A sense of incongruity and soldier
驚いて少し間抜けな顔をしている私を見て、綺麗な女の人は笑う。やっぱり何度聞いてもさっきの鴉の声だ。
「驚くのは分かるけど、そんな顔してつっ立ってないでソファーに座れば?」
豪華絢爛なソファーに足を組み、我が物顔で使用している。その様子はとても絵になり、本来の持ち主である私よりも絵になるかもしれない、と複雑な面持ちで女の人の隣に座った。
まず何から聞くべきかと考え込んでいると、
「説明は後でするよ。それより飯が先だ。もう腹が減って死にそうなんだよね。」
コンコン
ちょうどいいタイミングでドアがノックされ、返事を待たずに一人分の食事を持った男の子が入ってくる。
本来は女性、それも姫である私の部屋に返事の無いまま入るのはタブーだ。規律やマナーに厳しいソルテアが見たら激高して斬首を命じるだろう。
中性的な顔立ちで愛らしさと庇護欲を掻き立てるその様はチワワを思わせる。色白でいかにも体力の無さそうな見た目とは裏腹に、身に付けているのは兵士の服装だった。
―こんな可愛い兵士、いただろうか。
最近まで頻繁に城を脱走していた身だ。兵士とはよく会うのだが、このような兵士は見た事が無い。
少し違和感を感じたがあまり気にしない事にした。