。


「行っちゃうんだね」

モナは悲しげな笑みを浮かべた。


「うん。私の夢の為だもの」

アルベティーナはコクリと頷き、真っ直ぐにモナの事を見つめた。


「うふふ、かっこいいね。アルナは」

モナは目のふちに貯めた涙をぬぐい、後ろに隠していたモノをアルベティーナに渡した。


「はい。これあげるね」

それは茶色の綺麗な服であった。


「そんな綺麗なドレスで行っちゃダメよ。これは私が織った布で作った服なの。ちょっと不格好だけどね」

えへへ、と頬を赤く染めて笑いながらモナはポリポリと頭を掻いた。


アルベティーナは耐えきれなくなり、モナの事を抱きしめた。


「そんなことない! すっごくキレイよ! 私が今まで見た服の中で一番きれい!」

アルベティーナはギュウっとモナの事を抱きしめた。


「ありがとう……。嬉しい……」

モナも涙を流しながらアルベティーナの事を抱きしめた。




「あらあら、私も混ぜてほしいわね」

後ろから突然聞こえた声にアルベティーナは驚き、振り返った。


そこには優しい笑顔を浮かべ得ている王妃と、青い瞳を細めている王と、顔を赤くしている大臣の姿があった。


「えっ? お母様!? お父様!? エリオ大臣!?」

アルベティーナは驚いた。


「あの、これは、その……」

「待ってください」

アルベティーナが慌てふためいていると、モナが一歩前に出てきた。


「これはアルナにとってとても大切な事なのです。どうかこのままアルナを旅に出してあげてください」

モナは深く頭を下げた。


「モナ……」

アルベティーナは呟いた。





「アルナ、モナ」

王の冷たく、低い声が2人の体に響く。





2人はビクッと体を震わせ、王の方を恐る恐る見た。





「お前たち……」

王の瞳がより一層細くなる。





アルベティーナとモナはお互いの手を取り、ギュッと握った。






「何か勘違いをしていないか?」





「へ?」

2人は間抜けな声をあげた。


「私はアルベティーナを止めに来たのではない。我が娘を見送りに来たのだ」

王は相変わらず低い声でそう言った。


「え? でも、今さっきまでは騎士になることを反対してたのに……」

アルベティーナの頭の中がグルグル回る。


「私は言ったはずだ。『王として許すことはできない』とな。今の私はディオレ王国の王ではない。アルベティーナの『父親』としてここにいるのだ」

アルベティーナの父、グレゴリオ・コスタ・ディオレは優しげな表情を浮かべた。



「1人の父親として、娘の夢を応援してやりたいと思っている」

「お父様……」

アルベティーナの眼のふちに涙がたまる。



「そういうことです」

エリオ大臣が一歩前に出てきた。


「私は正直今でも反対です」

大臣はキリッとした表情でアルベティーナのことを見つめた。


「私はあなたが本当に小さい頃からお世話をさせていただきました」

大臣は目を閉じた。


「グレゴリオ王には大変申し訳ありませんが、私はアルベティーナ姫の事を孫のように思っております」

大臣の肩が小刻みに震える。


「こんな可愛い孫が……私のもとを離れていくのが……悲しくて……悲しくて……」

大臣は顔を赤くしながら、涙を零した。


グレゴリオが大臣の肩を優しく叩く。


「失礼しました……。しかし、アルベティーナ姫の意志を尊重したい気持ちも十分にあります。なので私はあなたの事を見送りにここに来ました」

エリオ大臣はビシッと姿勢を正し、鼻をすすった。



「エリオ大臣……」

アルベティーナの目から一筋の涙がこぼれる。




「アルナ」

マリア王妃が優しい声でアルベティーナの事を呼ぶ。


「おいで」

そして優しく微笑み、手を広げた。



「お母様ぁ……!」

アルベティーナはマリアの胸に飛び込んだ。



「よしよし、私はお前が元気にしてくれれば、それでいいんだよ」

マリアが優しくアルベティーナの髪をなでる。


「お母様……! 私……グスッ……私絶対に……絶対に元気で帰ってきますから!」

嗚咽を漏らしながら、アルベティーナは大好きな母の胸に頭をうずめた。





しばらくして、気分の落ち着いたアルベティーナは穴の前に立っていた。


「お父様、お母様、エリオ大臣、そしてモナ」

アルベティーナは名前を呼びながら皆の顔を見渡した。



「私、自分の夢の為に頑張ります」

そして深く頭を下げた。



「面をあげよ」

グレゴリオの低い声が響き、アルベティーナは顔をあげた。


グレゴリオは灼熱の太陽のように真っ赤な盾をアルベティーナに渡した。

盾の中心にはディオレ王国の紋章が描かれている。


「それは王家に伝わる盾だ。きっとお前の役に立つだろう」

グレゴリオの低く、冷たい声が響く。


しかしその冷たい声が、心の火照った今のアルベティーナには嬉しかった。


「ありがとうございます……。この盾で多くの者を守ります」

