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The call of war: Gimle  作者: 牛熊


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1. Mission 1-5

「生き残りがいたか」


「回収チームでしょうか。通信が妨害されているため、もっと近づかないと連絡は取れません。誤射にご注意を」


テオの言葉に頷き、エイナーは走りながら背中に取り付けていたスマッシャーを取り出す。


敵の目の前に出る可能性を考慮し、取り回しは悪くなるが剣は仕舞わずにそのまま持っておく。



右手にスマッシャー、左手に剣。


近接戦闘になればスマッシャーを鈍器代わりに振り回すことになるだろう。


敵の数が多ければ近づいて乱戦に持ち込んだ方がよい。


銃撃戦は数の少ない側が不利であり、この状況で味方の数が多いことは期待できないからだ。



森が途切れて視界が開ける。


空き地のような場所に出たエイナーの前には、視界に入っただけで10体以上の敵兵がいた。


手近なところにいるのはスワイン3体。


残りは距離が離れていて遮蔽物もないため、直進すればいい的になってしまう。


エイナーは即座に乱戦を諦め、銃撃戦を行うための準備へと移る。



「こちらは宇宙連邦軍所属のエイナー大尉だ!これより敵の排除を開始する。友軍なら返事をしろ!」


エイナーは大声で叫びながらスマッシャーを手近な敵に撃ち込んでいく。


スワインたちは突如現れた敵に驚きながらも、即座に散開して回避行動を取った。


それだけではなく、中には狙いが定まらないままでも銃弾をばらまいて、エイナーを牽制しようとする者までいた。



(これまで遭遇した敵の中では一番反応が良い)


エイナーは敵戦力の評価を上げるが、それでも怯まず突撃する。


放たれた弾丸を回避しきれなかったスワインの左腕が吹き飛び悲鳴が響くが、残りの者たちはそれを意に介さず反撃を試みる。


傷ついた仲間を救護するよりも反撃を優先するあたり練度が高い。


防具のない頭部めがけて銃弾が放たれるが、エイナーは顔を地面にぶつけるように体を前に倒し回避する。


その姿勢のまま地面を蹴り、バネで弾かれたように大きく踏み込んだ。



頭からタックルするような形になったエイナーだが、両手は塞がっており敵の足を掴み倒すことは難しい。


また敵の顔が上の方にあるため、崩れた体勢でスマッシャーの銃口をそちらに向けるには時間がかかり、この練度の敵なら挙動で狙いを悟られ回避される可能性が高い。


だから足を狙った。



ちょうど視界と同じ高さにある敵の膝に向けて弾丸を放つ。


膝が吹き飛んだ相手は衝撃と痛みで体を支えきれずバランスを崩した。


そのスワインが前に倒れ込むところを抱き止めるようにエイナーは体当たりし、握っていた左手の剣で相手の胸を貫く。


だが、これでエイナーの動きも止まってしまった。


その隙だらけの姿を見て、残った1体がここぞとばかりに笑いながら銃口を向ける。



「仲間に当たるぞ?」


その言葉が通じたわけではないだろうが、スワインが動きを止めた。


エイナーが体の向きを変えたせいだ。


突き立てた剣を持ち手の代わりにして死体を支える。


敵から見れば、エイナーを覆い隠すシールドのように仲間の体が邪魔をしていた。



傷ついた味方を見捨てる程度には練度は高くとも、味方ごと撃つ覚悟はなかったのか、そのスワインは引き金を躊躇ってしまった。


そこにスマッシャーの弾丸が容赦なく放たれ、胸と頭を吹き飛ばす。


そして、左腕を失ってもがいているスワインも楽にしてやる。



「お前たちにも情があるようだな」


エイナーはそう呟きながら内心で考える。


敵にも情があるなら、もしかすればコミュニケーションが取れるのかもしれない。


そうすれば和平交渉もありえるのではないか。


そんな考えが頭をよぎる。


だが、現時点でスワインたちの言語解析モジュールが兵士たちに配布されていない時点で、その可能性は限りなく0に近いと判断した。



遭遇したばかりの頃は言語を解析するだけのデータがなく、会話が成り立たなかった。


だから戦うしかなかった。


では、今はどうか?


