Revan
「ちょうどその話をしに来たんだよ。実はアタシ、元々シャトラの国の女兵士だったんだけど、ちょっと問題起こしてディルに鴉にされちゃったんだ。」
シャトラとはいつか話した魔法使いのディル(自称)王子のいる国である。
鴉の話はまだ続く。
「だからアンタに人間に戻るの手伝って欲しくて。部屋に閉じ込められてるだけでどうせヒマだろ?」
私は動こうとして横にあった観葉植物にぶつかってしまう。どうしてこの怪しい鴉は私が閉じ込められてる事を知っているのだろう。
それが聞けないままお喋りなカラスは話を進める。
「まぁ、それは最近...三日前の話なんだけど。シャトラからストレーマまで飲まず食わずで来たからもうそろそろ何か食わないと死にそうなんだ。何でも良いから...人間の食べれそうなものをくれないか?」
「え?...え、えぇ、今食事を用意させるわ。」
今は部屋の前の廊下なら出て良い事になっている。丁度通りかかった使用人に適当に食事を頼んで部屋に戻った。
射し込む夕暮れの光が眩しく感じる。
...いや、これは夕暮れの光などではなかった。部屋の奥の方で何かが鮮やかなオレンジ色に発光している。明らかにさっきの鴉だ。
そしてその光がおさまったかと思うと...一人の女性がソファーに偉そうに座っていた。
つり目がちの瞳とスッと通った鼻筋はキツさを感じるが、人なつっこい笑顔はそれを見事に打ち消している。赤みがかった長い黒髪は後ろで一つに括られていて、黒い羽根付きのゴムがちょこんと存在を主張していた。