冒険者ギルドは亜人娘には針のむしろ。
次の日、朝はナナリが先に起きて床でゴロ寝でいびきをかいているボルテアを見おろす。
(意外といびきはうるさくなかった。)
うるさくはないがガーゴー口を半開きにして端から涎を垂らして寝ていた。…目が薄めに開いていて白目を見せた寝顔にナナリは「ぶっ!?」と吹きそうになる。取り敢えず彼女は黒マフラーを首に巻き顔を隠し、黒マントを羽織ってフードを深々と被った。
暫くしてボルテアが眠たそうに体を起こしベッドを見るとナナリの姿がない事に気付くが頭が働かず頭をボリボリとかいて欠伸をした。
「ん、起きたかボッテ、おはよう。」
そこへ朝食を持って来たナナリが戻って来てベッドへ座る。同じく置かれた朝食には柔らかそうなパン一つとソイソースをかけた目玉焼きからは甘じょっぱい匂いが軽く香っていた。
「おはナナ…、あたいの分は?」
「ない、自分で取ってこい。」
「んだよケチ。」
愚痴をこぼし立ち上がるとそのまま部屋を出ようとするのでナナリは呼び止める。
「待てボッテ。」
「何だっ!?」
振り向いた瞬間、ボルテアは“ゴツッ”とドアの天井の角に頭をぶつけた。
「…ホットパンツくらい掃いてけ。」
痛がる彼女の姿はおっきな白布を結び合わせた下着と…紐パンのみの姿であった。
○
朝食を終えた二人は出掛ける用意をして冒険者ギルドへと向かう。
ボルテアはダミルの木から村の名工が削り加工したこん棒を右手に握り担ぎ、ザンバラのセミロングをポニーテールに結び、インナー姿に小さなショルダーの革鎧、ホットパンツ。革篭手、革具足に革サンダルと筋肉隆々の上腕、太腿、ⅼ腹部を強調したいつものアグレッシブな姿。
ナナリはやはりボディラインを露わにした黒の長シャツ黒タイツ黒革短ブーツにフード付きの黒マントで全身を包み、黒マフラーを鼻上まで上げてフードを深く被った黒尽くめ姿で隠していた。
因みに装備は育ての親…ヴァルの形見であるコンバットナイフと言う短剣と彼女がボウガンと呼ぶ折り畳み式のクロスボウである。
「さて、ギルドへ行ったら冒険者登録。そして町長から盗賊依頼出てたら受けんぞ。」
「ん。」
ボルテアにナナリはコクリと頷いて二人は冒険者ギルドのドアを開けると、建物内の者達が一斉に此方へ視線を向けた。
「うっ…!?」
町中と同じ様にナナリは周りの強い眼差しに怖気付き半歩程後退ってしまうが、ボルテアの左掌が彼女の背を支える。
「びびんなよナナ、冒険者になんならコレくらいの眼付け慣れな。」
「ボッテ…。んっ!」
二人はドアから真っすぐに受付へと進み建物内の冒険者らしき者達の鋭い視線に晒されたがもナナリはびくびくしながら、ボルテアは反対に眼付け返していた。
そして受付カウンターの前に立ち、受付嬢を呼び出した。出て来たのはロングヘアの明るい女性が受付に立った。
「はいはーい、受付のアリンです。何か依頼ですか?」
「冒険者登録してぇんだ、受付で出来んだよな?」
「はい、此方で登録出来ますよ。身元証明書はありますか?」
ボルテアはダミル村村長から貰っていた手形…身元証明証を出すと受付嬢のアリンが一瞬固まる。
「あ…、あの…証明証の種族欄に…、レディ…オークとあるのですが…マジですか?」
「おおマジだぜ、あたいの親父は“オークボアファング”だ。」
会話が聞こえたのか冒険者連中がざわめき出した。
「あの女レディオークだってよ、珍しい。」
「女のくせに無駄にでけぇ、胸もでけぇ。」
「結構美人じゃないか、俺好みだわ。」
「どこがよ、ガキ連れたコブ付きじゃない!」
最後に女が放った言葉にボルテアは自分を指差して唖然とした顔でショックを受ける。
「あっ…、あたい…コブ付きに見える程老けてっか?」
ガクリと肩を落とすボルテアを見てナナリは「プッ。」と吹きそうになった。ボルテアは眉間を寄せてナナリを見おろす。
「ナナ、今笑ったろ…。」
「ん、笑った。」
ナナリは意地悪そうな笑みを彼女に向ける。その笑みはマフラーに隠れて見えない。そして彼女からは先程までの周囲への怯えは何故だか無くなっていた。




