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第4話 上に立つ女の子は可愛いと相場が決まっている

長らく更新が途絶えてしまって申し訳ありません。

久々の本編再開です。

 

 楽しい宴も終わりを迎え、気づけばもう三日が過ぎていた。


 お天道様は未だ顔を見せず、けれども空は少しずつ澄んだ青を取り戻してきている頃、私は、広場の噴水の前に立っていた。まだ日も出ていないのに、里のみんなは既に集まっていて、じっとその時を待っている。


 じゃばじゃばと噴水から心地よい音が響き、自然あふれる草木の香りが頬を撫でる。僅かながら水飛沫をかけてくるそれをじっと見つめていた時、彼女らはやってきた。


「あなたが、カーテネラさんですか?」


 何の音沙汰も気配も感じさせず、気がつけばそこにいる。やや硬い動きで、私は声のした方を振り返る。


 そこにいたのは、以前この里を訪れた白髭の神官様と、背後に控える二人の護衛。

 そして――明らかに異様な雰囲気を纏った、幼い少女だった。


 イマトゥラよりは若干年上に見えるが、私よりは遥かに若く見える少女。


 どのエルフよりも透き通った白い肌に、美しく愛らしいその容姿。一枚布のキトンに加え肩には白い羽衣を纏い、綺麗なピンクの花が彩られた輪っかを頭に乗せている。黄金色と呼ぶにはあまりにも薄く、黄色と呼ぶにはあまりにも眩く輝いているその瞳と髪色は、巫女として人々を魅了するのには十分すぎるほどだ。


 靴は何も履いていないようだったが、その歩き方にはどこか違和感があった。足音などはせず、歩き方はどこかぎこちない。何より、汚れが全くと言っていいほど付いておらず、白く美しい肌を保ち続けていたのだ。何かおかしいと素人なりの直感は働いたが、所詮素人なので見当などつくはずもない。


「初めまして。わたくしは、パラディサス聖国教会において巫女としての立場を務めさせていただいております、エリヴェーラという者です」


 とても綺麗で可愛らしい声が、私の体の隅まで浸透していく。


 とても心地よい声だった。もしかすると、私は今何かしらの奇跡を見ているのかもしれない。そんな感じにさせる程に、彼女を私たちと同じふうにみることなど出来なかった。


「こ、こちらこそ初めまして。カーテネラって言います。私を次期巫女に選定していただき、ありがとうございます」


 そんな神々しい圧にも気押されることのないよう、私は最大限の敬意を込めて、エリヴェーラ様へ挨拶する。


「ふふっ、そんなに緊張なさらなくて宜しいのですよ? もうじき、あなたの方が私より偉くなるのですから」

「い、いえ、そんな……」

「では、早速ですが行くとしましょう。神都メディオクリスへは、はぁ、ジ、ジルベルトに任せれば一瞬ですから、はぁ、はぁ……」

「…………?」


 突如息を切らしたように言葉を振るわせるエリヴェーラ様。見ると、靴を履いていない足がかなり震えているのがわかった。


「あ、あの……、大丈夫ですか?」

「大丈夫です! 大丈夫ですので……」


 どこか目を泳がせてたじろいでいる巫女様を前に、私も里のみんなも戸惑うほかなかった。

 するとエリヴェーラ様は、すぐ側の白髭の神官様――ジルベルトさんと言ったか――を手招きし、何やら耳打ちしている。


「……いえ、しかしエリヴェーラ様。今は公務中ですのでゔっ!?」


 すると巫女様は突然、ジルベルトさんに強めのエルボーをかまして、


「いいからはよ持ってこいや」

「は、はい、只今直ぐに!」


 …………。

 …………うん?

 いま一瞬巫女様とは思えないドスの利いた声がきこえたような……。


「ふふっ。大変お見苦しいところをお見せ致しました。もう心配はいりません。ありがとうございました」


 超特急で護衛たちが何処からか用意してきた椅子に腰掛けて、巫女様はさっきと変わらない笑みを向ける。


「うふふ、歳をとると足腰が弱くなってしまいますからね、もう嫌になっちゃいますわあははははは」

「は、はあ……」


 そういうものなのだろうか?

 というかこの人は一体幾つなのだろう。とても足腰が弱くなる年頃には見えないけど。


「さて、話が逸れてしまいましたわね。私はここで少し休んでいますので、あなたは先にジルベルドの案内に従って神都へ向かってください」


 そう言って、エリヴェーラさまは椅子の背もたれに寄りかかって……なんとそのまま寝てしまった。


「み、巫女様! まだ公務中でございますぞ! 寝るのは全部終わってから家でお願いします!」

「うーんうるさいわねぇ……大事な巫女の体調管理だって立派な公務でしょ。だからこれも仕事のうちむにゃむにゃ……」

「も、申し訳ありませんカーテネラ様。エリヴェーラ様は昔からこの様なことが度々ありまして……」

「い、いえ、全然お気になさらず……」

「実はここだけの話、先程エリヴェーラ様の足が裸足だったのにも関わらず全く足の裏が汚れていないのにお気づきになられていましたか? あれは体全体を周りから見てもわからない程度に浮遊させて神々しさを演出していたからなのですが……どうやらその疲れが今来てしまったみたいで」

「そ、それはそれはあはは……」


 周りから見ればやばいエルフだと思われるかもしれないが、この時、私は直感した。


 あくまで私の直感でしかないが。


 私とエリヴェーラ様は、何となく気が合いそうだと、私はそう思った。




「それでは、こちらにお乗りください」


 案内されたのは、空島の端っこの方、いつもイマトゥラと弓の練習をしている森のさらに奥の方だった。


 そこにあったのは、謎の幾何学模様が施された水色の空飛ぶ円盤だった。どうやらこれに乗って神都までひとっとびするらしい。


 これが田舎と都会とのギャップというやつなのだろうか……。

 物珍し気に円盤を見る私とは裏腹に、ジルベルドさんや他の護衛の方々はちゃっちゃと円盤の上に乗ってしまう。


「ほら、カーテネラ様も早くお乗りになってください」

「あの、いいのですか? エリヴェーラ様はまだ広場にいらっしゃるんですけど」

「あの方は一度眠るとすぐには起きませんから、もう放っておいていいです。なあに、そのうち自力で戻ってこれますし、護衛も一緒なら大丈夫でしょう」

「それでいいんですか……?」


 こうして、私は新たな巫女として、神都メディオクリスへ繰り出すこととなった。

 

今後はぼちぼち更新を続けていく方針です。

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