第2話
朝おきて、学校に行きたくないと思っている自分がいた。
やる気がでなくて、布団の中でうずくまっていた。
何もしたくないと、しなくてもいいと考えていた。
ふと、枕元にある本に気付いた。…そうか。私はまた本の中の人物の心情を引きずってしまっていたのか。
ここでやっとそのことに気付く。すると少しやる気がでてきた。いつものことだった。本の中の彼のようにふさぎ込んでいたのだ。
それがわかった私はのろのろと学校へ行くための支度をはじめた。ただ、完璧に彼から抜け出すことはできなかった。
そのため学校でも、やる気がでなく、元気がないと何度も言われた。私もうんざりしていた。早くこの状態から抜け出したい。
そのためには、彼が元気にならなければならない。
つまり、早く本を読まなくてはいけないのだ。彼の病気が治れば私のこの気分も晴れ晴れとするだろう。
授業と授業の間にさえ本を読むことに撤した。もちろん昼休みもだ…。
お母さんには話さない。一晩中悩んで、彼はその結論にいたった。会社もやめてそのうえ鬱病だなんて、自分を応援してくれている母に言うことなどできなかった。
結果、彼は一人で欝と戦うことになった。病院に通い、薬を飲み、部屋でじっとしている。カウンセリングを受けて、軽い運動をして、ボーッと一日を過ごす。
何もすることがない。したいこともない。笑うことも、話すことも、遊ぶこともなく一日一日は過ぎ去っていくのだ。
しかし、それが悪いという意識がないので、病気は治るどころか日に日に悪化していった。
ふいにページをめくる手をとめた。
寒気がした。……もしも、もしも彼がこのまま病気が治らないままだとしたら?……最悪の場合、死んでしまうとしたら?私はどうなるのだろうか。
そんなこといままでに考えたこともなかった。主人公が死ぬという本に出会ったことはない。
どうなるかわからない。
…こわい。こわい。読みたくない。彼は死ぬかもしれない。死ぬかもしれない。
…死なないかもしれない。その可能性だってある。彼が死ぬとはどこにも書いてなかった。まだ希望はあるのだ。彼が治れば私もいまのすっきりしない状態から抜け出せる。
大丈夫。死ぬはずはない。
私は一刻も早くこの本を読みおわりたかった。そうして次は明るい話を読んで、こんな話はすぐに忘れてしまえばいい……。