4,ブリッジ街へ行く
街を歩くはまさに黄金率の体現者といえる神の造ったプロポーションを2枚の布で覆った女性。
重力という概念すら超越したまさに生意気を通り越したツンツンな胸部。
くびれなどというチンケな物では言い表せないキュっとした腹部。
薄っすらとわかる腹筋は見た目とは反した鋼鉄の強度を誇るが道行く誰にも……いや本人ともう1人を除いた誰にもわからない。
はちきれんばかりの腿、しゃぶりつくしたくなるほどの完璧な長さの足の指。爪の一片に至るまで人生全てをかけてしゃぶりつくしても足りないほどだ。
身に纏っている2枚の布切れが完璧なプロポーションを押し隠すように、扇情的に、その存在をありありと主張する。
道行く全ての老若男女問わず人間は振り返り、呆然とする。
まさにそれが当然といった風に歩く女性は完璧なプロポーションだけが目を引くわけではない。
その肌だ。
肌が人間とは違う。
人間にも多種多様な種族がいることが判明し、特にこの街には溢れんばかりに混在しているがそれでも肌の色というのはある程度の統一がなされている。
その女性の肌の色は緑。
緑の肌を持つ種族は人間にはいない。
緑の肌という色は魔物と呼ばれる存在でもオークやオーガといった種族の特徴的色だ。
だがオークやオーガにこれほどまでの美貌を誇る者は存在しえない。
オーガはその巨体故に選択肢から排除され、オークはそのでっぷり肥えた特徴的な腹とつぶれたヒキガエルのような顔から除外されるはずだった。
だが、目の前に居る存在はまさに人間の美の体現者とでもいうべき存在なのだ。
そのため人々は困惑し、そのありえない美貌に呆然とする。
ざわめく街を歩む者は美貌のナニカだけではない。
視線の半分は女性に向けられていることは確かだが、もう半分はその隣にいる者に注がれている。
それこそが彼。
いつもの仁王ブリッジで悠然といざーりHighする彼である。
彼の居様は威容であり異様。
108の技がなければなしえない歩行方法。
修練の果ての修練により磨きぬかれたえびぞりの曲線。
大地との接触面は3つしかないにも関わらず、その全てにおいてバランスを微塵も崩さない制御力。
しかし驚嘆すべきはやはり108の技。
現在も使用し続けられている彼の日常的歩行法が人々の目を釘付けにし、黄金率の体現者に本来向けられるべき半分を独占している。
「旦那、その冒険者ギルドっていうのはたぶんこの先だけど……。本当に登録するの?」
「うむ。金を稼がなければ何もできまい」
「うーん。別にうちが股開けば金なんてうなるほどもらえると思うよ?」
「うむ。一理ある。故に却下だ」
「だ、旦那。そんなにうちのことを!」
「うむ」
頬を染めてまるで恋する乙女のように身をくねらせる女性に道行く人々の視線の8割が降り注ぐ。
あるものは受け取ろうとしたお釣りを取り落とし、あるものは持っていた花瓶を落とし、あるものは食べようとしていた麺のようなものを口に咥えたまま止まっている。
それほどまでに周囲に影響を与える仕草だが、当の本人の頭には隣の彼のことしかない。
「うむ。ここだな」
「ありゃ、もうついちまったのかい。もっと旦那と歩いてたかったなぁ」
「うむ。いくぞ」
中に広がるは昼間から飲んだくれている屈強な男達。
「いらっしゃ……なんだ……おまえら……」
「うむ。登録したい」
「と、登録ってまずはその……いやなんでもねぇこれに書いてくれ」
カウンターの奥に居た男が目を丸くしていたが、隣にいた男に耳打ちされすぐさま切り替えてきた。
一体何を話したのだろうか。だが彼はそんなことは気にしない。
目的が達成できればそれでいいのだ。彼以外の何者が何を思おうと彼には関係がない。
「うむ。これでいいか?」
「あ、あぁ大丈夫だ。まずは試験があるからな、ここで出てくるヤツを討伐してくれ。討伐できればもちろん報酬は出す」
「うむ。わかった」
記入用紙を返した彼にカウンターの男が地図を渡す。
彼が出て行って少し間を置いてから男達は顔に厭らしい笑みを浮かべていた。
「見たかよあの女。変な肌の色しちゃいたが……ありゃ極上もんだぜ」
「あぁ……久々にきちまったぜ……。屋上行こうぜ!」
「屋上はいかねぇが、アイツなら女は半殺しにしてころさねぇからな。後で回収して……ぐふふ」
「ぐふふ……」
男達の下卑た笑いがギルド内に響くが誰もそれをとがめるようなことはしない。
これがここの日常だからだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
白骨化した人骨がばらばらに散乱するその場所には大小の大きさの統一のない岩が点在している。
アレは墓標だ。
白骨化した人骨の持ち主を埋めることも、弔うこともできないままにただ点在する岩を墓標としたのだ。
その墓と骨の群の中佇むは扇情な肉体を惜しげもなく曝け出す紫の肌を持つ女性。
「ふふ……今宵もまた精を吸われに人間がき……え?」
「うむ。なんだアレは」
「多分サキュバスだよ、旦那」
「うむ。それは知っている。だがなんだアレは」
「うん? なんだろう……? 墓とかじゃない?」
「うむ。そんなことを聞いているのではない。なぜ丸出しなのだ」
「……あぁ! サキュバスだから?」
艶かしい色気を含んだ瞳がパチクリと何度も瞬く中、彼と緑の女性――ジュリィの会話はいつもの彼の調子ではない。
そんな彼にジュリィも驚き困惑するがなんとか彼の言いたいことがわかったようだ。
「サキュバスとは精を吸う生き物だろう。精を吸うには性的興奮を与えなければいけない。だがなんだアレは。
ただの丸出し。アレで性的興奮を覚えるのはただの童貞だ。なっていない」
「……な、なんですって!?」
「あー……確かにそうかも……? でも下着はつけてるし……」
「ななななな! こ、このちょっと綺麗なオークだからって私を愚弄するつもり!?」
「え、別にどうでもいいけど……。単に下着丸出しにしただけで男が釣れると思ってるなら浅はかだなぁって」
「う、うるさい、うるさい! 私だって色々工夫してるんだ!
これでも頑張ってるんだ! わた、私だって……」
「旦那……。なんか泣いちゃってるんだけど……」
「うむ。苦労しているようだな」
「ひっく……くそぅ! こうなったらいつものように撲殺してやる!」
「わを。いつもそうやって精を吸ってるんだ」
「そうよ! 別に1発抜かなくても吸えるのよ! 悪い!?」
「……別にいいけどさ」
「うむ。どうやらあのサキュバスは君に憤りを感じているようだな」
「えぇ……。なんでうちに? うちが悪いの?」
「黙れ黙れ黙れーッ! ぶっころしてやるー!」
「うむ。任せたぞ」
「旦那に言われちゃぁ……しょうがない……ねッ!」
果たして始まるは緑の紫の肉弾戦。
肉と肉がぶつかる激しい音と質量のあるマシュマロが揺れる桃源郷のような光景。
彼の反転した世界に映るそれらはキャットファイト。
まさにある種の性癖を満たすことの出来る光景であった。
下着丸出しよりもチラ見せの意義を延々と書こうとして挫折しました。
自分は悪くない!
次回予告
特になし
次回ってあるの!?




