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Light story
「食べなければ飢え死にしてしまいますよ?」
彼が私の顔をのぞきこんで言う。私が欲しいのはそんな言葉ではないのに。
「私を前みたいに自由にしてくれたら食べるわよ。」
そう返すと彼は困ったように笑う。
「前に城の中は窮屈だと言っていたではないですか。それなら城の中に閉じ込められるのも部屋の中に閉じ込められるのもそんなに変わらないと思うのですが。」
「そのゼロもマイナスも変わらないみたいな考え、やっぱりあなた今朝からおかしいわ。前までは出来るだけ良く、少しでも素晴らしくって言ってたじゃない。」
ムッとしながら責めると、我儘な子供を諭すように、ゆっくり話した。
「俺自身は覚えが無いのですが、姫が言うのであればそうだったのでしょう。ですが、今の俺は姫が知っている俺ではないようなので、その話には答えかねます。」
彼と話していると、難しい言葉ではぐらかしてしまうから嫌だ。それは今の彼だろうと昔の彼だろうと変わらない。そこが私の思い付く唯一の共通点だった。




