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老紳士は町長様。

 騎馬集団を追い返したボルテアとナナリは門番詰所を借りてボルテアに何本も刺さっていた褐色色の背の矢傷の手当てをしていた。

 門前でボルテアが無雑作に抜き始めたのでナナリと門番二人が止めに入って三人で丁寧に抜いてやり、傷の手当てする場所とした門番達の配慮であった。


「今ドリンクポーション持ってきてやる、待ってろ。」


 門番がボルテアに言って詰所を出ようとする。因みに彼はナナリの対応をした際、門左に立っていた門番である。


「しかし八本近く刺さっていたが殆どが矢の切っ先までしか通っていなかった。

この背中の硬さは尋常じゃないぞ。しかも傷は刺さり矢より多かったぞ。」


 そう言って驚いているのはナナリ対応の時に右側にいた門番である。


「おうよ、あたいの背中はべらぼうに硬いのよ。

一度村の近くに出没()しやがったオウルベアに撫でられた事だってちょっと傷筋が3本引いただけだったぜ。」


 …と言ってボルテアはガハハ…と笑い門番二人はかなり引いていた。

 オウルベアとは頭がフクロウ、体が熊という怪物で大昔にキメラ実験で生まれた魔物である。脅威的には野生の熊と対して変わらないが同じ鋭い爪と力があるので撫でられれば肉を深く削がれてしまうだろう。

 ナナリはそんな話を無視してリュックから何かの塗り薬を取り出す。


「矢傷にはドリポよりもペイポの方が良い。ドリポは即効治癒力が売りだけどペイポは治癒は遅いけど消毒効果が付与されてる。特に急がないならペイポがお勧め。」

「おいゴブリナ、お前があたいの手ぇ矢でぶっ刺したのと胸蹴りつけた事忘れてねえからな。」


 ボルテアはそう吐きつけナナリを睨む。

 ドリポとドリンクポーション、ペイポとはペイントポーション、いわゆる治癒の魔法薬である。ドリンクポーションは即効性の飲む治癒薬で主に冒険者や土木作業場、大工で働く人達が使っている。

 ペイントポーションは塗り薬で家庭に一つある一般的な治癒薬で効果はドリンクポーションより大幅に劣るが多少の消毒効果があって安いので平民家庭には重宝されている。

 ナナリはボルテアの背中のいくつもある矢傷にペイントポーションを塗り込むと、彼女はリラックスでもしたのか表情がゆるんできた。


「効くな…ペイポ。傷の痛痒さが消えてきてんよ。このゆったりとした治癒が気持ちも癒やしてけれんだよな…。」

「おお、こんな所にペイポ推しがいたと喜ばしい。ドリポじゃあこの感覚は味わえない。」


 つい今言った文句は何処へやら、ボルテアの緩んだ感想にナナリも同意。門番二人は少し冷めた眼差しでボルテアとナナリを見ていた。


「おいヒダリン(・・・)。」


 …と、ナナリが門番二人を見て呼ぶ。


「「?」」


 二人は誰を呼んでいるのか分からずナナリに聞いた。  


「誰だよヒダリンって?」

「そんな奴居ねえよ、詰所(ここ)には四人しか…?」


 するとナナリは左門番を指差した。


「お前がヒダリン、因みにそっちはミギリン。」


 そう言って右門番を指差され、変なあだ名で呼ばれた二人は「「ふざけんなっ!!」」と怒鳴る。


「よろしくな、ミギリンにヒダリン。…ぷっ!」


 ボルテアは緩んでいた表情を歪んだ笑顔に変えて、口に手を当てて吹いた。

 ヒダリンこと左門番のこめかみに青筋がビシリと走り、ミギリンこと右門番の眉間が割れた。

 其処へ詰所のドアを二人の護衛を連れた老紳士が入って来た。身嗜みを整えた老紳士が前に進み、後ろの屈強な護衛の男はドアの両端に立つ。

 その初老の男性に気付いたミギリンとヒダリンは直ぐ詰所の様角に寄り彼にビシリと敬礼をする。


「ん?誰だよこの爺さん?」

「なかなかナイスシニア、おじいには劣るがな。」


 ボルテアが警戒し、ナナリも軽口を聞かせながらも同じく警戒する。


「そうピリピリするな、儂はこのボンメルの町長を務めているバンファルと言う者だ。

お前達の名は何と言う?」

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