タナカさんとお買い物
サキとタナカは買い物へ向かい首にタナカを巻いたまま色んな話しをした。まずはサキは9歳でタナカは11歳、サキはお母さんと弟の3人暮らし、タナカは一人で旅をしていること、サキの弟はまだ小さいのでこども園に預けられていること、タナカは人間の食べ物が好きなことなんかを話した。
タナカの指示で街のショッピングモールへ近付くとサキの耳元でタナカは小さい声で
「これ買い物用のお金」
そう言って札束をサキへ渡した。サキは見たこともない大金に驚いたがタナカは
「大丈夫、葉っぱなんかじゃなくて本物のお金だよ。先ずは食品コーナー行こうぜ」
サキはタナカの言葉を聞いて札束を肩掛けバッグの中へ入れて落とさないように抱きかかえた。サキとタナカは食品コーナーへ向かい試食品を首に巻いたタナカへこっそり食べさせて気に入ったら「買って」と耳元で呟いた。
食べ物をひとしきり買うと「次は衣料品コーナー」タナカがそう呟いたのでサキはカートを押してファッションコーナーへと向かった。
サキは可愛い洋服がたくさん並んでいるのを羨ましそうに眺めた。クラスで人気の女の子が着ていたスカートやテレビで見たような可愛い服に見惚れて立ち止まった。
「良いぜ、買い物のお礼だ好きなの好きなだけ買いな」
「そんなの悪いよ」
「いいんだよ。オレからのお礼だ」
サキはタナカの目を見ると、タナカはコクリと頷いた。サキは嬉しさと緊張から怖ず怖ずと店内へ入り、どう選んでよいのかも判らずに服のサイズだけ見て適当にいくつかの服を持ってレジへと行った。そして慌てて会計を済まそうとするとバッグから札束を落としてしまい急いで拾ってバッグへと戻した。
しかしそれをこのお店の売り上げナンバー1店員である瓜間久里子は見逃さなかった。素早くサキへと近付き
「んお〜客さま〜、可愛い襟巻きですね〜。よろしければ他にも可愛いのがございますのでいかがですか〜、こちらのマフラーも今年の流行でして巻いてみませんか? こちらの襟巻きはお預りしますよ〜」
そう言ってタナカへと手を伸ばした。タナカを掴んだ瓜間久里子の指先へタナカの体温が伝わり
「温かい! 本物! けもの! 」
瓜間久里子は叫びながらタナカを上空へ投げた。投げられたタナカぶち切れて
「けものじゃねぇ! タナカだ! この野郎くらえたぬキック! 」
上空の天井を足場にジャンプしてタナカは瓜間久里子の顔面へ激しい勢いでキックした。しかしタナカは小さくて軽いので大したダメージもなく瓜間久里子は
「キャ〜〜〜! 」
と叫び声を上げたので店員や他のお客さんが一斉にタナカへ注目した。
「なに? 動物? 」
「やだタヌキじゃない? 」
「なんでこんな所に? 」
店内は大パニックになった。サキは慌てて商品を受け取りタナカをカートへ乗せるとダッシュでショッピングモールから飛び出した。