いきなりマイナスから始まる冒険者。
ギルマスと呼ばれた無精髭の男は建物内を見渡す。
破壊されたテーブルや椅子、幾つも潰れ空いた床の穴、荒くれ者が突き刺さった壁や天井…、ギルマスはそれだけ見て疲れた目で下を向き大きな溜息を吐いた。
「何だよこの惨状は、オークでも暴れたか?」
「おっ、当たり。」
ボルテアが下顎の牙を覗かせて満面の笑みを浮かべた。
「ギルマスさん、此方新人冒険者のボルテアさんとナナリさんです。」
アリンは二人を紹介するがギルマスは目を細めて二人を睨んだ。
「ギルドを破壊したのはボッテ。」
「あっ、ナナ汚え!」
「いや冗談なしにわたし何もしてないし。」
言い争いを始める二人を見てアリンは苦笑いをして呆れてしまう。そしてギルマスはジーッと二人を見て二人にこう告げた。
「お前等に討伐依頼をやる。」
ギルマスはボルテアに一枚の依頼書を渡す。そこにはゴブリンを引き連れたオークの討伐が書かれていた。
「わりいなギルマス、なかなかオイシイそう依頼だけどよ、あたいもう受ける依頼決めて…」
「受ける。」
「んだとナナ、軀牙どーすんだよクガはよ!?
勝手に決めてんじゃねえよ!!」
いきなり依頼を了承したナナリにボルテアは食って掛かるが、ナナリは冷静にボルテアに言い聞かせた。
「ボッテは多分…、ギルマス…冒険者ギルドから借金を背負わされる。」
「ぁあっ?
何であたいが借金こさえなきゃならねえのよ?」
ナナリは上を指差す。其処には冒険者が突き刺さった天井が。そしてナナリはまた指差す。其処には荒くれ者が打ち抜いて出来た尻向けオブジェとなった壁が。そしてナナリが下を指差す。其処には床板をバキバキに割った破片を被り穴にに埋もれた悪漢が両手両足を伸ばして突き出していた。
「こいつらが何だっつうんだよ。」
そこでギルマスがナナリの後を引き継ぐ。
「レディオークってのは察しが悪いのか?
テメェが暴れてぶっ壊した天井壁床板を弁償しろって事だよ!」
そこで全てを理解したボルテアは褐色の顔色を青くさせて脂汗をかき出した。
「…マジ?…因みにお幾ら程に…?」
「丼計算してざっと100グランだ。ギルドの建物はダミルの村の職人に任せて建てた。ダミルの職人は腕がいいし町までの旅金もかかる。後はダミル村出身のお前なら分かんだろ。」
ギルマスの言葉にボルテアは神妙な表情となる。
「まあ、お前一人に払わせる訳じゃねぇ。ちゃんとアチコチに転がる馬鹿共にもちゃんと払わせる。
…が、レディオークのお前には三分の一は賄ってもらうからな、解るよな?」
ギルマスは有無を言わさぬ迫力でボルテアに迫った。納得行かないとばかりにギルマスを睨む。…が、自分が暴れて破壊した所を見渡して観念したかの様に頭を垂れた。
「解ったよ、30グランくらい直ぐ稼いでやるぜ!」
「35グラン。」
「何だよ、5グランくらいまけろよ!」
「まけんよ、先ずはこの討伐依頼を受けろ。
内容は東のトルトの村がゴブリンの群れに襲われたそうだ。逃げて来た村人がいて町の警備隊の方で保護した様だ。
ゴブリンの数は分からんが10から20と考えるべきだろう。村人はその中に大きな影を見たと言っているからホブゴブリンかオークが混じっているかも知れない。
いれば確実にその群れの頭だろう。コイツは町からの依頼で20グラン、かなりの額だ。
コイツを遂行すれば借金は一気に半分以上完遂だぞ?」
それを聞いたボルテアの目に光が宿り、ギルマスの眼前で拳を握り締める。
「引き受けた!!」
「わたしも手伝う。」
…と、脇で話を聞いていたナナリがボルテアのホットパンツの端を引っ張った。
「おお、ありがとナナー、このままコンビく…!」
「それとこれとは話別。」
「…チッ、別かよ…。」
ボルテアは舌打ちを聞こえる様に音を立てた。
結局、その日は冒険者登録は出来たものの予想外のトラブルからの多額の借金をする羽目になり、計画に入れていた野盗討伐への参加は出来なかった。
「因みに町からの野盗討伐の方はお幾ら?」
ナナリが気になったので取り敢えず尋ねると、ギルマスは用意はしていたのでナナリに渡す。
「討伐隊っても前衛が警備隊、後衛に初級冒険者数人…パーティ一組雇えば事足りる。…なので
額は2グラン17フランだそうだ。」
「「やすっ!!」」
ボルテアとナナリの声が重なった。




