怒ったナナリがおっかない件。
ボルテアとナナリはトルトの村の事は後衛を名乗る冒険者パーティに任せてボンメルの町へと戻り、冒険者ギルドにて無精髭の男…ギルドマスターを呼び出した。
ギルドの客間で二人は高そうな大きなソファでボルテアは股を開きナナリに腕を回す形で座り、ナナリも両脚を組み向かいに座るギルマスを冷ややかな視線で見つめ両手を握り顎をくいっと上げてテーブルに広げた血で汚れた小鬼の右耳の山を差した。
「全部で122匹分。確かに20匹以上だったよ、ギルマス。」
口調がいつもの彼女より威圧的になっており、ギルマスはその山を冷や汗をかきながら凝視し、その目のままでナナリを見た。
「122…だと、此れを…お前達二人で殲滅したのか?」
「ボルテアの闘い方が対軍隊戦に適していただけ。元々正確な数がない依頼、取り敢えずゴブリンは殺せるだけ殺して頭のオークも殺した。証拠として右耳とオークが使っていた戦斧を持って来た。」
…と、ボルテアがオークの両刃の戦斧を取り出して目の前で振りテーブルを真っ二つ…ギルマスはビビり、小鬼の耳の山が床に散らばってしまった。
「ボッテ。」
ナナリは横目でボルテアを刃の様な睨みを利かせて嗜める。その目を見たボルテアもビクッと肩を弾ませて冷や汗を垂らし「ワリィ。」と小声で謝った。ナナリは視線をギルマスに戻し話を続ける。
「ゴブリンの残党の始末と村の生き残り探索は後から来た冒険者パーティに押し付けた。
あのパーティ、後衛とか抜かしながら戦いが終わるまで姿を見せずに様子見に徹していた。
彼奴等が参加していたらちょっとは此方も楽していたのに…、もし報酬の山分けなんかしたら許さない。
後借金は払わない、後衛自体聞いていないし、冒険者成り立ての新人に任せる依頼じゃない。下手したらわたしもボルテアも村人同様に小鬼共の餌食だった。他の冒険者なんて論外。王都から騎士団を呼ぶ小鬼暴走レベル。
報酬は約束分とオーバーワーク分上乗せして貰う!」
「えっ、そそいつは直ぐに頷けない。完全に予定外の金額だ!」
「なら町長と話し合え。元々わたし達は野盗討伐依頼を受けるつもりだった。それを無理矢理借金こさえさせ、小鬼討伐の方が金になると言って来たのはお前。
わたし達に誠意を示せ。」
するとギルドマスターは立ち上がり声を張り上げる。
「分かった。近日中に今回の件への謝罪を形にする…。」
そこでナナリとギルマスとの話し合いが終わった。
それから数日後、トルトの村から自称後衛パーティが戻り冒険者ギルドに報告…その際にギルドマスター…ギルマスに呼び出されていた。
「アルド、お前等への依頼はあの二人への増援、無理と判断したなら共に撤退…と伝えたはずだよな?
お前、あの二人見捨てて報酬を横取りするつもりだったな!」
パーティの剣士であり、リーダーのアルドはしかめっ面になりギルマスと対峙する。
「彼女達とは組めなかった。リーダーの俺が決めた事だ。
責任は…」
「責任だけの問題じゃない、冒険者ギルドの信用の問題でもある。あの亜人の新人冒険者…ゴブリナはハッキリ言わなかったが俺が二人を嵌めたのだと疑ってるよ。お前のした事は俺を深く貶めただけでなくこの町の冒険者ギルドの評判にもキズつけた。
他の冒険者に知れたらこの町の冒険者が激減する恐れがある。」
パーティのリーダー、アルドは俯いてしまう。彼はあの乱闘で同じパーティを組む仲間のウェルズがボルテアに顎を割られてから引き篭もり、出て来ないのである。アルドはその事でわだかまり、ボルテアとナナリを逆恨みしている様であった。
「パーティを組んでいる以上は連帯責任だ。今回の報酬は減らさせてもらう。」
「…分かったよ。」
アルドは反論する言い訳は見つけられず承諾するしかなかった。




