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そして二人は邂逅した。

 激しい土煙を上げながら十騎近い騎馬を背にボルテアは全速力で走っていた。ポニーテールに結ったざんばら髪を振り乱し、やはり土煙を上げながら暴れ馬の如く駆け抜けて罵声飛び交う騎馬集団から逃げていた。


「テメェの身内も見つけ出して同じ目に合わしてやるぜドブス!!」


 そんな罵詈雑言を耳に入れたボルテアは眉間を寄せて眉毛をつり上げた。


「誰がドブスだこの野郎、後でぜってぇ殺す!」


 …と毒吐きながらも騎馬集団を寄せ付けずに駆け走る。背後から飛んでくる弓矢は彼女の背に突き刺さるが全く物ともしていなかった。

 ふとボルテアは前方から砂煙を目視して目を凝らした。自分と後ろの集団と同じく土煙を巻き上げながら黒い影が一つ、物凄い早さで此方に向かって来ていた。


「何だ、後ろの奴等を狙ってんのか?」


ボルテアはそう思ったが影は彼女へと真っ直ぐ駆けて来た。相手の速度を考えると高い確率でお互い衝突する。…だがボルテアは何を考えたが走る速度を上げて影に向けて突進。

 するとまるで呼応する様に影も速度を上げた。被っていたマントのフードが風に煽られて脱げて黒マフラーで耳鼻から顔半分を隠した頭が見えた金髪の…緑肌の顔色にボルテアは少しだけ驚く。


「ゴブリン?」


 ゴブリン…全世界に生息する魔物で群れで他種族を襲い、略奪の限りを尽くす小鬼。しかし目の前から向かって来る小さな黒マントの走り方はとても理知的で一つの目的を果たさんとする意志を感じた。ゴブリンは獣と変わらず本能に従い動く魔物。ましてや金髪のゴブリンとか全く聞いた事もない。

 …と、突然その影がジャンプ。突進するボルテアの右肩を着地点として飛び乗って来た。その右手にはクロスボウが握られている。


「おいお前…」


 影はボルテアに応えずにクロスボウを構える。そのクロスボウにはまるでマスケット銃の様な握りと小さな望遠鏡の様な物が取り付けられていた。

 黒尽くめの小さな人物は激しく揺れるボルテアの右肩に乗ったまま小さな望遠鏡を覗きクロスボウを構え、後方の騎馬集団の先頭に狙いを付け、引鉄を引く。

 カシュンッ!!…と音がして弓矢が騎馬集団先頭の男の眉間を貫いた。

 眉間を射抜かれた先頭の男は馬から落ちて後ろを走っていた騎馬を二騎巻き添えにした。

 落馬した一人は運悪く頭から地面に落ちて首を折り絶命し、もう一人は何とか受け身を取りまた馬に跨るが、矢に射抜かれた男はどうやら集団のリーダーだったらしく騎馬集団は悲鳴を上げながら逃げ戻ってしまった。

 黒尽くめの小さい人物は金髪の前髪を軽く手櫛で整えて射抜いた男の死体から矢を抜いて回収しようとするがなかなか抜けずに苦戦する。


「ふんぬ〜ッ!!」


 スポンと抜けた勢いで後ろのめりになり倒れるかと思いきや、ポフっとボルテアが大きな両掌で両肩を掴み受け止めてくれた。


「大丈夫か、ゴブリン。」

「ゴブっ!?」


 彼女にゴブリンと言われた小さな黒尽くめは素っ頓狂…なれど小鳥の様な声を出し、次の瞬間ボルテアの右手の甲に男の亡骸から抜いたクロスボウの矢をグサリと突き立てた。


「いってーっ、何すんだクソチビ!!」


 ボルテアは黒尽くめの黒マントの襟首を掴み持ち、眼前まで吊るし上げた。


「ゴブリンでもチビでもない!

ナナリ、ゴブリナのナナリ!!」


 そう叫ぶ黒尽くめの…ゴブリナのナナリは口元を隠した黒マフラーを下げて同じ目線のボルテアに叫んだ。

 反対にボルテアは目を丸くし、目の前で睨みつけている黒尽くめがゴブリンではなくゴブリンと様々な人種の女性から産まれる希少種…ゴブリナと知り思考が一瞬止まった。

 金髪のショートボブ、長く尖った耳に幼くも奇妙に大人びた顔。そしてゴブリンと同じ緑色の肌をした彼女(・・)はボルテアの豊満乳をベシッと蹴りつけた。

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