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第8話 方針

屋上での一件で、あの無駄な押し問答の前に俺たちは、幾つか重要な事を話し合った。


「そういえばお前、名前なんだ?」


俺はふと気になった事を尋ねる。


そいつは目をぱちくりとさせた後、


「なんか、今更に感じるわね」


「別に、今日会ったばかりなんだから今更も何もないだろ」


「そうなのだけど………」


「細かい事は良いからさっさと答えろ」


俺は急かすように言う。


「……こういうのって聞いた方が先に名乗るものじゃない?」


俺はため息をついた後、


「………藍羽柊だ」


「北条玲奈よ」


「そうか、なら北条と呼べばいいか?」


「勝手にどうぞ、藍羽くん」


俺は一つ間を置き、俺は尋ねる。


「それで、これからどうするんだ?」


「貴方が決めるんじゃないの?」


そいつは不思議そうに言う。


「お前がやりたいと言ったんだ。ならお前が決めるべきだろう」


「それはそうだけど………最初に提案したのは貴方でしょ? というかさっき作戦とか丁寧に私に説明してなかった?」


「そんなことしたか? 悪いが記憶するのは苦手であまり覚えてないな。俺はお前に協力すると言ったことしか覚えてない」


「……随分と都合の良い記憶をしてるのね」


「それはお前の気のせいだ」


そいつは納得のいかない様子で俺を見つめ、やがて溜息をついた後、


「分かったわよ……やればいいんでしょやれば」


「それで、結局どうするんだ?」


俺は先程と同じ問いをする。


そいつはしばらく逡巡した後、


「……そうね、学校を壊すならさっき貴方が言ったように他の人を引き入れて徐々に同士を増やしていくのが一番現実的なんじゃないかしら」


「俺はそんな事言った覚えないけどな」


「……………」


そいつは黙る。こういうとき無視が一番辛いというのは本当らしい。


「でもどうやって他の人を引き入れようかしら、素直に言っても上手くいくわけないし……」


まあ、この時点でここまで考えられていれば上出来か。


「仲間を増やすのは任せてくれないか?俺に考えがある」


俺は北条に向かって言う。


「………元はと言えば貴方が発案したものね。それで、その考えって?」


「今はまだ言えない」


そいつは訝しむような目つきで俺を見る。そして、少し考える素振りを見せた後、


「分かったわ、ならそっちは任せるわよ」


「了解した」


「………」


そいつはまた何か考えているのか、顎に手を添えて沈黙する。

よく漫画やアニメなどでやっているのを見るが、北条がやると実に様になっていた。この絵だけ切り取れば探偵と言われても不思議では無い。

それからしばらくして、北条は口を開く。


「なら私は情報を集めるわ」


「なぜだ?」


俺は理由を問う。


「何をするにしても、情報があるとないのとでは取れる選択肢が大きく変わるからよ。まずはクラスの人間や、その周辺の関係から調べたほうがいいかしらね。それから──」



再び思考の底に沈む北条を横目に、俺は内心関心していた。会話の節々でこいつの頭の良さを感じてはいたが、想像以上に現状を分析する力や洞察力に長けている。メンタルにより左右されやすいのがネックだが、正直想定していたよりずっと頭が回る。

俺は北条に対する評価を改める。


「よし、とりあえずこれからする事は決まったわね」


俺が思考している間に北条はいつの間にか予定を組み立て終わっていたようだ。


「すまない、少し頼みがあるんだが」


俺は北条を見つめる。


「いいわよ、どうしたの?」


俺は頭の中に用意していた言葉を紡ぐ。


「お前が今所属しているクラスの情報を俺に教えて欲しい」


「クラスの情報?」


「ああ、正確に言えば今の北条のクラスの状況とクラスメイトの情報を知っている限り全て俺に伝えて欲しい」


「……それは分かったけど、私が知っている情報はそんなに無いわよ?」


「それで十分だ」


「………分かったわ、今伝えれば良いの?」


「いや、今日はもう遅い。帰ってから整理した情報を俺に送ってくれ」


「了解、なら連絡先を交換しておきましょう」


俺たちはスマホを出しあい、連絡先を交換する。


「それにしても……」


スマホをしまった後、北条はそう呟いて、


「結局貴方の良いようになった気がするわね」


不満気な顔でそう言った。北条の瞳は何かを探るようにこちらを見据えていた。


「……最初の方は俺が振り回されてた気がするけどな」


俺は首を掻きながら、ただそう答える。


「あら、そんなことあったかしら。覚えてないわね」


そいつはしてやったという顔をして言った。

俺は溜息をついてから、


「……もうする事はないし帰るか」


「そうね帰りましょうか」


そうして、北条は俺の横を通り屋上を出ようとする


「待ってくれ」


そこで俺は北条に声をかけた。

北条は驚いたのかビクッと身体を震わせた後不思議そうに尋ねる。


「どうしたの?」


「この時間に二人でいるところを万が一見つかれば、これからの計画に支障が出る可能性がある。ここは一人ずつ帰ろう」


「……少しは私の身を案じてくれないかしら」


まあこんな夜に女の子一人で出歩くのは危険だろう。


「仕方がない。ここで最初に躓くのも嫌だろ?」


「……まあ、0.5里位はあるかもね」


なんだその微妙な数字。


「そういう事だ、悪いが一人で帰ってくれ」


「………はあ、まあ分かったわよ」


渋々といった様子で納得する。その身体は少し震えているように見えた。


そして、おれはそんな北条を見て次の言葉を紡ぐのだった。



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