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結構やるって話

「凄い……! それでまだ覚醒を迎えてないの⁉」

「ぶしつけだなあ、オイ。自己紹介も済んでねぇ中で踏み込みが深すぎだろ」

「よく褒められるわ! 実は長年の友人だったんじゃないかと勘違いするって!」

「お、おう。まあ、いいけど。それよりお先にどうぞ?」


 オウカが道を譲っても、少女はオウカを見つめるだけだ。

 まあ、オウカの方が少し身長が高い……程度の差ではあるのだが。

 ともかく、そんな少女は先に行かずに意を決したように胸の前で手を握る。


「あのね」

「やだ」


 そして少女が何かを言う前に、オウカはバッサリ拒絶した。


「なんで!?」

「面倒くさそう」

「面倒くさそう⁉ なんでよ!」

「そういうとこかなー」


 腕を掴んでくる少女に、オウカは「めんどくせー」と言いながら明後日の方向を向く。


「こっち見なさいよ!」

「めんどくせえ」

「しっかり目を見て言わないでよ!」

「どうしろと?」


 凄く面倒くさそうな態度のオウカに、少女はすでに半泣きだ。


「私とパーティー組んでって頼もうとしただけなのに!」

「なんで? お前メイドだろ? 冒険者やる意味ないだろ」

「違うわ、メイドナイトよ!」

「おうそうか。元気にな」

「何処行くのよ!」


 再度腕を掴んでくる少女にオウカは嫌そうに「離せよ」と舌打ちする。


「なんで舌打ちするの!?」

「だってよぉ。メイドかナイトかどっちかにしろよ。なんだそのジョブ」

「私だって知らないわよ! でもこの格好だってシンボルアイテムなんだから仕方ないでしょ!」

「そりゃけったいなこって……」


 メイドナイト。実のところ、一部の貴族や王族に一流のボディガードとして雇われるジョブだ。

 メイドとしてのスキルとナイトとしてのスキルを習得する「究極の使用人」と呼ばれるジョブの1つだが……こんな荒くれ者だらけの迷宮都市の冒険者がそんなものを知るはずもない。通常、メイドナイトはそうと分かると同時に王都の上級貴族や王族に秘密裏に囲われるからだ。そして……メイドナイトは世間的にはこういう風に噂を流されている。


「メイドとしてもナイトとしても半端なゴミジョブって言われて誰も組んでくれないし雇ってもくれないんだもの! 貴方なら気持ち分かるでしょ!?」

「んー……そう言われっと弱ぇけどさあ……」


 実際、オウカもパーティーを「組めない」側の人間だ。そういう意味では、理解はできる。できるのだが。


「……誰も組みたがらなかったのか? 正直、そこが納得いかねえ」


 正直、目の前の少女は美少女だ。半端だろうとスキルが使えるなら下心満載の男が近寄ってきそうなものだが……。


「エロい目の男ならたくさん寄ってきたけど。そういうの嫌い。つーかもう、男が嫌い」

「お、おう」


 オウカはすぐ手も足も出るからそういうのは最近出てこないが、苦労したのだろうと思わせる目をしているのを見て、オウカは「はあー……」と大きく溜息をつきながら頭を掻く。


「……とりあえず仮でなら組んでやるよ。アタシも今回は様子見で潜ってんだ」

「やったもう絶対逃がさない! じゃなかったありがとう!」

「早速だけど解消していいか?」

「ダメ」


 フルフルと首を横に振る少女だが……まあ、仮でも組んだ以上は仲良くやる必要はある。

 オウカは渋々ではあるが、少女へと手を差し出す。


「オウカだ。サムライだが、まだ覚醒してねえ。カタナの情報は歓迎するぜ」

「アンナよ。ジョブはメイドナイト。よろしくね、仮のご主人様?」

「解消」

「しないから。なんで嫌そうな顔すんのよ」

「ご主人様とかいうガラじゃねえよ……」


 握手した手を早速離したがるオウカと、ギュウッと握るアンナ。覚醒している分の差なのか、かなり力強い。


「結構パワーあるな、お前」

「そうね。ナイトだからじゃない?」

「メイドナイトだろ?」

「ナイトはナイトでしょ」


 言いながら、アンナは背中に背負った盾とショートソードを構える。


「まあ、任せてよ。私、1階層ならソロで何度も潜ったから」

「そうかい。じゃあ頼りにしてるぜ」

「勿論よ!」


 一気に気合が入ったらしいアンナにクックッと笑いながら、オウカは飛んできた矢をシミターで叩き落とす。その視線の先に居るのは……弓を構えたゴブリンアーチャーだ!


「あ、ゴブリンアーチャー⁉」

「だけ、じゃねえな」


 ゾロゾロと出てくるのはナイフや斧を構えたゴブリンたち。


「1、2、3……合計4匹か」

「問題ないわ! 【ヘイトアップ】!」


 アンナが盾を構えてスキル【ヘイトアップ】を使うと、光が広がりゴブリンたちを通り抜けていく。その、直後。


「ゴブウウウウウ!」

「ゴブッ、ゴブブ!」

「ゴブアアアア!」


 急にゴブリンたちが怒りだし、アンナに向かい走ってくる。なるほど、どうやらアンナに攻撃を集中させる類のスキルであるらしいと理解したオウカは地面を蹴り、1体のゴブリンをシミターで切り飛ばす。


「少し耐えろ!」

「任せて!」


 オウカが狙うは、アンナに向けて矢を放つゴブリンアーチャー。オウカが近づいているというのに、見てすらいない。


「つくづくスキルってのはすげえな……!」


 一撃でゴブリンアーチャーの首をはねて、オウカはそのまま足の動きだけでターンする。

 ……が、そこには切り倒されたゴブリン2体の姿があった。アンナが倒したのだろう、血を掃っているのが見える。


「やるじゃねえか」

「でしょ?」


 なんでもなさそうに微笑むアンナに、オウカは「こりゃアタシが節穴だったって認めるしかねえな」と呟いていた。

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― 新着の感想 ―
知られたら囲われるのだろうが周りに知ってる人が居なかったと言うかこの迷宮都市自体が辺境でギルドも把握してなさそうですね。 メイドナイトが弱い訳ないんだよなぁ。
押しが強いwwwwwクセが強くてかわいい! まぁ、世間的には半端なジョブ認識ならパーティ組もうとするのって下心100%になるよねwww苦労してるのかぁいい! 秘密裏に囲うために情報工作まで行われている…
もうご主人様認定されてしまったw
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