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わがまま王女の騎士道物語  作者: もっこす
騎士になりたい王女
15/26

アルベティーナと不思議な旅人.14

「終わった……の?」

モナが小さな声で呟く。


さっきまで魔物だった黒い炭はプスプスと煙を立てている。


「まだだ」


フェイの鋭い声が響き、アルベティーナとモナはビクッと体を震わせた。


「ごめんね。もうちょっとで終わりだから」

ツートンが申し訳なさそうに謝りながら立ち上がり、フェイの隣に立った。



すると空から何かが降ってきた。


黒く、丸い物体。

ズドンというすさまじい着地音と共に、土煙が舞う。

そして土煙が徐々に晴れていき、さっきの魔物よりふた回りも大きく鼻の長い象のような魔物が現れた。




「それじゃあそろそろ僕のかっこいい所を見せてあげるかな」


ツートンはブツブツと何かを呟き始めた。


ツートンの周りに『火』『水』『風』『雷』『岩』が浮かびあがる。



「ちょっと待て、コイツ……」

フェイは魔物を睨みながらツートンを止めた。


「待てないね! 早くこいつを倒さないとだから……ね!」

そう言いながらツートンは指を魔物へ勢いよく向けた。


ツートンの体の周りを飛んでいたすべてのモノが魔物に向かって飛んでいく。

すさまじい轟音が鳴り響き、土煙が舞い、あたりの草木が吹き飛ぶ。


「すごい……」

アルベティーナは思わず声を漏らした。



「だから待てと言っただろ」

フェイはあきれた声をあげた。


「アレ?」

ツートンは笑いながら首をかしげ、土煙を見つめた。



土煙が少しずつ晴れていく。


そこには無傷の魔物が立っていた。



「ありゃりゃりゃりゃ!?」

ツートンは滝のような汗を流しながら、勢いよく身を引いた。


「あれは『魔力』は通さないタイプの魔物みたいだな」

フェイが鋭い視線で魔物を睨みながら手の平を顔の前に掲げた。


掌の上に火の球が出来上がっていく。


フェイは手で握れそうな大きさになった火の玉を魔物に向かって投げた。


魔物に着弾すると同時にすさまじい爆発音が鳴り響く。



「おまけにあたしも役に立たないときた」

フェイは冷や汗を垂らしながら引きつった笑みを浮かべた。



爆炎が晴れていく。


そこには無傷の魔物が立っていた。



「ちょ、ちょ、ちょっと! どうやってあいつを倒すのよ!」

アルベティーナはツートンの頭をバシバシ叩いた。


「あいつを倒すには『闘力』を扱った攻撃をしないといけないみたいだね」

ツートンが穏やかな目で魔物を見つめる。


「『闘力』!? よくわからないけどそれで倒せるなら早く『闘力』で倒しちゃいなさいよ~!」


「ごめんね。僕の闘力はすごく弱いんだ」

ツートンは照れ臭そうに頬を掻いた。


「はぁ!? なにそれ! じゃあフェイは!? フェイならちょちょいと倒してくれるわよね!」


「あの脂肪の厚さじゃ足止めするのが手一杯だね」

フェイはふぅと息を吐き、肩をすくめた。


「はぁ!? じゃあどうするのよ! その闘力とやらを使ってもダメじゃないのよ〜!」

「ちょ、ちょっとアルナ……」


アルベティーナは顔を真っ赤にしながらツートンのことをガクガク揺らした。

モナが焦りながらアルベティーナの事を抑える。


その時、ズン!という音と共に地面が震えた。


音のする方に顔を向けると、魔物が歩き始めていた。


「きゃああああ! 動き始めた! もう終わりよ!」

アルベティーナは頭を抱えながらブンブンと頭を振り回した。




「なーに簡単な事さ。『闘力』の強い奴が今ここにいないなら――」



フェイは煙草を一本とりだし、口にくわえた。



「――『闘力』の強い奴を呼べばいい」



指先から小さな火を灯し、煙草に火をつけた。




「は? 呼ぶって今から?」

「ツートン」

アルベティーナの疑問の声に聞く耳を持たず、フェイはツートンの名を呼んだ。


「『ゼロ』はどう?」

「『ゼロ』は相変わらず声が聞こえないなぁ」

「そっか」

フェイは魔物に向かって歩き始めた。


「『フォーレイ』がやる気満々みたいだよ」

ツートンはニコリと笑った。


「あいつはいつだって殺る気満々だろ……まぁ今回はフォーレイが適任だな」

そう言いながらフェイは一気に魔物に駆け寄り、鋭い蹴りを頭に叩き込んだ。


魔物の体勢が一瞬崩れる。


「時間ならあたしが稼ぐから、今のうちに『変わりな』!」

フェイが大きな声で吠える。





『ゼロ』、『フォーレイ』

その名前は良いたことがある。たしかツートン達の仲間の人たちだ。


でも今から呼ぶ?


こんな戦闘中に?どこにいるかもわからない仲間を?


