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野盗狩りを亜人娘はやりたい。

 町長を名乗る老紳士バンファルに尋ねられたので先ずはナナリが名乗る。


「わたしはゴブリナのナナリ。山奥でヴァルおじいと暮らしてた。おじいが死んだから町に降りてきた。」


 それを聞きバンファルは目を細める。


「何、ヴァルの養い子だと?

それは聞いていなかった。…いや、隠していたのだろうか、この世界はゴブリナへの仕打ちは最悪だからな。」


 ゴブリナはゴブリンに孕まされて産まれる。特にエルフより産まれる事が多くその殆どが最悪、赤子の時に捨てられてしまうのである。

 例え、そのまま育てられたとしてもプライドの高いエルフからは蔑まれ忌避される。

 人間社会に至っては性の対象となり愛玩奴隷とされてしまい、貴族などに高値で奴隷として売り買いされてしまう事も多々ある。


「大丈夫、おじいから狩猟技術(・・・・)をみっちり仕込まれてるから大抵の奴には負けない。」


 ナナリはピョコピョコと尖った長い耳を動かしてドヤった。


「そうか。…ではそこの大女は名は何と言う?」

「あたいはボルテア。ダミルの村から来た。そこのゴブリナ‥」

「ナナリ…っだ、胸デカ巨女(きょじょ)。」

「何だ“きょじょ”って。…そこのナナリと同じで親が死んで故郷のダミルの村を出て来た。」

「悪漢共に追われていたらしいが何をした?」


 恐らく町長が聞きたいのはソコなのだろう。特に隠す様な話ではないので簡単に伝えた。


「村を出てこの町に来る途中で二人の姉妹らしい殺人死体があってよ。丁度犯人の賊三人がいたから全員撲殺してやった。

それからその場を離れて暫くしたらあの集団が馬に乗って追いかけて来たから思わず逃げちまった。

殺ろうと思えば殺れたんだが何か楽しくなっちまってよ、一日程駆けずり回ったぜ。」


 笑顔で話すボルテアにバンファル達は目を丸くする。あれだけ騎馬集団に追いかけてられて何本も矢を背に射られて生きているのが不思議なくらいなのにあの状況を楽しんでいたとは彼等には理解が出来なかった。

 しかし今の話に聞き捨てならない部分がありバンファルはその事について尋ねる。


「殺されていた姉妹と言ったか?」

「姉妹かも知れねえが母娘(おやこ)とも言えなくもねえな。」

「おい、町民庁舎に行きここ一週間の行方不明の姉妹ないしは母娘の届けが出ているか調べろ。」


 バンファルは護衛の一人に指示を出す。


「他に何かないか?賊の素性に関してとか…」

「あぁ、一人が捨て台詞に自分達を“千牙”って言ってたぜ。

千牙っつったら最近ここいら辺荒らし回ってる野盗共だよな?」


 その問いにバンファルは首を振る。


「千牙…違うな。そいつ等はこの区域で悪さを繰り返しているのは軀牙(くが)と言う野盗集団だ。

数十人程度だが野盗としてはそれなりに大きな集団なんだが、いつ頃か千牙を騙り悪さする様になった。

…下手をしたら本物の“千牙”が動いて軀牙を皆殺しにしかねんな。」

「おじいが言ってた。千牙はこの国の闇そのものだって。」


 ナナリの言葉にバンファルは頷いた。


「そうだ、千牙はこの国…ブルンバルド王国に根付く巨大な犯罪組織の呼び名だ。貴族、商人等の富豪と深い噂が絶えない危険な連中だよ。」


 そこまで聞くとボルテアは不敵に笑った。


「野盗が千牙じゃないにしてよ…、まさか“そいつ等”を待ってこのまま放置するなんてねぇよな…町長さんよ〜?」

「無論、我々が先に動き軀牙を捕まえる。

町の門前まで騎馬で現れたのだから町ももう安全とは言えん。完膚なきまで叩き潰すまでだ!」


 するとボルテアの長く太い上腕部が真っ直ぐに、指先揃えて天井へと掲げられた。


「あたいも行きたい鏖殺(やり)たいっ!」 

「わたしも行きたい。」


 ナナリもシュッと指先揃えて手を上げる。


「駄目だ。お前達この町来たばかりであろう、討伐隊は町の警備隊で編成する、後鏖殺はしない。

ついて行きたいなら先ず冒険者ギルドに登録すると良い。これからギルドにも依頼を出し隊に組み込むつもりだからな。」

「登録だな、元々冒険者になん為に町に来たから問題ねえ!

善は急げだ!」

「わたしも急ぐ!」


 …と、詰所を飛び出そうとする二人をバンファルが呼び止めた。


「待て待て、先ずは宿だろ。儂の方で良い宿を探してやろう。」

「何だよ、流石にそこまでしてもらう義理はねえよ。」

「わたしは手間が省けるからお願いしたい。」


 町長の提案にボルテアとナナリの意見が別れるが、町長バンファルが二人を気にかける理由を話した。


「“ゴブリナ、レディオーク”と珍しい亜人の女とお近づきになりたいと言う下心だ。気にするな。」

「町長、感が良いな。あたいを村の外の奴等で見抜いたのあんただけどよ。」


 …などとボルテアは町長を讃えているが、周りの目が自分に注がれている事に気付く。


「「「レディオークだとお!?!?!?」」」


 三人の男共が声を揃えて叫び、ナナリが頬に一汗垂らして呟いた。


「ふっ…、わたしは気付いてた。」

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