7,ブリッジ異世界に架ける橋
魔族の支配領域と人種の支配領域の境には深く広い大きな渓谷が存在する。
恐ろしく長く深いその渓谷はかなり迂回しなければ橋がなく、その橋も大軍を渡らせるには強度が心配だ。
補強しようにも渓谷から吹く強風によりなかなか作業が進まず、結果として軍事行動を取ることが出来ないまま膠着状態は数百年続いている。
そんな渓谷の両支配地ぎりぎりには今現在大規模な軍勢が集結している。
見渡す限り完全武装した者達で溢れ返り、今か今かと号令を待っている。
ここ数百年膠着状態が続いていたはずの魔族と人種の戦争はある日突然再開されることとなった。
そう、彼らの足を止めていた存在――渓谷に橋が架かったのだ。
それもたった一晩で。
だが一晩で架かった橋とは思えないほどの素晴らしい橋であり、どこからどうみてもその橋は一度に何百人を渡らせることが可能なものだ。
そんな橋が突如として出現したため、その情報はすぐに人種全体に渡りに渡った。
結果として前代未聞の期間で凄まじいほどの大軍が集結したのだった。
だがすぐに橋を渡らないのには理由があった。
大軍が集結しているのは魔族側も同じだったからだ。
いや人種よりも早く、集結し様子を見ているといったほうが正しい。
そんな不気味な魔族の大軍に人種側も警戒し、膠着状態は続いている。
彼らの戦争は何千年と繰り返されてきたものだ。
始まりはなんだったのか、もう誰も知るものはいないだろう。
それがただの子供の口喧嘩であったことさえ知らず、今まさにお互いの種族の最後の1人まで殺すべく戦争が今か今かと始まるのを待っている。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ま、魔王さまぁ……」
「情けない声を出すでない。妾は信じておる。
あやつは確かに妾の依頼をしっかりとこなしてくれた。ならばこそ、もう1つの依頼の結果も信じて待つべきじゃ」
魔族軍の最前列に位置する魔王は傍で震える側近のサキュバスに優しく、だが芯の通った声で言い切った。
魔王と彼の間で交わされた依頼。
それは橋を作ること。
魔族と人種を隔てる渓谷の強風にも負けない、強固な橋を。
そして……。
大きな瞳を閉じた魔王の長いまつげを渓谷から吹き抜ける風が揺らす。
しばしの間そのまま時を待った魔王がおもむろに瞼を開けると約束の1歩を踏み出す。
魔族の王である魔王に動きがあったことがすぐさま人種の軍にも伝わり、ついに人種の総大将である王が号令を下した。
空気の振動が耳朶を強烈に打つほどの大歓声と同時に人種の進軍が開始され……。
橋にかかった108の技の1つが発動した。
熱気と狂喜に彩られた進軍は一瞬にして静けさと平穏へと変わる。
魔王軍にも伝播していた狂喜の渦もこの時人種同様に全てを静けさと平穏へと変化させた。
それは七色に彩られた美しき光景。
巨大な橋が色取り取りに発光し、見るもの全てを魅了し、心から悪しき全てを取り払った。
手にする剣を、槍を、槌を。
敵を殺せと、憎めと、滅ぼせと叫ぶ声を。
全ての悪しきものをその光景は滅ぼした。
これぞ108の技の1つ「ブリッジ」だ。
その日、彼にとって異世界であるこの世界に架かった1つの橋により魔族と人種による戦争は終結した。
この橋を作った人物の名はこの世界において未来永劫語り継がれることになる。
彼の名はブリッジャー。
ブリッジを極め、神に108の技を伝授された最強の男だ。
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エピローグなプロローグ
「うむ。完成だ」
「ほんとに一晩で作っちゃったんだねぇ」
「うむ。問題ない」
「それでこれからどうするの、旦那」
「うむ。声が聞こえる」
「声?」
「うむ。助けを請う声だ」
「じゃあ行っちゃうんだ」
「うむ。すまないな」
「ううん。いいんだよ。旦那との愛の結晶がいるからね。頑張ってきてよ」
「うむ。またいつか」
「いつか……。行っちゃった……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「うむ。魔王並に幼いな」
「す、すみません……」
「うむ。問題ない。して如何な用件か」
「あ、あのあの! 私以外の神を倒して欲しいんです!」
「うむ。いいだろう」
「いいんですか!?」
「うむ。この世界……次元の神の情報は知っている。滅ぼすべきだろう」
「す、すごいです……」
「うむ。そして君はこの次元の神とは思えないほど善良だ」
「そ、そんなことないですよぅ」
「うむ。問題ない。では引き受けよう。
君以外の全ての神を滅ぼそう」
「はい! お願いします!」
かくして幼き女神からのお願いを聞きうけた彼の戦いが再び始まった。
魔王さまprpr
完




