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The call of war: Gimle  作者: 牛熊


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1. Mission 1-7

「......」


「......」


2人は眼前の光景に呆然とする。


コンテナは再びのしかかってきたタイタンに潰されていた。


いや、先程以上の潰れ具合だ。


仮にコンテナの中に人がいれば立ち上がることすらできないだろう。


しばらく経って、先に立ち直ったのはテオの方だった。



「......どうやら投擲された衝撃でタイタンの内部フレームが歪み、誘爆のエネルギーが想定外の方向に向かったようです」


「......おい、どうするんだよ?」


「............ここはやはり、軍曹が未知の能力に目覚める方向でいきましょう。私も後ろで応援します」


「だからできねえって言ってんだろうが!」



その時、悲鳴を上げたジェイス軍曹を嘲笑うかのようにブロックヘッドが現れた。


巨人は迷うこと無く身を屈めながら右拳を突き出す。


冗談のように大きな拳のスピードは意外なほど早く、ジェイス軍曹ごと地面を抉り飛ばすだけの破壊力を秘めていた。


ジェイス軍曹も避けようとするが、追尾するように拳の軌道が変わる。



「ヤバい!」


せめてテオだけでも逃がそうと、ジェイス軍曹はテオを遠くに投げつける。


木々の隙間を縫うようにテオは飛んでいき、その甲斐あって射程から外れる。


その代償はジェイス軍曹の崩れた体勢だった。


これで回避は不可能になった。



迫りくる拳を前に無駄とは分かりながらも、身を縮めて両腕を顔の前で交差させる。


運が良ければ両腕の粉砕骨折程度で済むかもしれない。


全身に力を込めながら、当たる瞬間に後ろに飛んで少しでも勢いを殺そうと拳を睨みつける。


だが、その拳がジェイス軍曹に届くことはなかった。


何かが横から飛び込んできて巨人の拳にぶつかり、軌道を逸らしたのだ。



「大尉!ご無事でしたか!」


ジェイス軍曹は飛び込んできた相手の姿を見て破顔した。


ブロックヘッドの拳が当たる直前、エイナーがその拳を横から殴りつけたのだ。


逸れた巨人の拳はそのまま地面と木々を抉り吹き飛ばす。


これが直撃していればジェイス軍曹は文字通り粉砕されていただろう。



エイナーはジェイス軍曹の方を振り返って胸を叩き、健在だとアピールした。


ジェイス軍曹はその姿を見て、身につけているアーマーの意匠が先程までと異なっていることに気がついた。


全体的な色合いは同じだが、強固さが増したそのアーマーは手足の装甲の継ぎ目が僅かに黄色く発光している。


あれが専用装備かと驚くジェイス軍曹に対し、エイナーは笑いながら話しかけた。



「コンテナを押し潰していた重しが無くなった瞬間に突き破って脱出した。何が起きたのかはよく分からんが、軍曹たちが助けてくれたのだろう。礼を言うぞ。ここからは私が引き継ごう」


