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五 「完結編」 検索欄に残った名前

作者: さっちゃん
掲載日:2026/05/10

大人になってから、彼からSNSの友達申請が来たことがあった。


通知を見つけた時は、心臓が跳ねるくらい驚いた。


卒業してから何年も経っていたのに、ちゃんと私を覚えていてくれたんだと思った。


でも、結局それだけだった。


少しやり取りをするでもなく、何かが始まるわけでもなく、時間だけが過ぎていった。


そしてまた、何年も経った。


大人になってからも、彼は時々夢に出てきた。


中学生の頃のままの姿で、笑っていたり、こっちを見ていたり。


だけど夢の中でも突然彼がいなくなる。

同じ学校にいるはずなのに彼の姿だけ見えなくなる。

いつも私は彼を探していて、途中で目が覚める。


ただ、胸の奥だけが苦しく残る。


夢を見るたびに、今どうしているんだろうと思った。


もう会うことなんてないのかもしれない。


それでも、もう一度だけ話してみたい。


そんな気持ちが消えなくて、私は久しぶりに彼を探してみることにした。


卒業式の日にもらった手紙は、今でも引き出しの奥にしまってある。


捨てられなかったというより、大切な思い出として残っていた。


私は昔使っていたSNSのアカウントを開いた。


懐かしい名前。

昔のまま残っている友達一覧。


だけど、その中に彼の名前はなかった。


あれ。


何度見返しても、やっぱりない。


消したのかな。

アカウントを変えたのかな。


気になって、新しくアカウントを作って探してみた。


名前を入れて検索する。


漢字を変えたり、ひらがなにしたり、思いつく限り探した。


でも、彼らしい人はどこにも出てこなかった。


結婚して名前が変わったのかなとか、SNSをやめたのかなとか、そんなことばかり考えてしまう。


それでも諦めきれなくて、私は兄に聞いてみることにした。


兄と彼は、中学の頃同じ部活だった。


もしかしたら、今も少しくらい繋がりがあるかもしれない。


そう思ったら、胸が苦しくなるくらい期待してしまった。


でも、本当に聞いていいのか迷った。


今さら昔好きだった人の話なんて、恥ずかしい。


それでも勇気を出して、私は兄に打ち明けた。


「実は昔、さっちゃんのこと好きだったんだよね」


すると兄は、驚いた顔で笑った。


「え? 好きだったの? 全然知らなかった」


私は笑いながら返事をしたけれど、本当は少しだけ期待していた。


「そういえば当時、さっちゃんがゆきのことこんなふうに言ってたよ」


そんな話が聞けるんじゃないかって。


兄なら、なんとなく気づいていたと思っていたから。


あんなに毎日目で追っていたのに。

卒業式の日だって、あんなに必死だったのに。


でも兄は、本当に何も知らなかった。


その瞬間、ふと思った。


じゃあ彼も、兄には何も話していなかったんだ。


兄と彼は同じ部活だったのに。


もし彼が私のことを話していたなら、兄も少しくらい知っていたはずだから。


もしかしたら彼も、自分の中だけで、あの頃の気持ちをしまっていたんだろうか。


そんなことを考えてしまった。


そして私は、できるだけ平気そうに聞いた。


「今って、連絡とか取ってないの?」


本当は、どうにか繋がっていてほしかった。


今でも連絡を取ってるよ、と言ってほしかった。


もしかしたらまた、彼と繋がれるかもしれないって、心のどこかで強く願っていた。


だけど兄は、少し困ったように笑った。


「もう全然連絡取ってないなあ」


連絡先も知らないし、どこで何をしているのかもわからないらしい。


そうなんだ。


私は何でもないふうに頷いた。


兄に聞いても、SNSで探しても、結局彼は見つからなかった。


それでも会いたかった。

どうしても、もう一度だけ話したかった。


さっちゃんって呼びたいのに。

振り向いて笑って欲しいのに。



だから今は、街を歩いている時に

偶然すれ違わないかな、とか。


天気がいい日に空を見上げると、

彼も今どこかでこの空を見ていたりしないかな、

とか。


そんなことばかり考えてしまう。


同じ地元にいるのかどうかもわからないのに。


それでも私は、何か少しでも彼と繋がっていると思いたかった。


スマホの検索欄には、最後に入力した彼の名前だけが残っていた。


もうこの先、彼と繋がることはないのかもしれない。


そう思ったら、あの頃の思い出だけが、少し遠くへ行ってしまった気がした。


それなのに――。


卒業式の日にもらった手紙だけは、今でも手元に残っている。


手紙だけは、こんなにも近くにあるのに。

彼への気持ちを整理したくて書き始めた物語でした。


でも、書けば書くほど、あの頃の記憶が蘇り、届かなかった想いや、どうしたってもう会えない寂しさを痛感してしまいました。


彼があの時、私のことをどう思っていたのかは分かりません。


それでも、少しでも私のことを気に掛けていてくれたなら、それだけで幸せです。


彼に出会えたこと。

こんなにももどかしくて、だけど確かに幸せだった気持ち。


私はきっと、これからも忘れません。


この物語はここで終わります。


それでも私は、これからもふと彼のことを思い出し、時々探してしまうのだと思います。


彼がどうか幸せであってほしい。

ずっと笑顔が続いてほしい。

ただ、それだけです。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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