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第六話 お転婆娘と真青の魔女

「へぇ、ユキは飛べるのか」


「くぅ!!」


「わぁ、尻尾が雲みたいにもふもふだ」


 ヴィルヘルムは一ヶ月ほど前、召喚した眷属たちと庭で戯れていた。

 剣や魔法の稽古が終わって自由時間となる午後から、こうして眷属と遊んでいた。ルトーリア曰く、召喚士で大切なのは眷属と心を合わせること、すなわち窮地に立った時でも背中を預けられる信頼関係を作ることが大切だと言われ、ゆえにこうして触れ合うことを日課にしていた。


 空を駆けるユキの姿は、まるで絵画の一枚のように美しくみるものを魅了していた。


「アーラは結構大きくなったね」


「キュイ。」


 アーラは、夜鷲(ナイトホーク)ならではの漆黒の羽毛が生えてきており、爪も生えて最強の鳥類である猛禽類の片鱗を感じさせる。と言っても魔物の成長は早いが、まだまだ成長途上である。だが、それほど大きい体ではないが最近では空も飛べるようになった。

 ユキと空で遊んでいたので疲れたのか、ヴィルヘルムの同じ漆黒の髪の上にとまっていた。


 普通、眷属を呼んだままにしておくのは魔力をかなり消費するのだが、ヴィルヘルムやルトーリアの魔力量は常人と比べたら天地の差があり、召喚する魔力消費より回復する量の方が多い。

 故にこうして常に眷属を呼ぶことができているのだ。


「そろそろ新大陸の調査に行ってきていた旅団の残りのメンバーが戻ってくるそうなのだけれど、どんな人だろう?」


 フレイヤ、ノア、クラウド、レオリア、ルトーリア以外の残りの団員は、最近発見されたと言う新大陸の調査へと向かってたそうだ。半年前に向かっておりそろそろ帰ってくるのだそうだ。定期的に連絡が団長に入ってくるそうなのだが楽しくやっているそうである。

 ヴィルヘルムは残りのメンバーに会うことを少しの不安があるものの楽しみにしていた。


「師匠が言うリンフィールって人はすごい魔術師のようだけれど、どうなんだろう?」


 そう眷属たちに聞いてみるが、当たり前で首を傾げているだけだった。それを見たヴィルヘルムは笑いながら考える。


 フレイヤとの魔法の鍛錬の中でたびたび出てくるのがリンフィールという人の名前。

 何でもこの国だけで言えばフレイヤと魔法だけで張り合える実力を持つのがリンフィールという魔術師なのだそう。

【紅蓮の魔女】と呼ばれているのがフレイヤであり、【真青の魔女】と対しているのがリンフィールだった。

 クラウド曰く、フレイヤが灼熱とすればリンフィールは厳寒と、正反対のことを言っていた。

 ヴィルヘルムは、自分やフレイヤ、クラウドとは別の特殊な魔法をを持っているというリンフィールに魔法を教えてもらえないかと考えていた。


 黙々と黙って考えていたその時だった。


「なぁ〜にしてんの!!」


「っつ!??」


 背後から首元に両腕を絡めて、後ろから抱き締める形で誰かが飛び掛かってきた。

 ヴィルヘルムは、驚きすぎてもはや声が出なかった。

 後ろを振り向くとそこには長い、クラウドと似た暗めの茶髪をローツインテールにした少女が立っていた。

 その表情は、悪戯が成功してニタニタ笑っているものの変な不快感などない可憐な笑顔だった。

 よく顔を見ると非常に整った顔立ちをしており、間違いなく美少女と呼ばれる顔だった。

 暗めの柄の服装をしており、腰には一振りの剣を携えていた。


「どうしたのかなぁ?もしかして!私の可愛さにやられちゃったのかな?」


「いや違う」


「そーなの??」


 にやにやしてこちらをみてくるこの少女は、自分やノアと違って感情が豊かなのだろうとヴィルヘルムは思った。

 しかし、この子は誰なのだろう?旅団の屋敷の敷地内に入っていることから悪い人ではないだろうけどとヴィルヘルムは考える。


「私イフェリア!みんなからはフェリアとかフェリちゃんとか呼ばれてるけど、予備方はなんでもいいよ!この旅団、最後にリアが付く人多いけどちゃんと覚えてね!そしてあなたは??」


