ナナリは千牙と対峙する!
ナナリは宿屋を出て真っ直ぐにボンメルの町の町長であるバンファルの屋敷に来た。屋敷の扉にはチンピラ風の男が二人…まるで門番の如く通行人を睨みながら威嚇していた。腰を曲げ、ポケットに手を入れながら煙草を咥えて素上不良を露骨に見せている。
(…違う、町の不良よりもっと質悪い。)
二人の眼光は不良にはない危険な光を発し、二人の目がナナリを捉えた。一人がナナリに近付きゴロツキの様にわざわざ腰を曲げて顔を近付けて威嚇をして来た。手を突っ込んどズボンのポケットには短剣より短い刃…折り畳みナイフでも仕込ませている様で何時でも抜ける形にしていた。
「テメエ、最近冒険者になったゴブリナだな?」
「町長のバンファルに用がある。」
チンピラ風の男は口の両端を上に上げて嗤うが目は嗤ってはいなかった。
「残念だが町長は今別の客が来て取り込み中だから帰んな。」
「そう、それは好都合。通るわ。」
ナナリはそう言って男の横を通り過ぎようとするが男の左手がナナリに伸び、そして悲鳴が上がった。チンピラ風の男は両膝を地に着け蹲り、左手をおさえて呻き声を洩らし苦しむ。彼の側には切り落とされた四本の指が落ちていた。
ナナリの右手にはいつの間にか短剣…コンバットナイフが握られており屋敷の扉へと近付く。
もう一人がナナリを睨み、折り畳みナイフを抜いて近付いた。…無言の威圧、町の不良には真似できない殺気がナナリに小走りで迫って来た。
しかし彼女の顔面にナイフを突き立てようとした手首が血糸を引いて切り離された。
「ぐうっ!」
男は悲鳴を呑み込み、咄嗟に脇の動脈を反対の指で押さえた。気付けば四本指を切り落とされた男も左脇を指で押さえている。
(やはり只者じゃなかった。人の身体の仕組みを知ってる。)
…と、ナナリは持ち歩いているペイントポーション…通称ペイポの塗り薬と2枚のハンカチを出して先ずは二人の切られた断面にペイポを塗り、ハンカチで切り落とされた部位を包み、脇の動脈を押さえた手に渡してやる。
「町の治癒院で治してもらいなさい。途中でドリポは絶対飲まない事、断面塞がって手も指も付けられないから。」
二人の男は憎らしげにナナリを睨みつけると透かさず走り去り、彼女はそれを見送って屋敷へと入る。屋敷の中はこの前来た時の様におばさんメイドがお出迎えしてくれず、廊下の奥から怒鳴り声の様なものが聞こえた。ナナリは声のする方へと行き、其処が前に自分達も迎えられた客間と知り、そのドアをノックし、無作法に開けた。
「何者…、ナナリか!?」
「へえ、コイツがヴァル老師の…養子だっけ?」
先に声を上げたのは町長のバンファルでその向かいには見知らぬ男がソファに足を組み無礼な態度で座っていた。
スキンヘッドの後頭部には蛇が眼口より頭を出した髑髏の刺青が彫られており、その蛇は彼の身体に巻き付く様に彫られていた。黒革のスリーブレスジャケットのみ着た姿で刺青が見える細い身体は肋も浮き出ていた。
「バンファル、こいつ”千牙“だね。」
ナナリの勘による言葉にバンファルはブワッと冷や汗を吹き出した。




