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オウカ放浪譚  作者: 天野ハザマ


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22/27

今後の予定は2

「さて、と」


 アンナに一言伝えてリビングに戻ってきたオウカは、ソファにどっかりと座り地図を取り出す。

 盗賊団のアジトから随分前に奪ってきたものだが、まあ周囲の町や道などが簡易的に描かれているものだ。

 正直、こんなものでもマトモに手に入れようと思えば相当の金がかかるし、何より偽物も多すぎる。

 真偽を確認するには自分で「行ってみる」しかないし、結果として何らかのトラブルに巻き込まれたか戻ってこないという者も多い。

 過去に国防上の理由がどうとかで国主導で偽の地図がバラまかれたりした経緯もあり、その辺の見極めは非常に難しい。

 しかしながらそれなりの規模の盗賊団が後生大事に抱えていた地図ともなれば信憑性はそれなり程度には高い。それを彼等の商売に利用していたと推測されるからだ。


「欲しいものは大体盗賊が持っている、ってな……」

「え、何その怖い台詞」

「なんだよ、もう出てきたんか」

「お湯を大量に使うのが急に怖くなってきて……」

「いや、いいけどよ……」


 隣に座ってくるアンナが着ているのは宿に置いてある簡易なパジャマであり、まあスタイルがいいせいかよく似合っている。


「で、何よその、欲しいものは盗賊から奪えとかみたいな言葉」

「まあ、本質は掴んでるな……」


 言葉は違っても大体同じ意味なのでオウカはそのままにしているが、まあつまるところ、奪ったものは売り払う盗賊団が手元に置いているものは使えるものである、と。そういう話だ。

 盗賊団のアジトを襲った際に良いものが拾えたりするのは、そういう理由であるからだが……まあ、さておいて。


「とにかく、だ。次何処行くかを考えねえとな」

「はー、それで地図……私、次の町に行って、そのまた次へ……ってのを考えてたわ」

「まあ、そうなるだろうけどよ。それにしたって指針がねえとな」


 たとえば、この地図に載っている町や村は幾つもあるが……その全てに行くつもりでは、人生を何度繰り返しても足りない。

 ある程度の決め打ちが必要であり、そのための地図なのだ。

 今回で言えば目的はカタナであり、それが出そうな場所を探さなければならない。


「指針ってカタナ探しよね?」

「ああ」

「じゃあサン帝国じゃないの? カタナってあそこ発祥でしょ?」

「お前……サン帝国が滅びてから何年たってると思ってんだよ……」

「え? 滅びてたの?」

「300年以上前だぞ……いやまあ、知らねえか。情報屋から買った話だしな」


 サン帝国。かつて東方にあった閉鎖的な国だったとされているが、オウカの黒髪もその辺りの血を引く証であったりする。

 カタナやサムライもそこ由来とされているのだが、強大なドラゴンに滅ぼされたとされている国でもある。

 その生き残りはあちこちに散ったと言われているが、その足跡を全て追うのは不可能だ。

 何しろ、何処かに隠れ里があるなんて噂もあるくらいだ。

 そういう噂が立つ程度には、その知識を継承するものが少ないわけだ。

 実際オウカだって、サン帝国について詳しく知っているわけでもない。


「じゃあ、やっぱりダンジョン?」

「迷宮都市を回るのはアリだな。此処に無いだけで他の迷宮都市では投げ売りされてる可能性だってある」

「ふーん。とすると一番近い迷宮都市って……」

「迷宮都市テンランス。此処だな」


 オウカが地図の一点を指し示すが、それを見てアンナは首を傾げる。


「……近いの?」

「馬車で2カ月。徒歩だったら考えたくもねえな」

「げっ」

「実際には途中あちこち中継するから、もっとかかるな」

「うええ……」

「行くのやめるか? アタシは行くけどな」

「行くに決まってるでしょ!」

「おう、いい返事だ」


 ちなみに迷宮都市同士は大抵そのくらいは離れている。

 それがどういう理由によるものなのかはまだ解明していないが、解明するものかどうかも分からない。

 つまり迷宮都市を巡るだけでも相当な旅であり、大抵の冒険者は余程のことがなければ今いる迷宮都市に居つくわけだ。

 しかし、情報屋のネットワークだってそんな遠くの都市には中々及ばない……というかリアルタイム情報ではない。

 今この瞬間、何処かの迷宮都市ではカタナが産出されていてもおかしくないわけだ。


「結構な長旅になるのねえ」

「普通にやればな」

「え?」


 どういう意味なのか。アンナは考えて……やがて「あっ!」と何かに気付いたような声をあげる。


「ま、まさか……魔石列車に乗ろうとしてる⁉」

「おう。アレならテンランスの近くまで行ける。テンランス自体には繋がってないから行けねえんだけどな」

「ええ……? でもアレって凄い値段するものなんでしょ?」

「死ぬほど高ぇが、実際死ぬほどじゃねえ。少なくとも近くに行くために乗る奴ぁ、よっぽど金が余ってるやつだな」

「え、私の分も出してくれるの? ほんとに?」

「じゃなきゃ、乗るなんて言わねえよ」

「やったああああ! オウカ大好き!」

「おう、そうかい」


 喜んでくれて嬉しいぜ、と流しながらオウカは再度地図を見る。

 他にも候補はあるが……まあ、まずは此処から始めるのがいいだろう。


「さて、あとは準備だな……こいつが一番めんどくせえ」

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― 新着の感想 ―
目的の為なら高い金をポンと使えるオウカちゃん素敵! あぁ、確かに、わざわざ手元に置いておくとなると実用品の類か
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