タナカさんとサキのお母さん
サキの両肩を掴んだ母の腕をタナカさんはポンポンと叩き口をクチャクチャさせながら
「ねえお姉さんちょうどいいところに来た。クリスマスパーティーってどうやるの? 」
サキの母親に言った。サキの母親は部屋の中に居る喋る狸に驚き過ぎて固まってしまった。そしてサキの母親とタナカさんは目を合わせたまま数秒が経ちタナカは
「ねえって、クリスマスってなんなのさ? みんな楽しそうにしてたけど、どうやるのが楽しいのさ? 」
そう再度言いながら口をクチャクチャさせている。何がなんだかよくわからないが、とりあえず目の前のタナカの態度にカチンときたサキの母は
「例え狸であってもガムをクチャクチャ噛みながらそれが人にものを訊ねる態度ですか! 」
そう言ってタナカの後ろ首を掴んで持ち上げ目を合わせた。タナカは口の中の物を取り出しサキの母の目の前に差し出し
「ガムなんか噛んでねえよ。さっき部屋で見つけた干からびたヤモリだよ」
タナカは干からびたヤモリを噛んでいたのだ。目の前に出された干からびたヤモリ見たサキの母は
「なおさら嫌ーーーーー!!! 」
と掴んだタナカを放り投げて腰を抜かした。サキは急いでテイッシュで干からびたヤモリをくるんで捨てると
「タナカさんダメだよ。お母さんは爬虫類が苦手なんだから! ヤモリなんて食べないでさっきタナカさんが買ってくれたお料理食べましょ」
そう言いながら母が連れて帰った弟の手を取り座卓を囲んだ。タナカもトタトタ駆け寄り座り、母もゆっくり立ち上がり
「お腹も空いたしご飯を食べながら話しを聞きましょう。なにこれ冷めてるじゃない。温めるから少し待ってなさいね」
そう言っていくつかの料理を手に取り台所へと歩いて行った。その間にサキはグラスを4つ持ってきてシャンメリーを注いでタナカや、弟、母の分を座卓へ並べた。タナカはグラスを手に取り一気飲みすると
「カーッ、うめーなー。もう一杯」
とサキへシャンメリーを要求した。それを見た弟もシャンメリーをひと口飲んで
「たーめーめー、もっぱい」
とたどたどしくも笑顔でタナカのマネをした。タナカはそんな弟を笑い
「おう兄ちゃんイケルクチだね」
とサキの手からシャンメリーを取り弟のグラスへ注いで笑った。よく分からないが賑やかでサキは少し嬉しくなった。