会話が成り立ったとしても殺す。


だから必要ない。


敵戦力の分析チームあたりでは使用されていたとしても、現場の兵士に配られていないのはそういうことだ。



互いに殺し殺され過ぎた。


もう、行き着くところまで行くしかこの戦争を止める手段はない。


だから、エイナーは夢想することを止め、眼前の敵の掃討を再開することを決めた。



「テオ、こちらはこのまま敵を排除する。友軍と連絡は取れたか?」


エイナーはテオに話しかけながら先ほど入手した肉のシールドを左手に、スマッシャーを右手に構え直す。


スマッシャーは本来両手で抱えて撃つ物だが、シールドに押し付けるようにして銃口を安定させれば片手でも問題なく扱える。


狙いを素早く変えることは難しくなる反面、シールドがあるので障害物が無くとも撃ち合うことができる。


残党に銃撃を打ち込みながら前進を始めたところで、安全な後方で待機しているテオから通信が返ってきた。



「大尉、友軍と連絡が取れました。部隊指揮官はジェイス軍曹。予想通り落とし物回収チームの一員ですが、生き残りは強化兵の軍曹1人の模様。2時の方向でヘリを盾に交戦中とのことです。会話リンクを繋ぎます」


テオの言葉から数秒後、リンク接続という音声と共に男性の声が響き渡る。


背後では銃声や爆発音が絶え間なく響いており、敵に囲まれているのが手に取るように分かった。



「こちらジェイス軍曹!支援に感謝します。申し訳ありませんがこちらは1人だけです。周りは敵だらけで、そちらを支援する余裕はありません!」


「こちらエイナー大尉。構わん。こちらも1人だ」


「大尉、1機もお忘れなく」


「そうだったな。喜べ軍曹。これで戦力が50%増えたぞ」


「元は1人ですからね。ありがたくて涙が出ます」



通信上で笑い声が響く中、エイナーはスマッシャーで敵を吹き飛ばしていく。


敵も当然反撃してくるが、スワインが身につけたアーマーとスワインの頑健な肉体、そしてエイナーが身につけたアーマーの三重装甲を貫くには至らない。


装甲の薄い手足や無防備な頭を狙う者もいるが、シールドを抱えたままでも走れるエイナーにはそう簡単には当たらなかった。



敵を撃破しつつ前進したエイナーの視界にヘリが入ってくる。


撃ち落とされたせいか、それとも落下時に爆発炎上でもしたせいか。


ところどころ破損して、燃えたような跡が残っていた。


ヘリを囲み攻撃しているスワインたちの姿が目に入る。



総数で30体を超えていた。


足下には多くのスワインやアラクニッドと共に、人間の兵士も倒れている。


ヘリを発見したところで敵と交戦し、力尽きたのだろう。


彼らの仇を討つべく、エイナーは背を向ける敵へと弾丸を放つ。



「敵の背後を取った。このまま挟撃するぞ、軍曹!」


「了解!」


兵士を排除しつつジェイス軍曹を包囲するように展開した敵の手腕は見事だったが、結果的にそれがミスとなった。


それとも、背後を守るように展開していた部隊をあっという間に食い破られ、しかもその敵が味方をシールド代わりにしていることを想定しろという方が無茶なのか。


動揺するスワインたちを蹴散らしながらエイナーが突き進んでいく。


そして、距離を詰めたところでシールドを捨て、スマッシャーを鈍器代わりに振り回し始めた。



乱戦になれば純粋な腕力と体力が物を言う。


無骨で頑丈な銃床を頭部に叩きつければ即死するし、受け止められたとしてもそのまま体を押し潰し、動きが止まったところで剣を突き刺せば何の問題もない。


ヘルメット無しの頭部なら、銃身で殴っても歪む心配はいらない。


一瞬の内に3体撲殺したところで1体のスワインが銃を捨て、雄叫びを上げながらエイナーに掴みかかってきた。



「ガアア!」


味方への誤射を恐れて撃てないくらいなら、引きずり倒して袋叩きにすればよい。


躊躇いなくその判断を下したスワインは確かに正しかった。


相手がエイナーでなければ。



「フンッ!」


エイナーは胸を突き出すようにしてタックルしてきた相手を受け止め、そのままの姿勢を固持する。


勢いに押されて地面をズズズッと抉りながらスライドするが、それでも倒れることはなかった。


タックルしたスワインも「まさか姿勢を崩すことすらできないのか?」と、驚愕の表情を浮かべる。


そして、動きが止まったところで、無防備なスワインの背中にスマッシャーを叩きつけられた。


背骨とアーマーが砕ける音と共に、スワインの体が曲がってはいけない方向にへし折れる。


エイナーはそのまま倒れたスワインの頭を踏み砕くが、その隙に今度は3体のスワインがナイフや斧を握って襲いかかって来た。



「ウオオオオ!」


エイナーは雄叫びを上げながらスマッシャーを全力で振りかぶり、3体のスワインたちをまとめて殴りつける。


力任せの一撃は鈍い音と共に、3体の敵をまとめて吹き飛ばした。


そして、敵を吹き飛ばして開けたエイナーの視界の遥か先には1体のスワイン。



スナイパーライフルを抱え、エイナーの方にしっかりと照準を合わせている敵が目に入る。


エイナーは即座に回避しようとする。


だが、それよりも先にスワインの頭が吹き飛んだ。


弾が飛んできた方向を見ると、ショートヘアで浅黒い肌の人間の男性が持ったスナイパーライフルを軽く持ち上げ、「支援は任せてくださいよ」と主張していた。



(あれがジェイス軍曹か)


