3,ブリッジちを知る
彼は自身が現在居る場所が元の世界――地球上ではないことを知った。
だが彼はこれといって困ることは無かった。
すでに20年もKAMIの元で過ごしたのだ。地球に戻れるなど欠片ほども思っていなかったし、戻りたいとも思っていなかった。
「うむ。問題ない」
「じゃぁうちを娶ってくれるんだね?」
「うむ。ありえない」
「えー」
「うむ。妾ならよいぞ」
「ほんとに!? じゃぁうちおめかけさんでもいいよ!」
「うむ」
かくしてオークの女性――ジュリィは彼の妾としてついてくることになった。
だが問題もある。彼女は先ほど1人人間を殺害している。
それはもうスイカを割るが如くじゅりーんと。
「うむ。見事に死んでおるな」
「そりゃそうだよ! うちが本気でぶっ叩けば人間の1人や2人じゅりーんと1発さ!」
「うむ。じゅりーんだな」
「えへへ~そんなこといったって夜までサービスしないんだからね!」
ジュリィの馬鹿力で彼の腹をばしばしと叩かれるが鍛え上げられた腹筋には傷1つ付かない。
それどころか赤くなってもいいくらいのところをまったく変化がない。これが108の技の1つ「じょうじまっちょめーん」である。
「きゃああああ」
「お? なんだろ?」
叫び声と共に駆けつけてきたのは先ほど彼が気絶させた赤パン……もとい少女だった。
少女は駆け寄ると頭の勝ち割れた無様なパンツ泥棒に縋り付いた。
「お、お兄ちゃん……おにいちゃあああああん」
「うむ。おまえの兄か」
「あちゃー……この変態の妹かー」
「あ、あなた達は誰ですか? どうして兄がこんな……」
泣き縋っていた少女はかけられた声になんとか平静を取り戻し、気丈にも問いかける。
だがその瞳には今さっき流れていた涙が今も零れ落ちんとしている。
「うむ。ただの通りすがりだ」
「うちもただの通りすがり」
「そうですか……じゃぁ兄をこんな……こんな酷い姿にしたヤツは見てませんか……」
どんどん尻すぼみになる少女の声は涙混じりに濁っていく。
そこで彼はやはり思った。思ってしまった。
彼にはこのままこの少女を悲しみにくれさせることはできない……と。
「うむ。少し離れたまえ、少女よ」
「……ぇ?」
「ほらほら離れて離れて、旦那の邪魔しちゃだめだよ」
「ぇ、は、はい……」
ジュリィはわかっていないが、彼が何かをやろうとしていることだけはわかった。
ジュリィを1発で虜にしたほどの男。
その類稀なる輝きをもってすれば彼に出来ないことなど何ひとつとしてないと彼女は確信している。故に彼の邪魔をしてはいけない。
まさに盲信と言い換えてもいいほどにジュリィは彼に心惹かれている。
全てはとーうの導きのままに。
「うむ」
彼の一言が発せられた瞬間辺りから音と風が消える。
そして勝ち割れた頭部が見る見るうちに再生し、少女の兄の体が激しく痙攣しものすごい勢いでばたつき始めた。
まるで何度も何度も死ぬほどのダメージを受けているかのような強烈な動きだ。地獄の苦しみのかくやと言わんばかりの飛び跳ねっぷりだ。
そのありえないほど悲惨な光景に少女どころか、少女の兄を撲殺した本人であるジュリィすらがたがたと震えあがるほどだった。
「うむ。完了だ」
2人の女性がへたり込み大地に暖かい染みが広がってしばらくしてから彼がもう一言発する。
それを聞いた少女は信じられないモノを見るような目で自身の兄を見つめる。
「あ、れ……俺……何度も何度も死んだ方がましだって思えるような拷問を、ものすごい時間受けたような気がするんだけど……?」
「お兄ちゃん!」
のろのろと頭を抑えながら起き上がった少女の兄に少女が勢いよく抱きつく。
抱きついてからはわんわんとまるで幼子のように歓喜の涙を流した。
これぞ108の技の1つ「きっといきかえーる」であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「というわけでこいつがうちと1発やったあとパンツ持ち逃げしたんだよ」
「お兄ちゃん……最低」
「い、いやだって! あんたすっげー美人だしさ! オークだなんて嘘だろ!」
「うちの容姿とパンツ盗むのは関係ないだろ!」
「最低」
「お、落ち着け! 俺は1回死んでるんだぞ! お、おち……おちついてー!」
「最低! 最低!」
「ぎゃッ……やめッ! ぎゅうああああああ」
辺りに肉が肉を打つ打撃音が響き渡るがここは緑多き草原地帯。
聞くに堪えない撲殺音を爽やかな涼しい風が運んでいく。
緑が真っ赤に染まる光景をほのぼのと眺める2人はその風に心身共に癒されていく。
「うむ。平和だ」
しばらくして少女が殴り終わってボロ雑巾と成り果てた兄を引きずりながら4人は少女の家へとやってきた。
「この馬鹿兄がほんとご迷惑をお掛けしました。
今日は是非うちに泊まっていってください」
「ごべんばばい」
「うむ。世話になる」
「やったー久しぶりの屋根だー!」
申し訳なさそうな少女とボロ雑巾が頭を下げる中、ジュリィは久しぶりの屋根のある寝床を確保できたことに喜んで飛び跳ねている。
彼はといえば、仁王ブリッジのままチラチラと見える少女の赤パンを楽しんでいる。
飛び跳ねているジュリィのおパンティも見えるがなんだか今はありがたみが足りない。
だが彼はその理由に気づいている。
それはジュリィがすでに彼の物となっているからだ。
自身の物になってしまった以上いつでも手が出せる。逆に言えば今楽しめるのはこちらの少女の赤パン。
これを逃せば次はいつになるかわからない。当然といえば当然である。
チラチラ見える位置をキープしつつ、いざーりHighをゆっくりと使い部屋までの案内の最中も彼はお楽しみ中だ。
うきうきスキップまでしてしまっているジュリィはそのことに気づいているのか気づいていないのかいまいちわからないが、彼女も喜んでいるのだから何も問題は無い。
暖かい染みを作ったことなどなかったかのように振舞う彼女達に気を利かせた彼もそのことには触れない。紳士とは如何なる時にも紳士なのである。
その日は少女お手製の豪華な食事とふかふかのベッドでたっぷりと疲れを癒すことができた。
108の技は使えば使うほど疲れるのだ。
とはいっても日々鍛えられている仁王ブリッジ状態の彼にとってはそれほどの疲労ではない。
だがやはりふかふかのベッドというものはいいものだ。
ジュリィと同じ部屋だったのだが今日のところは何もなかった。
彼女も疲れていたようだ。とーうの影響で心身共に深々と改変された彼女の体力は本人が気づいていない以上に疲労を蓄積していたのだ。
こうして彼の異世界1日目は更けていった。
今回はあんまり酷くないようでやっぱりひーどいー。
ちとはなんだったのか。
緑を染めたヤツです。
次回予告にだまされてはいけない。
次回予告
遂に旅立つ彼。
ジュリィを引きつれ彼は行く。
次回「ブリッジ街へ行く」
おっふ。




