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そして事件は起こり、ボルテアが奮い立つ。

 ナナリがバンファル邸に着いた少し前にボルテアは冒険者ギルドに着いていた。ギルドに入ると何やら中ではちょっとした騒ぎになっていて受付で中年男が必至にレディオークがどうとかゴブリナは何処だと直ぐ依頼したいだとか脈絡のない言動を口走り受付嬢…アリンを困らせていた。傍らにはヌシュドもついている。


「落ち着いて下さい、ご指名依頼なのは分かりますがまだ当人達がギルドに来ていないんです。それに人拐いなら町の警備隊に行かれた方が…」

「駄目なんだよ、醜鬼女と小鬼女呼ばなきゃケラが殺されちまうんだよ!」

「あたいに依頼かい、ナナは後から来るよ。」


 中年男性の後ろでボルテアが立ち話しかけた。


「ボルテア、かなり厄介な事態だ、大衆食堂のフォックステイルの娘が拐われたらしい。

しかも犯人がお前とナナリを指名だ。」


 ヌシュドが大まかに説明すると中年男性がボルテアに縋り付いて泣き喚いた。


「ケラは、ケラは孤児で二年前に小汚い姿で店に来て“働かせて”…て泣くからよ二束三文で雇ったんだ。

最初は少ない金で良くからいい拾いもん程度にしか見てなかったんだ。

だけどよ、いつからか情が移って娘みたいに見えて今は最初の数倍に賃金も上げて…頑張り屋な娘なんだ!

そしたら今朝、店開けてたら二人の見知らねえ男に拐われてお前さん等以外に連絡したらケラを殺すって、何だか分かんねえが、ケラを…娘を助けてくれ。助けて…。」


 中年男性は昨晩に食事をした大衆食堂の店主だった。ケラとはボルテアがちょっかいを出していたフォックステイルの娘である。ボルテアは眉を潜め、店主の前に片膝を付いた。…と、彼女の後ろからあの初めてのギルド来店時にボルテアに絡んできた冒険者が大声で野次を飛ばして来た。


「醜鬼女指名かよ、獣人娘の救出とかどうせ雀の涙程度の金だろ。亜人にゃあお似合いだぜ。」

「獣人娘とか∣店主おやじも良い趣味してるぜ。夜の相手でもやらせてんだろ。」


 “ギャハハハッッッ!!”と神経を逆撫でする嗤い声の大合唱を上げる冒険者達。さすがのヌシュドも苛立ちが抑えられないのか腰の短剣に手が伸びる。だが意外な人物が彼の肩に手を置いて止めた。


「…ボルテア?」

「ヌシュド話が進まね。彼奴等は無視しろ。」


 ヌシュドは一番先に切れそうな彼女に諌めされて呆気に取られ、アリンも意外とばかりにボルテアを見つめてしまった。店主は1枚の紙をボルテアに渡してケラを拐った男達の居場所を伝えた。


「彼奴等はこの町の外れにある貴族の別荘だった廃屋だ、これは地図らしい。」

「任せろおっちゃん。ケラは必ず助ける、だから店で待って手くれ。」

「今固まった金はねえが、今はこれで…」


 …と金を入れた袋を見せるがボルテアは立ち上がり背を向ける。


「金は今は邪魔だ、後だ。コレから直ぐ行くからよ。」

「待てボルテア、ナナリを待たないのか!?」

「あたい一人で充分だ、どうせ雑魚ばかりさ。」


 そう言ってギルドを出ようとするがボルテア達を(あざけ)った冒険者が彼女に立ちはだかり道を遮った。手にはアイアンソードを握っている。


「あまり調子づくんじゃねえぞ、オークおんっ!?」


 しかし冒険者は台詞が終わらない内にダミルの木のこん棒の打撃でギルドの外へと叩き出された。冒険者達が仲間の周りに集まり担ぎ上げると数人が剣を抜いた。


「やりやがったな、亜人女!」

「下手に出てりゃあつけ上がりやがって、ぶっ殺してやる!」

「五体満足でぶがっ!?」


 戯言をのたまう冒険者がボルテアの裏拳を受けてやはり吹き飛んだ。


「調子ずいてんのはそっちだろ、話聞いてたんだろ?あたいを止めんじゃねえ!」、


 そう冒険者達を一喝してボルテアは走って行ってしまった。


 



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