エイナーは両拳を胸の前で打ち付け、ブロックヘッドの方へと向き直り、遥か上空に位置する顔を睨みつける。


その姿を見てジェイス軍曹はエイナーが何をするのかを理解し、驚愕した。


敵を前にして鷹揚と剣を引き抜いて構えるその姿が意味するものは1つしか無い。



「戦うつもりですか!?相手はあの図体ですよ!」


「確かにウェイト差はあるな。だが、ハンデ代わりとしてはちょうどいい」


「ま、待ってください!装備が回収できたのなら、ここは無理せず撤退しましょう!」


ジェイス軍曹はブロックヘッドの方へと歩みだすエイナーを引き止めようとするが、そんな彼を今度は戻ってきたテオが止めた。



「軍曹、大尉の邪魔になりますから、私と一緒に応援席に下がりましょう」


「ガイドドローンならお前も止めろ!いくらなんでも無茶だ!」


「いえ、無茶ではありません。大尉はタイタンと同く反攻作戦の要として能力を設計されています」


「は?それって...」



テオの言葉を聞いて、ジェイス軍曹は信じられないといった表情を浮かべる。


いくらエイナーが再改造された強化兵とはいえ、身長は2.5メートルほどしかない。


それに対してブロックヘッドは100メートルほどと、両者は40倍近く違うのだから耳を疑うのも当然だ。



スポーツの階級差というレベルの話ではない。


いくら体が頑健な子供がいたとしても、相手が大型の象では手も足も出ない。


ジェイス軍曹の判断は至極真っ当なものだった。


だが、テオは人間であればこれ以上ないくらいのドヤ顔をしているであろう声で告げた。



「つまり、大尉はあの大型種と戦うことも想定されています」


その言葉を裏付けるかのように、エイナーが雄叫びを上げながら剣を巨人の足に叩きつけた。


頑健な肉体を剣は深く切り裂き、巨人が痛みで悲鳴を上げる。


信じられないことに、エイナーは巨人を怯ませるだけのダメージを与えていた。


しかし、その代償として剣が半ばからへし折れてしまう。


巨人の耐久力とエイナーの膂力に耐えきれなかったのだ。



「これでは駄目か」


剣を投げ捨てブロックヘッドを睨みつける。


傷つけられた巨人も引く気は全く見せていない。


再び拳を振り上げ、エイナーを今度こそ殴り飛ばそうと構えを取る。



「大尉!その装備があれば特殊能力が使用できるはずです。手足に力を込めてください!」


テオの言葉に従い、エイナーが手足に力を込める。


手足の装甲の継ぎ目から漏れる黄色い光りが強くなり、それに合わせて足周辺の地面が光った。


それを見てエイナーは、「なるほど、これが特殊能力とやらか」と頷いた。


そして、テオに問う。



「何をどこまでできる?」


「そのデカブツと正面から殴り合っても吹き飛ばされなくなります!」


「それは重畳!」


必要最低限の、それでいて必要な情報が込められたテオの言葉を聞いてエイナーは笑みを浮かべた。


そして、迫りくる巨人の拳を迎撃しようと、自らも拳を突き出した。



普通に考えればエイナーは吹き飛ばされるはずだった。


腕力がどうこうという話ではない。


運動エネルギーや体重が比較にならないからだ。


だが、そのような理屈を笑い飛ばすかのように両者の拳はぶつかり合い、そして拮抗していた。


その姿はまるで古代の叙事詩に描かれる、怪物に抗う英雄のようだった。



エイナーの体は足下の光る地面に固定されていた。


発動しているのは手足が触れている箇所に体を固定させる能力。


本来であれば峻険な山岳地帯での移動や、要塞の壁などを素手で登るための能力だが、テオはそれを大型種との戦闘に転用したのだった。


それにエイナーの規格外の身体能力とアーマーの身体強化支援が加わることで、この馬鹿げた光景を生み出していた。



拮抗の末、エイナーと巨人は互いに後ろへと吹き飛ばされる。


双方共にダメージらしいダメージは無いが、同時にこれをいくら繰り返しても決定打にならないと理解した。


戦いに勝つためには、天秤を傾かせるための何かが必要だ。



「ならこちらを使うとしよう」


そういってエイナーは肩に背負っていた2本の斧を取り出した。


斧の柄からは太いワイヤーが伸びており、それは背中に付けたケースへと繋がっている。


コンテナの中に転がっていた専用装備の中で唯一持ち出せた武器がこれだった。



斧で相手を斬り伏せてもいいし、投擲してもいい。


ワイヤーを引けば簡単に回収もできる。


銃と違って弾数を気にする必要もなく、環境にも配慮された素晴らしい武装。


エイナーが振り回すことを想定しているため、頑丈さも折り紙付きだ。


エイナーが斧の握り具合を確かめていると、テオの言葉と共に視界上に様々なデータが表示された。



「大尉、敵の情報を共有します」


敵個体は通称ブロックヘッド。


スワインを母体に全長100メートルほどに改造した生体兵器。


知性が低下しているため銃を扱うことはなく、拳や棍棒での攻撃が主体となる。


肉体は極めて頑健で、一般兵の銃では皮膚を削る程度のダメージしか与えられない。



「なるほど、近接戦闘の武器を持ち出せたのは幸運だったな」


こんなのが相手では、いくらスマッシャーであっても威力が足りるとは思えず、どれだけの弾丸を打ち込む必要があるのか考えるだけでもうんざりする。


どう考えても弾薬が足りない。


それに比べて、この斧なら心配は不要だ。


難しいことを考える必要はない。


死ぬまで切り刻めばいいだけだ。



エイナーと巨人は互いに相手を睨み、構えたまま動かない。


緊張が張り詰めていく。


どちらが先に動くか。


その答えは予想外のジェイス軍曹だった。



「テオ、下がれ!豚共が来てるぞ!」


そう言ってジェイス軍曹はスナイパーライフルを森の奥に向けて撃ち込んだ。


僅かな時間を置いて、森の奥から悲鳴と怒りの声が木霊する。


テオが慌ててセンサーを再確認すると、まだかなりの距離が離れているが確かにスワインたちの集団がこちらに向かっていた。


ジェイス軍曹に指摘されるまで気が付かなかったのは、エイナーとブロックヘッドの衝突の余波で、各種センサーの精度が一時的に低下しているせいだった。


テオは驚き、珍しく素直に称賛の言葉を送った。



「よく敵に気がつけましたね!」


「経験ってやつだよ!大尉の邪魔をさせるわけにはいかん。露払いは任せろ!」


「支援します。敵はスワインとアラクニッドの混成部隊。確認できる範囲で10…いえ、20体に増えました。この調子だとすぐに100体を超えます」


「数だけは揃えやがって!大尉、そいつはお任せします!」


ジェイス軍曹はそう叫び、敵の集団に向けて突撃していく。


テオもその後を追い、その場に残ったのはエイナーとブロックヘッドだけとなった。



「さあ、2人きりの時間だ。その図体でダンスは踊れるのか?」


エイナーはニヤリと笑う。


胸に込み上げる殺意と闘争心から自然と浮かんだ笑み。


その顔を見て、巨人が怯むように僅かに後退した。



「踊れないのか?心配はいらん。リードは任せろ。思う存分、踊らせてやろう」


そう言って、エイナーはブロックヘッドめがけて全力で2本の斧を投擲した。

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