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第十話 教団

 徐々にですがブックマークなどが増えてきて嬉しいです!

 今後ともよろしくお願いします。

 広く、豪華な部屋。

 職人技が垣間見える紫紺の絨毯。天井には王宮のような輝かしいシャンデリア。

 シック調のインテリアは部屋の雰囲気とマッチしており、揃えられた机や椅子は世界樹の幹で出来た逸品であり、心地よい香りが立ち上っている。中央にある大机は十数人は軽く使える大きさだ。


 その大きさに見合わずに用意された椅子は四脚。

 椅子は、華やかな装飾が施されており、座り心地は抜群である。王侯貴族でもなかなか手が出せないような逸品である。

 壁一面には絵画飾られているが、その絵はもはや絵などとは思えず、パノラマのように脳裏で描かれている情景が動いてしまう、そんな絵画であった。


 この部屋にある品を一つ売るだけでも平民が生涯に得ることができる金額をはるかに超えるものである。

 そんな華美な部屋の主人は、一つの椅子に座り来客を待っていた。

 すらりとした高身長。しかし、その素顔は妬んでいる表情を象った仮面で覆われて見ることができない。

 だが、彼が放つ圧倒的な覇気は普通の人間が見たら気を失うものであろう。


 その男ーーフィーニス教団第三使徒『嫉妬(レヴィアタン)』である。


 レヴィアタンは部屋の中を一瞥し、不備がないことを確認すると仮面の下で笑みを深めた。

 まもなく、彼の待っている客人が来る時間である。時計を確認しつつレヴィアタンは待つ。

 数刻程下であろうか、そんな時だった。


「おひさ〜。第三使徒サマ。で?ワルシュレイでのいやがらせはうまく行ったのかなぁ??」


 いつのまにか椅子に座っていた1人の女が座っていた。彼女も仮面をつけており、その顔は顔が赤く染まり、悦楽した表情の仮面であった。

 間が抜けたような声でそう話す女はまだ少女にも見えた。

 紫の長い髪に、小柄な体躯。胸も控えめであり、まだ14歳ぐらいの少女のようだ。

 しかし、その少女の放つ覇気はレヴィアタンと同格だと感じるものであった。

 どこか間抜けそうで、おっとりとしているその女は不気味であった。


色欲(アスモデウス)さんですか。確かに久しいですね。そうですね。最近のことの報告も兼ねて話そうと持っていますよ。悪い話はないですね」


 レヴィアタンがそう言うと彼女は明らかにめんどくさがっているように机に突っ伏した。


「そうなんだぁ〜。まぁ、あんまキョーミないし勝手に話してて。ボクは寝るから」


 そして、彼女はそう答える。


 彼女、第六使徒『色欲(アスモデウス)』。フィーニス教団が抱える最大戦力の1人であった。


「他に誰か来るの??」


「使徒は私と貴女だけ。あとは魔王の、ような魔物ですかね」


「へぇ、珍しいね。魔物が新大陸から出てくるの」


「そうですね。こちらの大陸興味があるそうですから」


「へんなの〜」


 2人の使徒はそう話す。

 その後すぐに部屋のドアからノック音が聞こえた。


「レヴィアタン様。お客さまでございます」


「はい。通してください」


 そう答えると、メイドの1人がドアを開けて廊下から2人の魔人が入室してきた。

 入室してきたのは2人。

 1人はナチス・ドイツの作り出したガスマスクのような面をつけており、もう一方は異様な雰囲気を発しているゴブリンであった。

 ゴブリンは、気色の悪い声を発しながら周りをキョロキョロと伺う。

 見た目はただのゴブリンだ。見た目だけは。しかし、普通のゴブリンとは次元の違う。