エイナーは彼の動きを見て感心した。


ジェイス軍曹は右手のスナイパーライフルで敵の頭部を撃ち抜きながら、左手のマシンガンで敵を牽制している。


マシンガンは本気で当てるつもりはないのだろうが、それにしても器用な戦い方だ。


スマッシャーを持っていないのは弾薬が尽きたか、それとも戦闘中に破損でもしたのか。



エイナーは彼の戦い方を見て即座に方針を変えることを決めた。


ジェイス軍曹が遠距離から支援できるなら、自分は前衛として敵に接近戦を挑む。


乱戦になって敵の陣形が乱れれば、ジェイス軍曹が隙を見て敵を倒してくれるだろう。


そう判断して再び敵が集まっている場所へと突撃を仕掛ける。



その動きを見てスワインたちが声を荒げて叫び始めた。


スナイパーライフルで狙ってくる相手がいるため、できることならば分散して身を隠しつつ戦いたい。


だが、そうすると火力が集中できず猛獣のような敵の接近を許してしまい、そのまま一方的に殺される。


陣形の立て直し、もしくは撤退をと叫ぶ者が出るのは当然だろう。



不利な戦況において、例え訓練を積んだとしても兵士たちの意思疎通は非常に難しい。


リスク回避的に動く者もいれば、リスク度外視で戦おうとする者もいるし、恐怖で思考が停止する者もいる。


そういった者たちに指示を下し同じ行動を取らせるのは、戦場でなくとも非常に困難な作業である。


しかし、彼らにはその心配は無用だった。


なぜなら、対処の決断を下すよりも早く指揮官が殺され、残った全員がすぐに後を追うことになったからだ。



**********



「エイナー大尉だ。よろしく、ジェイス軍曹」


「ジェイス軍曹です。助かりました、エイナー大尉。流石にもう駄目かと思いましたよ」


そう言って両者は固い握手を交わした。


エイナーは先程までは遠くからしか見えなかったジェイス軍曹の顔を改めて見る。


彼の見た目は30歳近く、身長はエイナーより一回り小さいものの肉体は鍛え上げられていた。


肌は浅黒く、ショートヘアで側頭部や後頭部を刈り上げ、バリカンで模様を入れている。


階級と戦い振りからすれば、彼が経験豊富な強化兵であることは間違いない。


実際、アーマーは返り血と土埃、そして銃痕で全身ボロボロだったが、致命傷らしきものは全く無い。


圧倒的な数の差で押し潰されていなければ、まだまだ戦えただろう。



「念の為確認するが、生き残りは軍曹だけか?」


「回収チームは10人いましたが、ヘリを見つけるまでに3人、見つけた後は残りの全員を失いました」


「仕方あるまい。ここは完全に敵地だ。軍曹が生き残っていただけでも大したものだ」


「そう言って頂けると他の者たちも報われます」



ジェイス軍曹はエイナーと会話しつつ、力尽きた仲間たちの認識票を回収していく。


死体の首から認識票を外す際、毎回軽く目をつぶって小声で何かを呟いていた。


彼なりの祈りの捧げ方なのだろうか。


エイナーはそんなことを考えながら、ジェイス軍曹が回収し終えるまで黙って周囲を警戒していた。



「お待たせしました」


「構わんよ。早速で済まないが、コンテナの中身を回収したい。落下地点は把握しているか?」


「はい。そこの木々の影に隠れています。あの装備は大尉のためのものですよね?話は伺っています。案内するのでついてきてください」



エイナーがジェイス軍曹の後をついていくと、すぐにコンテナが目の前に現れた。


落下の衝撃であちこち歪んではいるが、潰れたり隙間が空いたりはしていない。


これなら中身が周囲に飛び散ったりしておらず、無事に回収できるだろう。


それを見てテオも安堵したのか軽口を叩き始めた。



「これでようやくお誕生日プレゼントが手に入りますね。ケーキがセットになっていないのは残念ですが。軍の怠慢を訴えるべきかもしれません」


「レーションで我慢するしかないな。甘いフルーツ味のやつを持っているのがせめてもの救いか。さて、取るものを取ったらさっさと撤収しよう」


そう言ってエイナーは歪んだコンテナのドアを力ずくで押し開け始めた。

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