怒ったボルテアがおっかない件。
「勝負の駆け引きも知らねえ青二才が、脇が甘えんだよ!」
オークはボルテアを見下ろして嘲笑い両刃の戦斧を大きく頭の上まで振り上げた。だがオークの目に血が飛び散り視界を奪われる。ボルテアが額を押さえていた手についた自分の血をオークの両目に振り付けたのだ。
「ぐっ!?」
一瞬どころか完全に怯んで振り上げた戦斧を振り下ろせなかったオークはボルテアの左フックを右頬に食らう。
「ブッ!?」
口の中を自分の歯でザックリ切って血を吹くオークをボルテアは血走った目で捕らえ更に横っ腹にこん棒の一撃を入れる。「ぐぼっ!?」とまた血を吐き、ボルテアの黒髪に降りかかり、あまりの衝撃に右手の戦斧を落としてしまう。
「あたいのツラぁ、お袋から貰ったこの面をよくもおおっ!!」
ボルテアは雄叫びを上げるとこん棒を地面に投げ捨てた。
オークはボルテアの顔を見た途端に青褪める。ポニーテイルが解けて逆立つざんばらの黒髪、血走る目に更に太くなった猪牙があまりに異形で加えて全身から発せられている殺意と殺気に対し目に見えて狼狽えた。
ナナリも豹変したボルテアに戦慄を覚える。
「ボッテ?」
未だ生き残るゴブリン達はキーキーとか細い悲鳴を彼方此方で洩らし何匹も恐怖から失禁までしていた。
そしてボルテアの容赦ない蹂躙が始まった。
戦意を失くしたオークの顔に大振りの拳…右パンチを一発、左パンチを一発と食らわせておまけとばかりに右アッパーを顎に叩き込み、倒れかけたオークの頭を両手で捕まえて後ろに弓引く様に仰け反り、勢いよく頭突いた。一撃で右目が半分飛び出、鼻が潰れる。
どくどく流れる鼻血が涎と混ざりグシャグシャに砕かれた顎をだらしなく開いたオークは背中を見せて逃亡を図ろうとするが足が動かない。
下を見るとボルテアがしゃがんでオークの両足首を掴んでいた。そのまま立ち上がりオークは折れた左腕と歪み右目がはみ出た顔を打ち付けて「ギャッ!」とまた小さな悲鳴をあげた。
そしてボルテアは腕力に任せてそのままオークを頭の上まで持ち上げる。まるでオークがボルテアの肩に乗って立っている様にも見えるが彼女の腕の長さ分、離れていた。
オークはこの後の末路がどの様になるか直ぐ予測出来た。脱力して逆様になっても同じ目に合うだろう。
「やえで…、たふへへ…!」
グシャグシャになった顎で必死に口を動かして誇りも傲慢もない本気の命乞いの言葉を血反吐を垂らしながら絞り出す。涙すら流した懇願だが、ボルテアの足首を握る力が強くなる。
「地面の染みになって死ね!」
「やえへえええーっ!!」
オークは凄まじい勢いで振り下ろされ地面に叩き込まれた。前面が少し埋まり飛び出かけた目玉は潰れ顔面から血飛沫が“ぶしり”と散る。ボルテアはまた持ち上げて二度叩きつけた。
グシャリと厭な音を立てまた血飛沫が飛ぶ。
「ふぁ…」
小さな穴から聞こえるかの様なか細い断末魔をオークの口から囁かれたが彼女には届かない。
しかしオーク特有の生命力が災いして即死せずに苦しみは続く。左足を放しボルテアは何と片腕でオークの巨体を振り回しバシンバシンと何度も地面へと叩きつける。
その度に血が飛び散り、地面に吸われていく。次第に血だけではなく肉片も彼方此方へと飛んでいき、振り回されたせいで右足もバキバキに折れ骨がそこら中に突き出ていた。それでもボルテアはゆるめる事なく、彼女の周囲は言葉通りに血が染みとなり、肉片、千切れた贓物が広がっていた。
「死ね、シネ、シね、しね、しいねえっ!!」
するとポン…と誰かが軽く触れた感触を感じ、後ろを見るといつの間にかナナリが心配そうにして彼女を見上げた。
「ナナ?」
「ボッテ、もう死んでる。」
ボルテアは掴んでいたオークに目をやると、やっと人の原型が分かる程度にグチャグチャに潰れていた。




