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主人公明日香と執事で幼馴染の陽司の学園生活を描いた作品です。
ずっと一緒に暮らしていた二人が、高校生になり、明日香がひたすらヤキモキする話です。周りからみるとバカらしいほどバレバレなのに当人同士はまったく気づいていない。
周りの視線、地位や意地を克服して彼女は自分の気持ちを打ち明けることができるのでしょうか?
子どもながらに気づいていた。
私がもたらす影響を。いや私の血筋『霧生家』のもたらす影響を。
霧生家がその気になれば、明日には総理大臣を無名の小学生にすることもできるし、アメリカと同等ぐらいの軍事国家にすることもできる。
まあ、そんなバカなことはしないが、やる気になればできる、という話だ。
そのせいでまわりは常に私の御機嫌とりに勤しんでいた。
たかが幼稚園児の私に。
「明日香ちゃんは今日もかわいいね」
「将来は女優かな?」
「いや、利口だし大学の先生かも」
幼稚園児の私にゴマを擦ってどうする。
心の中で周りの大人に苦笑しながらも私は満面の笑みでそれらの賞賛に答えた。
他人との距離を熟知し、自分の感情を押し殺した私の演技は完璧だった…はずだった。
「明日香ちゃんはなんでいつも笑わないの?」
いまでもはっきり覚えてる。あのドングリのような目を目一杯大きくし、不思議そうに私に尋ねる鼻垂れ小僧を。
あの時から私はあいつが本当に大嫌いだ。
… 目覚めた。
寝起きは最悪だった。
ついさっきまでの夢を思い出し、小さく舌打ちする。
(夢にまで出てくるんじゃあないわよ、馬鹿)
心の中で毒づいたあとベッドからそろりと降り、鏡で自分の顔を確認した。
まぶたは寝起きにしては垂れ下がっていないし、長いまつげは今日も一層瞳の大きさを強調している。
白い肌が赤い髪の毛をいっそう際立たせている。
赤い髪は染めているわけではなく地毛だ。
本音を言えば赤い髪より黒い髪の毛のほうがよかった。
こればかりはフランスの父親と結婚した、母親を恨んだ時期もあったが、いまではなんとも思っていない。
少し髪の毛が乱れていたので、何度か手でさすると長い髪はさらさらとキレイにまとまり、寝癖らしいものは一つもなくなった。
ちらりと部屋の時計をみると針は6時25分をさしていた。
(まだ時間はある。軽く化粧でもしようかしら)
そんなことを考えていると、扉のほうから『トン、トン』という遠慮がちなノックが聞こえた。
私はビクっと扉を一瞥したあと、大急ぎで、しかし物音をたてないようにベッドに戻った。
(だから五分早いのよ馬鹿!なんで毎朝言われてるのに直そうとしないの!)
大急ぎで布団をかぶると、私はいかにもまだ寝ています、という風に狸寝入りをした。
しばらくたつとまた遠慮気味にノックが、鳴った。もちろん私は無視をきめこんだ。すると『ガチャ』と扉が開く音がしたので、私はいくらかまぶたをきつく閉じた。
「明日香様?お目覚めですか?」
(見ればわかるでしょ!まだ寝てるわよ!)
完璧に起きてる私は声の主に向かって、心の中で答えた。
「もう、お目覚めのお時間です。早く朝食を食べないと遅刻してしまいますよ」
コツ、コツ、と革靴の音をさせながら声の主はベッドにちかづいてきた。
「早く起きてください。明日香様」
ちらりとまぶたを開ける。
そこには先ほど夢で登場していた少年の面影を残した青年がこちらを覗きこんでいた。
「おはようございます。明日香様」
わたしがまぶたを開けたのに気づき、青年は優しくほほえんだ。
すぐさま私は布団を頭から被った。
初めての投稿です。
すごくありきたりな話だし、見苦しいところばかり目につくと思いますが、よろしかったらコメントお願いします。