アルベティーナは盾を受け取った。



「私からはこのティアラをお渡しします」

そう言ってエリオ大臣は綺麗な水晶のティアラをアルベティーナの頭に乗せた。


「このティアラが王族であることを証明してくださるでしょう。御無事を祈っております」

早口にエリオ大臣はそう言った。


その早口のおかげで、アルベティーナは今にも流れそうな涙を流さずに済んだ。


「ありがとうございます……。姫としても、これから精進します」

ティアラがキラリと綺麗に輝く。



「そして私からは……はいコレ」

マリアは手を差し出した。その手には綺麗な模様の手作りネックレスが握られていた。


「私のだけ王族のものじゃなくてごめんなさいね。これは私が作ったお守り。きっとこのお守りがあなたを悪いモノから守ってくれるはずよ」

マリアの優しく、そして温かい声がアルベティーナを包む。


マリアの優しさに包まれ、アルベティーナは心が温まるように感じた。


「ありがとうございます……。お母様のお気持ちが伝わってきました」

アルベティーナはお守りをギュッと優しく握った。



「私はもう渡しちゃったから」

モナが照れ臭そうに頬を掻いた。


そして目を閉じた。


「私たち、小さい頃から一緒だったよね。辛いことも、楽しいこともいっぱい一緒に経験した。それが私はすごくうれしいの。……でもこれからは一緒に経験をすることが出来なくなっちゃうね」

モナは少し寂しそうな表情を浮かべた。


「モナ……」

アルベティーナが呟く。


「でも、なんだかそれぞれの道を行くって大人になったみたい」

モナはニコッと微笑んだ。


「アルナが立派な騎士になるように、私も立派な庭師になってみせるね」

スッと手を前に差し出す。


「頑張ってね、アルナ。立派な騎士になって私を、この国を守ってね」

スーッとモナの頬に一筋の涙がこぼれる。


「馬鹿ねモナ……。折角最後は泣かないようにしてたのに台無しじゃない」

アルベティーナは頬を伝う涙をふき取った。


「絶対に騎士になるわ。そしてモナの事を守る。ここに誓うわ!」

アルベティーナはモナの手を握った。





ありがとう。私の事を叱ってくれて。

ありがとう。私を正しい道に進ませてくれて。

ありがとう。私の事を優しく包んでくれて。

ありがとう。私の友達になってくれて。

ありがとう。私のわがままを聞いてくれて。




そして。




「行ってきます!!!」




アルベティーナは最高の笑顔を浮かべ、城を出ていった。





 城門にたどり着くと、見覚えのある2人組がいた。


「遅いぞ! 結構待ったんだから」

フェイが不機嫌そうな顔をする。


「ごめんなさい。ちょっとしたサプライズイベントがあったから」

アルベティーナは頬を赤く染めながら頭を掻いた。


「よく来た」

フォーレイは真面目な声でそういい、手を差し出してきた。


「俺の名前はフォーレイ・オルビット。貴様の名前はなんだ。」


アルベティーナは差し出された手をジッと見つめた。

そしてニコリと笑い、フォーレイの手を握った。


「私の名前はアルベティーナ・コスタ・ディオレよ。『アルナ』って呼びなさい」

アルベティーナは握った手にギュッと力を込めた。



「俺たちは何でも屋だ。お前のやりたい事を言ってみろ」

フォーレイの黒い瞳がアルベティーナのことを見つめる。




アルベティーナは青い瞳を輝かせた。












「私! 絶対騎士になるわ!」











「わかった。そろそろ行くぞ」

フォーレイはそう言うとさっさと荷物をまとめ始めた。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 感想も何もないわけ!?」

アルベティーナが不機嫌そうに口を尖らせる。


「いい夢だと思うよ。アルナにピッタリだ」

ニコリとフェイは笑い、ゴソゴソと荷物を漁り始めた。


「では新たな仲間を祝して、お祝いしますかな」

そう言いながらフェイは紙袋を取り出した。


「あっ! これって!」

アルベティーナの表情がパァと明るくなる。


「1人1個だぞ。食い意地をはるなよ」

フェイが憎たらしい笑みを浮かべながら、紙袋から果物を取り出してフォーレイに渡した。


そして自分の分の果物を取り出し、アルベティーナに紙袋を渡した。



「新たな仲間を祝して。」

フェイがパチンとウィンクをする。


アルベティーナは紙袋を受け取り、中から果物を取り出した。



「新たな出会いを祝して。」


アルベティーナは大きな口を開けて果物をかじった。










シャリッという旅の始まりの音が響き渡った。












 紙袋の中には果物が1つもなかった。




『アルベティーナと不思議な旅人』 ~ 完 ~


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