ボルテアはナナリと組みたくなった。
「この巨女がレディオークとか…、世の中は狭い。」
「だからそのキョジョって何だよ。挙動不審な女って意味かよ?」
「その意味でいいや。」
「殴んぞ。」
ボンメルの西門詰所を出たボルテアとナナリの二人は町長バンファルの紹介の宿屋へ向かっていた。
ナナリが宿屋への手描き地図を見ながらボルテアと練り歩く様を町を行き交う人という人がチラ見、ガン見をして行く。ナナリは人々の視線が気になり肩をすくめてしまう。
目立つのはボロマントの大きな女であるボルテアで小さい黒いフードを深く被った黒マントに顔を隠した黒マフラーと黒黒尽くめなナナリはさほど注目は浴びていない。
「町は人多すぎ…。」
「町はともかく、村とかも行ったりしなかったのか?」
「ん、山を降りたの初めて。おじいの客とかは見たことあるけど隠れてたから。」
「かなり箱入りだな、お前。」
ボルテアは盗賊に追われた際に見せたナナリの疾走と容赦ない狙撃に寸分狂わない命中率を考えるととんでもない凄腕と認識出来るが、人との関わりは稚児レベルであると判断した。
「ナナリ、あたいと“コンビ”組まねえか?」
「とんび?」
「ちげえよ、冒険者コンビだ。あたいもダミルの村から出て来た田舎もんだ。お前と町とかの知識は大差ないが二人ならいろいろと心強えだろ。
それにあたい達が組めばきっとサイコーに強えぞ!」
そんな話をボルテアがふるとナナリはサラサラしたおかっぱ金髪をたらしてボルテアを見上げた。そしてその目はキラキラと輝かせる。
「もしかして、目指せ最強コンビか!」
「おお!」
ボルテアはナナリに同意して頭を撫でた途端、急に熱が冷めた様に無表情になった。
「…だが断る。」
「ええっ、何でだよ?」
「お前頭撫でた、わたしへの侮辱。」
ボルテアは「ぇぇ…。」と声を漏らして彼女の頭から手を離した。
「もしかしてあれか、見た目より年上って奴か。ナナリは何歳だよ、あたいは16歳だ。」
ボルテアの年齢が聞こえてしまった町民達が足を止めて褐色肌の大女…巨女に視線を向けた。
「あのデカ女、まだガキなのか?」
「さっきレディオークって話してたわよ。」
「亜人は見た目じゃ分かんねぇな。」
「もしかしてちっこい黒尽くめも亜人か?」
イヤな注目が二人に向けられるがボルテアはあまり気にしていない。反対にナナリは周囲の視線を過剰に感じてしまい不安を募らせ始める。
「“ボッテ”早く此処から離れたい…。」
ナナリの怯えた様な小さな声を聞き、ボルテアは透かさずナナリを抱き上げ、お姫様抱っこをする。
「あっ!?」
「大丈夫だ、じっとしてろ。」
そう言ってボルテアは長い足を大股で走り出す。
「“ナナ”、宿屋はどっちだ?」
「ん、その肉屋を右に曲がって真っ直ぐ。」
「あいよ!」
ボルテアはナナリを抱えながら言われた道を跳び走った。
ボッテと言う呼び方は母親…アルテルが幼い頃のボルテアに付けた呼び方だ。母親の背丈を越したくらいから呼び方はボルテアに戻したが、大きくなってからもたまにそう呼ばれていた。
そんな記憶を思い出した彼女は嬉しくなり、妙にナナリを気に入ってしまいウキウキと心が弾んだ。
「ナナ、やっぱお前あたいと組めよ。ぜってー楽しくなるぞ!
一人なんかつまんねぇ、他の奴等にも渡したくねえ、あたいの隣にいろよ。」
まるで愛の告白でもされたかの台詞にナナリは目を丸くしてボルテアの顔をマジマジと見てしまう。
「突然のラブコールだな。」
「おう、お前の事が大好きになったぜ!」
「……善処してやろう。」
「頼むぜ、相棒♪」
ボルテアはとびきりの笑顔でナナリを見下ろすと、彼女は思わず緑色の頬を少し赤く染め、心臓の鼓動が早まる。
(何だ、オーク女のくせにイケメンが過ぎる!?)
ナナリがときめいた男性は後にも先にも育ての親であるヴァルだけで、ナナリとしてはあってはならない事である。
(…しかし、ボッテは女…即ちノーカン!)
彼女はそう思い直した。