 通常はGランクの魔物であるゴブリン。だが、このゴブリンは違う。それこそSSランクの魔物である麒麟や黒龍に達するほどの圧倒的な威圧感である。

 そんなゴブリンを満足げに見やる隣の魔人。仮面の奥に獰猛な笑みがあることを容易に感じられた。


「ようこそ来てくださいましたね。魔人ボニファティウスさん。ごきげんよう」


「へぇ〜、なんか気持ち悪いね。新大陸の方には行ったことないけどこんなのがいっぱいいるの?レヴィアタン」


「そうでもないですよ。まぁ、出現する魔物のランクは高いですがそれだけです。ですが、新大陸にはこっちにはない特殊な現象があるのです」


「それがこれね。君がやろうとしていること、それが少しわかったよ」


 レヴィアタンは面白そうに笑い、アスモデウスは物珍しいものを見るような目でゴブリンを見ている。

 それを見ていたボニファティウスは、愉快そうな声で話す。


「貴様らとの契約を果たすべくきてやった。感謝しろ」


 フンっと鼻を鳴らしながらそう話す。

 彼からが絶対的な自信が窺える。


「何コイツ。偉そうだな」


「まぁまぁ、アスモデウスさん。ではお話し合いを始めましょうか」


 レヴィアタンはその獰猛な笑みを仮面の下に隠しながらそう話した。

 ボニファティウスはその笑みを気づくことは無かった。







 □






 レヴィアタンは現状を少し話す。

 その内容はワルシュレイ王国近辺の森で魔物を使った実験をしたという話である。


「魔物に『魔神の血』を流し込むと活性化させられる。興味深いと思いませんか??ヘルマンティスなどに打ち込んでみましたが、予想を超える結果でした」


「魔神の血?そんなのあるの??」


「ええ。地下深く、と言うよりも大陸各地に眠る神殿の奥深くに、かの英雄ヴィルヘルムが倒し、その死骸を封印したものが眠っているのですよ。魔神の死体は腐らないのでね、連合連邦の方にある神殿で採取したのですよ。それを魔物に混ぜたらあら不思議。特殊個体の完成と言うわけですよ。私がしているのはその血を使った魔物の強化。あわよくば魔王すら作ってしまおうというわけです」


「へぇ、めんどくさそう」


 という説明を聞いて、アスモデウスは少し顔を顰める。

 彼女にとっては、その場の退屈凌ぎでレヴィアタンの手伝いをしてやっていただけにすぎない。数千年の時を生きる彼女には、この現状は退屈だったのだ。


「で、出来たんだね?人工魔王(まおう)


「いや、まだですね。その実験をするために彼らにきてもらっていたのですよ」


 そうレヴィアタンが言うと、アスモデウスはゴブリン達の方を見遣る。


「クククっ。約束を忘れてないだろうな??」


「ええ。貴女がこちらの大陸でそのゴブリンを影で操り、こちらで魔王になると」


 レヴィアタンはある密約を交わしていた。

 自身の実験への協力と引き換えにこの大陸を勝手に制圧していい、そして自分達がそれに協力すると言うものである。

 自身の目的である人工魔王の製造。それには本物が必要であった。

 新大陸では人間が王として国を統治するのと同じように魔王が国を統治している。だが、魔王とは一種の種である。魔王になる資格があるのは選ばれた魔物のみあるのだ。

 魔王になれる魔物は魔王核と呼ばれる特殊な魂を持っている。その魂が覚醒した時に初めて魔王となる。

 このゴブリンはその魔王核の魂を持っていた、覚醒前の状態である。

 このゴブリンが死にかけの時にこの魂の存在を見抜いたボニファティウスは、ゴブリンを助け、自分の言う事に『はい』としか言わない人形を作り出していた。だからこそ、前にいる世界の中でも最強格の2人に対して強気に出ていた。なぜならこちらには魔王がいるから。