「イフェリア…僕はヴィルヘルム。最近この旅団に入った。よろしく」


「うんうん。そうだろうと思ったよ!ここに入る人なんてほとんどいないし、私とノアちゃんくらいだよ」


 ヴィルヘルムに抱きついたまま、大袈裟に頷きつつイフェリアはそう言う。


「いつからいたの??」


「さっきリンさんと帰ってきたの。他のみんなはまだ。あと三日はかかるかな?馬車できてるし」


「そうなのか」


 イフェリアはリンフィールによって上空から飛んで帰ってきたのだ。リンさんとはリンフィールのことである。


「この子らはあなたの眷属??」


 周りにいたユキとアーラを一眼みたイフェリアはそう聞く。


「そうだよ。こっちの竜みたいな子はユキって名前。こっちはアーラ」


 二体の眷属は見たことのない人間を見て、いつでも主人(マスター)たるヴィルヘルムを守れるように臨戦知性をとっていた。特にユキは、雷気を少しだけ帯びていた。

 それをヴィルヘルムは宥める。


「へー。夜鷲と、あと一匹。あれ?見たことない。なんか強そうだし、馬に竜。でも顔は可愛い」


「麒麟って言う。ルトーリアさんが言うには強いんだって」


「そうなんだ」


 イフェリアは、ユキの白い体に触れながらそう言った。ユキは、仕方ねぇなって顔をしながら好きにやらせている。ヴィルヘルムが宥めてなかったらすぐにイフェリアに襲い掛かったであろう。


「それで、イフェリアは何しにきた?」


「えっと、通信魔術でフレイヤさんが子供を拾ったて聞いてたから見にきたの」


「そうなんだ」


「うん。きてみたらやっぱり面白そうだった。あと別の用事もあるの」


 知りたい?と言いたげなニヤニヤした笑みをこちらに浮かべてくる。

 仕方なく、ヴィルヘルムは聞いてみることに。


「えっと、何?」


「あなたとデートするの!!」


「はい???????」



 ヴィルヘルムは何を言っているのかさっぱりわからなかった。





 □






「あなたがフレイヤが連れてきたって言う……私はリンフィール。リンフィール・リーダンスよ。一応魔法が得意ね。あなたは??」


 ヴィルヘルムは、イフェリアから衝撃の言葉を聞かされた後彼女に手を引かれてリンフィールの部屋に訪れていた。

 リンフィールの姿は可愛いと言うよりも美しい、まさに鮮美透涼と言った姿だった。

 引き締まった、洗練されたスタイルに確かに色々実っている体。肩までのボブディの透き通った青空のような水色の髪。小麦色の瞳に見つめられたら世の男はひとたまりもないだろう。

 そんな、彼女の部屋に自分が訪れている理由がよくわからなかった。


「ぼ、僕はヴィルヘルムです。よろしくお願いします」


「ええ。それで、あなたたちは何のようかしら?」


 部屋の中央にあった円形のテーブルの周りにあった椅子に座り、リンフィールが紅茶の準備をしながら切り出した。


「えっと、ヴィルとデートに行こうと思うの。付いてくれない?」


「何であなたたちの色恋沙汰に私が巻き込まれる必要があるの?」


 ジト目になりながら、リンフィールはイフェリアに言う。

 リンフィールの鮮やかな動きで、アフタヌーンティーのセットが既に完成していた。


「団長が森に行くときは誰か大人を呼べって言うの」


「えぇ??森に行くの??」


「うん。実力を測るのは大事でしょ??」


 リンフィールとヴィルヘルムは、それはデートじゃねぇだろと思った。

 デートというなの実力査定、それは男としての採点じゃなく旅団の団員としての実力査定だった。

 そんな、男女の関係すら匂わないことをデートとは呼ばない。断じて。


「それは、デートって言うの??」


 ヴィルヘルムは恐る恐るそう言った。


「男と女が一緒にいる、それはもうデートでしょ」


 否、違ぇよ。リンフィールは心の中でそう叫ぶ。

 しかし、突っ込むのが面倒なのでそのまま放置しておくことにした。


「要件はわかったわ。あなたたちが幼い以上、監督者を伴って森にいかないと行かないといけない、そう言うことね。万が一があったら大変だもの」


 紅茶を飲み干しながらそう言う。


「わかったわ。一応、私も団員として彼の実力を見てみたいし」


「決まりだね!あ、これはもしかして俗に言うダブルデート?」


「断じて違う」


 どこかずれているイフェリアにリンフィールは大きくため息を吐いた。

 ヴィルヘルムは、リンフィールに魔力が集まっていっているのに気がついた。



「それじゃあ、いきましょうか。魔物を倒してもらうわ。近所の森へ行きましょう」


「え?どうやって?」


 何らかの魔法を使うのは理解しているヴィルヘルムだが、彼女らがどうやって新大陸調査隊の帰り道の馬車から帰ってきたのかを知らない。つまり、リンフィールが飛べることを知らないのだ。

 超級魔法【飛翔(フライ)】、その魔法はもう失われてしまった神話級の古代魔法だった。

 古代魔法の適性、それがリンフィールの独自技能(オリジナリティ)である。一応、古代魔法は誰でも扱えるが、世界ではリンフィール以外には扱えない。彼女はある意味世界一の魔術師と言えた。


「飛ぶのよ。早く手をとって」


 リンフィールがこちらに手を差し伸べる。

 その手を取ると、勝手に部屋の窓が開いた。


「それじゃあ行くわよ。喋らないでね。舌を噛んじゃうといけないから」



 リンフィールは子供2人を抱えて、大空へ飛び立った。


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(>人<;)


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