第3話 博打
短め
「目は口ほどに物を言うって言うだろう?」
俺がそう言うとそいつは怪訝そうにこっちを見つめているが、俺は構わずに適当な理由をでっち上げる。
「お前の目が綺麗に見えたからな、勿体なくなったんだ」
そいつは本当に困惑したような様子で言う。
「なにそれ、意味がわからない、貴方さっきから言ってることもやってることも滅茶苦茶よ」
それはそうだろう。そう見えるように振舞ったのだから。
だか別に嘘では無い。ここまでこいつを観察して、その瞳に宿っているものに惹かれたのも事実だ。まあ、それが全てでは無いわけだが。
「会ったばかりでお前のことを何一つとして知らなかったからな、少しお前を試す必要があった」
そいつは首を捻り、問いかける。
「試す?」
俺は一つずつ説明していく。
「ああ、お前が必要なものを持っているかどうかを確認していた」
「それで私がそれを持っていると判断したってこと?」
「まあそんなところだ、少しは聞いてみる気になったか?」
そいつは観念したかのように大きなため息をつくと、
「まあここで逃げたら何されるかわからないからね」
こいつの目には俺がどう映っているのだろうか、聞くまでもなくヤバいやつだろうな。自分でやった事とはいえ少し落ち込む。
俺は一度深く息を吸って吐く。そして、間を置いてから言葉を紡ぐ。
「この学校はどうしようもない程腐っている」