 それゆえ気がつかなかった。使徒が自分のことを相手にもしてないと。使徒が魔王すら脅威に思っていないと。

 レヴィアタンの目的は本物というサンプルを入手することである、ゆえにボニファティウスはただの邪魔な存在である。


「そうだ!!私は、魔王になるのだ!!そのために遥々人間臭いこの大陸に訪れた!!」


「そうですね、でも貴女はいらないので消えていただくとしましょう」


「はぁ?何を言っ」


 ボニファティウスは言い終わることなく絶命する。

 一瞬、いやもはや時間という概念を超えたものか、と錯覚するほどの速さでボニファティウスの首を切り落とした。

 ボニファティウスも魔人である。ランクで言えばAランクはある化け物である。それなのに、抵抗すらなくただ、風が過ぎ去るように自然に殺された。

 それを見ていたアスモデウスも極々普通のことを見るように見ていた。

 数秒経って、初めて首と切断された胴体から血が溢れ出す。

 ボニファティウスの顔は、困惑も何もない。先ほどと同じように上機嫌な顔のままであった。死ぬことすら気がついていない、ある意味幸せな死に方である。


「邪魔ですね。サンプルを入手できた以上。配達人は邪魔なだけですから」


「あーあ。死んじゃった」


「ふむ、主人が死んでも無感情ですか。暴走すると思っていたのですがね」


 座っていたゴブリンは目の前にある机の上にボニファティウスの生首が飛んできても、何も考えてないそんな顔でただ、生首を見つめていた。ボニファティウスから洗脳していたと聞いていたレヴィアタンは、意外な結果に興味深そうに見つめていた。


「ふむ、考える能力が欠如していますね。元々の土台がゴブリンですから思考能力を壊すことも簡単であったわけですか」


「へぇ、掌握できそうなの??」


「余裕です。サンプルが手に入ったのは嬉しいことですね」



「そっか。てかボク、なんで呼ばれたの??」


「それはこれからのことを話すためですよ。【魔術の祖】様」


「その名前嫌なんだけど」


 そう言いながら仮面を外す少女。


「ヴィルヘルム神話の少し後、神々の使う術の使用法を編み出した貴女は、貴女の力を恐れた人々に陥れられてそして、異端審問にかけられ処刑された、とされていますね」


「思い出したくもない記憶だ。それ以上言うと、この世から消すぞ」


 そう、アスモデウスが言うとその周辺、半径10km圏内程度にいる生物に衝撃が走る。

 濃密な、地獄の深淵に引き込まれるかと錯覚するほどの殺気。

 それだけで近くにいたメイドはパニック死、ゴブリンとレヴィアタン以外が阿鼻叫喚の地獄絵図になる。泣き叫び、失禁し、泡を吹きつつ呼吸困難。人間のみならず、魔物や動植物全てがその殺気を受けて、死に絶えていた。

 レヴィアタンは涼しい顔をしながらその殺気を放つ少女の顔を見る。

 目は無い。肌は焼け爛れた後が酷く、口は上唇と下唇が変形し、人の顔の形状は全く持ってなかった。人にして人ならざる。そんな彼女の顔である。


「黙れ。次、しゃべると殺す」


「それは怖いですね」


 彼女は憎悪を込めた目つきでレヴィアタンを見やる。

 それに対してレヴィアタンは愉快そうに笑う。


「貴女とここでやりあうのは嫌です、ここまでにしましょうか」


「フン、次はない」


「心得ますね」


 殺気は消えて、ようやく平穏が戻ったが窓を見やると全ての動物は死に絶えていた。

 それを見ながらレヴィアタンは笑みを浮かべる。


「貴女と志は近寄ってますからね。私もこの世界、いや神が憎いですから」


 そういった時、彼の闇の深さがアスモデウスには感じられていた。同類だ。そう思う。


「だが、ボクの邪魔をするようならこの世から消す」


「奇遇ですね。私も貴女が邪魔してきたら殺します」


 多少、互いに睨み合いながらそう言う。

 そうしたあと、彼らはこれからのことについて話し始めた。全てはこの世界に復讐を果たすために。手始めに魔王を使う。ただそれだけの話し合い。


 彼らはフィーニス教団。その中でも世界最強クラスの化け物。それが使徒である彼らだ。活動方法を教団としているのは教徒ほど動かしやすい操り人形はいない。だから教団だ。そして、広まれば世界を操ることが可能だからだ。教徒ほど都合のいい私兵はいない。


 フィーニス教団(神々を憎悪する者)。彼らの狙い、それは



『神との間にあって然るべき不公平をひっくり返す』



 それが、彼らの復讐であった。






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(>人<;)

 

 

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