タヌキ、タナカ
タナカとサキは公園で雪玉を投げ合ったり小さなカマクラを作ったりして遊んだ。すると一人の男の子がタナカとサキの方を見ている。男の子は近付いてきて
「花崎さんなにやってんの? 」
とサキに話し掛けてきた。
「見りゃわかんだろ雪遊びだよ」
男の子は声のする方を見ると、そこには人ではなく狸が立っている。男の子はサキの方を向いて
「花崎さんこれってタヌキだよね? 」
「タヌキだけどタナカさんだよ」
「タナカ? 」
「タヌキがタナカで悪いかよ」
サキと話す男の子へ向かってタナカは雪玉を投げ、顔に命中し雪玉は柔らかく砕けた。サキはそんなタナカに
「ダメだよタナカさんそんな事しちゃ! 笹原くんはサキと仲よくしてくれる人なんだから」
笹原は雪玉を投げたタナカを怒りもせずに
「わあ〜、初めてタヌキ見たのに更に喋るタヌキとかスゲー! タナカさんはじめまして、ぼくは笹原直人って言うんだよろしくね」
そう言って手を差し出した。タナカは
「ナオトか、いいヤツそうじゃん」
と笹原と握手を交わした。そしてタナカは
「3人に増えたしでっかい雪だるまを作ろうぜ! 」
そう言い出すと雪玉を転がしどんどん大きくしていった。サキとナオトもタナカに続いて雪玉を作り始めた。3人は公園の雪をくまなく集めて巨大な雪玉を作ったが、大きくなり過ぎて持ち上げられなかった。
仕方ないので3つの大きな雪玉を並べて、タナカは端の雪玉へ木の棒を射して
「巨大だんご」
そう言ってゲラゲラ笑い始めた。サキとナオトもつられて一緒に笑い気が付けばお昼が近くなっていた。タナカは
「なんか腹減ったな」
そう言ってクヌギの木を探してその下に落ちているドングリを噛り始めた。ナオトは
「ぼくと花咲さんはドングリを食べる訳にはいかないから良かったらぼくの家でお昼ご飯食べない? 」
「そんなの悪いからわたしは家に帰るよ」
「いいよ気にしなくて。うちの親も花咲さんが来ると喜ぶよ」
サキとナオトがそんなやり取りをしているとタナカはドングリの皮を吐き出しながら
「ナオトんち見てみたいから行こうぜ」
と遠慮するサキの手を取ってナオトの家へと向かった。