表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

タナカさんと大家さん



 サキの母はタナカを見ながら、タナカは口を開けたまま固まっている。


「昨日はバタバタしてて言い忘れてたけど、ここの大家さんは動物嫌いで動物は禁止されているのよ。以前大家さんに黙って鳥を飼っていた人がいたけど。大家さんから追い出されて引っ越しせざるおえなくなったのよ」


サキの母の言葉を聞いて、タナカは札束を取り出し


「問題ない。引っ越そう。アライグマの出ない高層マンションへ」


そう言ったタナカへ、サキの母は札束を押し戻し


「タナカさんそのお金は受け取れません。私たちには私たちの生活があるのです」


タナカは解ったのか解らないのか札束を引っ込め


「なら大家とか言うのに頼んでみる! 」


そう言ってアライグマのカワサキの方を見ると、隣の大家さんの部屋から大きな虫取り網がニョキッと出てカワサキは網に捕らえられ隣の部屋へ引き摺り込まれ


「イヤァアアー! ギャーーアァァアァア! ギャラクシー! 」


と悲痛な叫び声が聴こえている。タナカは冷や汗をかきながら母の方を振り返り


「今日はなんだか取り込み中みたいだから後日にしようか」


と爽やかな笑顔を見せて座卓へ着いた。


 サキと弟のユウタと一緒に朝食を食べ始めるタナカを見て母も一緒に朝食を取り始めた。朝食を食べ終えて静かにしているタナカへ母は


「タナカさん、さっきのアライグマさんの状況を見たでしょ? 早くこのアパートの敷地から出たほうがいいわよ」


静かにそう言った。


ドンドン!


 突然部屋のドアが激しくノックされ


「花崎さん! この部屋で狸を見たって報告がきたのですけど、ドアを開けてもらえませんか」


高齢の女性の声が響いた。サキとユウタは顔を見合わせてタナカの方を見た。サキの母はタナカを見て


「大家さんだわ、私が時間を稼ぐから窓から逃げなさい」


そう静かに伝えて立ち上がった。そしてタナカは窓へと向かい窓を開け


「居るじゃない。狸が…… 」


なんと大家はいつの間にか玄関のドアから窓の方へと移動していたのだ。目を光らせながらタナカの首根っこを掴み自分の部屋へと連れて行った。タナカは悟った顔をして


「あーるはれたーひーるさがりーいーちばーへ…… 」


ドナドナを歌い始めた。サキは母の顔を見て


「タナカさん連れて行かれたけど、なんか余裕そうだったね」


「諦めたのかな? 」


サキとサキの母は何事もなかったかのように朝食の片付けを始めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