……いや、たしかフェイは言ってたっけ。


『あいつらはね、今もツートンと一緒にいるのさ。』


それって地下牢に一緒にいるんだと私は思ってた。


でも地下牢にはツートン一人しかいなくて……。


そういえば仲間の事を尋ねた時のツートンも微妙な反応だったような。


『うーん……いるといえばいるし、いないといえばいないんだけど……。」



『いると言えばいる』

『いないと言えばいない』

そして『いつも一緒にいる』



つまり……それって……




「もしかして……」


アルベティーナがポツリとそう呟いた時、ツートンの体が光り出した。


「きゃっ! ツートン!?」


「アルナ。大丈夫だよ」

ポンとアルベティーナの頭にツートンの手が乗る。


「色々話したいことがあったけど、それはまた今度僕が『出てきた』ときのお楽しみにしようかな」

ツートンの優しい笑顔が視界に入る。



「もしかして、あなた……いえ、『あなた達』は!」


アルベティーナがそう叫んだとき、ツートンの体が一段と強く輝きはじめ、アルベティーナは目を閉じた。





しばらくして光が弱まり、アルベティーナは目を開けた。





そこにはツートンの姿はなく――






――黒髪の中性的な顔立ちの青年が立っていた。






「あなた達は『1人の体』に『何人』もいる……のね」


アルベティーナは黒髪の男を見つめ、呟いた。





黒色のセミロングの髪

きっちりとしたまるで執事のような服装。

手には黒い手袋をはめており、ギュッギュと何度も引っ張っている。


コツコツと足音をならしながら、ツートンの代わりに出てきた男は魔物に向かって歩いて行った。



「ちょ、ちょっと待って!」

アルベティーナは慌てて黒髪の男に声をかけた。


男はピタッと動きを止め、ゆっくりと振り返った。

そして今にも襲い掛かりそうなドス黒い瞳をアルベティーナに向けた。


「えっ、あっ……」

アルベティーナはその瞳に驚き、上手く口が回らなかった。



「なんだ貴様は?」


中性的な容姿に似合う、どこか子供のようにさえ思える声。

だがドスがきいており、その声からは恐ろしさしか感じなかった。


「――殺すぞ」



アルベティーナはビクンと体を震わせた。

あの優しげなツートンと変わって出てきたとは到底思えない存在がアルベティーナの目の前に立っている。


アルベティーナは涙目になりながらストンと腰を抜かした。



「フォーレイ! 早くこいつをブッ飛ばしてくれ!」

魔物の周りを跳びまわりながら戦っているフェイが大きな声をあげた。


フォーレイと呼ばれる黒髪の男は再び魔物の方に向かって歩き始めた。


それを見たフェイは笑い、アルベティーナのもとに跳ねながら戻ってきた。


「フォーレイが来たからもう安心だ。あのブサイクはもう終わりだよ」

フェイは憎たらしい笑みを浮かべながら勝利宣言をした。


「あのフォーレイって人、何者なんですか?」

腰を抜かしているアルベティーナの代わりにモナがフェイに尋ねた。


「あいつの名前は『フォーレイ・オルビット』。殺し合いが大好きな戦闘狂さ」


「戦闘狂……」

ドス黒い瞳を思い出し、アルベティーナはぶるっと震えた。


「あっはっは! アルナあんたビビったの? 大丈夫。あいつは口が悪いけど根は本当に良い奴だよ」



そうこうしているうちに魔物の方が動き出した。


近くになぎ倒されている木を長い鼻で巻き取り、大きく横に薙ぎ払った。


ブォンという空気を切り裂く音が聞こえてくる。


しかしフォーレイは全く避ける素振りを見せない。


「ちょっと! 危ない!」

アルベティーナは思わず叫んだ。



木はフォーレイにぶつかり、バキッという大きな音があたりに響き渡った――



――が、フォーレイは何事もなかったかのように魔物に向かって歩を進めた。



「え?」

アルベティーナとモナの2人が驚きの声を漏らした。


良く見ると魔物の持つ木に違和感を覚える。


「さっきよりも木が短くなってる……」

モナがポツリとつぶやくと同時に、空から何かが降り、すさまじい衝撃音が響いた。


空から降ってきたものの正体は、魔物の持っている木の先端であった。



「何? 何が起こったの?」

アルベティーナは混乱した頭でフェイに尋ねた。


「別にむずかしいことはやってないよ。あいつはただあの木を『殴った』だけさ」



突如、魔物が吠えだし、長い鼻を鞭のようにしならせながら振り回した。


ゆっくり歩いていたフォーレイは鞭を避けるように機敏な動きで魔物の周りを駆け巡った。


「あいつの強さはね」

フェイが2本目の煙草を取り出し、火をつけた。


象の鼻がフォーレイの体に直撃する。


「馬鹿げたタフネスと」


しかしフォーレイはニヤリと笑い、魔物の鼻を掴んだ。


「馬鹿げた腕っ節の強さなのさ」


そしてそのまま魔物の事を放り投げた。


ズシンという音と共に魔物が地面にぶつかる。


魔物は急いで起き上がろうとした。


しかしフォーレイはすでに魔物の懐に入っていた。


そして凄まじく早い右の拳を魔物の腹に叩き込んだ。




バシンッ!という大きな打撃音が響き渡った後、静寂があたりを包み込む。




「終わったな」

フェイがニヤリと笑う。



それと同時に魔物の体の穴という穴から血がふきだした。



「終わりだ」

フォーレイは肩をグルグル回しながら、短く終わりを告げた。




フェイがアルベティーナの頭をポンポンと叩く。

「良かったな。お前の国は助かったぞ」


フェイの優しげな笑顔を最後に、アルベティーナはすさまじい脱力感に襲われ、そのまま意識を失った。


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