ナナリは不穏な動きを嗅ぎ分ける。
ナナリは額を負傷し、血で左目が見えにくいボルテアの手を引き、荷物を隠した場所まで誘導。鞄からドリンクポーションとペイントポーションを取り出した。
「先ず傷口にペイポ塗って消毒、ドリポ飲んで即治癒。二段構えで傷は残らない。」
ボルテアは大人しくナナリの手当てを受けながらドリポ《ドリンクポーション》を1本飲み干した。瓶を捨てようとするとナナリに怒られた。
「コラ、瓶は再利用出来るから捨てるな。」
「うっ、ナナはやっぱお袋みてぇに怒りやがる…。」
…と、シュンと広い肩を撫で方にしてボルテアは呟いた。
「母も悪くないがせめて姉にしてくれ。」
「ああ悪いな、幼馴染の“姉”がもういるんだ。一つだけ歳上のな。」
「そか。」
そう言うとボルテアの表情が少し複雑なものになった。
「ちっこい時はもう1人の男馴染と三人で遊んでた。でもあたいが12くらいからお袋や村長んとこのガルズのオッサンとの鍛錬に熱中しちまったから付き合い悪くしちまって距離空いちまった。」
そこでナナリがボルテアに左掌を向けて話を止めた。ボルテアも直ぐに察してこん棒の柄を右手で握る。
「待て、敵じゃない。」
茂みから四人の男女が出て来る。腰にロングソードを下げてレザーアーマーに身を固めた剣士にナナリと同じ様なフード付きの黒マントで姿を隠し頭が円を描いた杖を持った人物。宝玉を飾る杖を持った女治癒士に弓矢をを装備した狩人風の男。見れば剣士と治癒士は酒場でボルテアに顎を割られた男の仲間であった。
ボルテアはこん棒を握る手を緩める。
「あん時ギルドにいたな。ナナを貶めたセクハラ冒険者の仲間だったよな。」
セクハラ冒険者とはギルドでの騒ぎでナナリに如何わしい言葉を吐いてボルテアに顎を握り割られた男である。それを言われて治癒士がボルテアを睨むが彼女は意に介さなかった。
「…俺達は君達の後衛で依頼を受けて来た。後の片付けは俺達に…っ!?」
剣士がナナリにめを向けると彼は未だ武装を解かずに剣士の額にクロスボウ…ボウガンを向けて引鉄に指を掛けていた。
「待て、俺達はちゃんとギルドからの依頼で…」
「夜営でわたし達を見ていたな。」
「…何の事だい?」
相手の剣士が気不味そうな笑顔を浮かべる。
「まじかよ、全然気づかんかった!…何で教えてくんなかったんだよ?」
「特に何もしてこないと確信あったし、ボッテに伝えたら面倒くなる。」
「ちぇ、信用ねえな。」
ボルテアはむくれて不貞腐れる。そんな彼女を放ってナナリは剣士を鋭い視線で刺す。
「協力するつもりもなかったみたいだから放置した。今更顔出したのがその証拠、寧ろ何で今接触して来た?」
ナナリの問いに四人とも冷や汗を垂らし唇にギュッと力が入る。
「後衛か、わたし達が聞いていない以上、依頼の横取りと間違われて殺されても文句は言えない。」
剣士の表情が曇り出したのを確認したナナリはボウガンを左腿に向けて引鉄を引いた。矢が腿を貫き剣士が悲鳴を上げて腿を押さえ、治癒士が急いで魔法で治癒を施す。
「何するのよ、此方には本当に争う意志はないのに!」
「ボッテとわたしは討伐した死骸から右耳切り取るから死骸には触るな、少しでも触れれば横取りと判断して…殺す。
お前らは生き残りの小鬼の処理。望み薄だけど村の生き残り捜して保護。…後衛なんだからな、依頼の後始末がギルドからの依頼なんだろ?」
治癒士の抗議を無視して敵意の視線を向けて言い捨てた。治癒士はその視線に呑まれ口を噤む
「ボッテも動けるなら自分の分は自分で取る。」
「ええ、あたいが殺った小鬼、みんなグチャグチャなんだけど…」
「知らない。…あっ、因みにわたしとの勝負はわたしが42、ボッテが73にオーク1でボッテの勝ち、答合わせする。
…ボッテはこん棒一振りで何体もぶっ殺だったから…この競争はわたしじゃ勝てん。」
依頼前に交わした約束…討伐した小鬼の数でボルテアがナナリに勝てばコンビを組む…はボルテアがナナリに勝ったという事の様だ。
(…つうか、あの乱戦で自分だけじゃなくあたいのも数えていたのか!?
そしてそれがホントなら!)
「これでナナと冒険者コンビだあっ!!」
ボルテアがその巨体で飛び上がり、宙で喜びのガッツポーズを決めた。
少し気になりボルテアはナナリに聞いてみる。
「なあ、何で彼奴の足撃ち抜いたんだ?」
「何となくイラッとしたから。」
「…怖っ。」
ボルテアはナナリとコンビが組めたのを別の意味でも喜んだのであった。




