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第9話 ルナの旅

 封印は無事成功した。


 と、言いたいところだけど、実は記憶がところどころない。

 どうやら記憶の引継ぎに失敗したらしい。

 自分がなぜ神をやっているのか、精霊とはどうやって友達になったのか、大事なところが思い出せない。


 ……お嬢様ごっこしていたこととかくだらないことは覚えているのに!


 これは単なる失敗なのか、無意識のうちに記憶ごと封印してしまったのか、はたまた誰かの介入によって記憶を消されたのか……

 記憶があったという確信はあるので、最初から意識がなかったということはないと思うけど……


 いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

 今は情報収集する段階なので正体をばらすわけにはいかないし、何より少女を救出するという、ルナを作った当初の目的はまだ続行中だからだ。少女は既に救出したのだが、このまま放りだすと死んでしまう。

 そんなことを考えていると。


「ねえ、起きてよ、大丈夫なの? ねえ!」

 少女の声が聞こえた。どうやら私、ルナは私の本体が封印されたタイミングで気を失ってしまったらしい。私は少女に揺り起こされていた。

「あ、ああ……大丈夫」

「よかった! あなたが目を覚まさなかったらと思うと心配で……」

「うん、心配かけてごめん」


 私を起こしたのはルナが救出した少女だった。赤い髪を伸ばした十三歳の少女で、名前はアリアといった。アリアはとある国の王女だったのだが、魔王と名乗る人物に誘拐され、軟禁生活を強いられていたらしい。そこで神に願った結果私が現れ、華麗に救出して見せたのだ。それで魔王城を二人で脱出している最中に本体が襲撃されて分身体のほとんどが消されてしまったが、ルナはちょうどその時隠蔽スキルを発動中だったため、消えずに済んだ。


 それで私はアリアを故郷に送り届けようと思ったのだが、彼女は帰りたくないと言い、さらに冒険者をやりたいと言い出したので、私もせっかくだからということで、二人で冒険者を始めたのだった。彼女は私を親友と思ってくれていたようで、急に倒れた私をかなり心配していたようだ。目に涙を浮かべている。

 この時モンスターを狩っていた途中だったが、一旦狩りは切り上げて町で休むことになった。


 とりあえず私はアリアと冒険者をやりながら情報収集を行うことにした。私とアリアは順調にクエストをこなし、いつの間にか最強の冒険者として二つ名付きで呼ばれるようになった。二つ名付きは恥ずかしかったが……いや、そんなことよりも。

 ある日私は重大なことに気づいてしまった。


「う~ん」

「どうしたの?」

「最近服が合わなくなったような気がして。また買わなきゃいけないかな……?」


 アリアは成長していた。背は伸びたし、髪は長くなったし、胸も大きくなっている。

 対して私は髪こそ伸びるものの(切っている)背は伸びないし、胸も大きくならない。

 数年なら成長が遅いで済むし、二十過ぎても子供みたいな見た目の人もいるにはいるから、そういうことにすれば十年くらいならなんとかなりそうだが、これが二、三十年くらいたつとさすがに誤魔化しきれないだろう。


 なぜなら私は年を取らないからだ。

 アリアはいい子なのでその話題になると「そのうちルナも大きくなるよ」と言ってくれるが……地味につらい。


「どうしたの? なんか悩んでるように見えるけど……」

 私はずいぶん考え込んでいたようだ。アリアの言葉で我に返った。

「なんでもないよ。服買いにいこうか」

「本当に大丈夫? 悩みがあったらいつでも聞くよ?」

 アリアは本当にいい子だ。


 そしてアリアが十六になったころ、私は意を決して話すことにした。

「どうしたの? 大事な話って」

「うん、実はね……君とはそろそろお別れしようと思うんだ」

「え? 別行動するってこと? ええと、いつまで?」

「ええとね、……もう会うことはないと思う」

「……そんな! どうして……」

「ぼくにはやらなければならないことがあるんだ。そしてそれには君を連れていけない。わけは言えないんだ。……本当にごめん」

「いやだよ! 私はルナとずっと一緒にいたい! 離れ離れなんてそんなの……いやだ……」


 アリアは泣いてしまった。もう大人の女性になったアリアが子どものルナである私に顔をうずめて泣いていた。


「ぼくが言うのも何だけど君の両親も心配しているよ。そろそろお家に帰ったらどうだい?」

「そんな……今更戻るのも気まずいし、それにその、宮殿は窮屈で……」

「ぼくが話をするのを手伝うよ。もし君が冒険者を続けたいならそのように話を持っていくし、とにかく会う必要があると思う」

「うん、そうだね……」


 自分のことを親友と思ってくれる人に、本当のことを打ち明けられない自分の無力さが嫌になる。胸が苦しくなった。

 せめてアリアと両親が仲直りする手伝いをしようと私は思った。

 なお、私の本体のことは言えなかったが、神ルアシスは今危険な状態なので神託を鵜呑みにしない方がいいと伝えておいた。


 私はアリアと両親の話し合いの結果を見届けた後アリアと別れた。結局アリアは国のために戦うことにしたみたい。

私はアリアが心身ともに強くなったのが嬉しかった。別れるときは号泣しながら抱き着いてきたけど。

 ちなみにアリアはその後魔王と和解し、世界平和を実現させたそうだ。……凄い。

 まあそれから何十年か何百年かくらいたったあとにまた世は乱れることになるのだけど。


 そして、何百年か何千年かがたった。

 私はずっと世界中を旅していた。

 数年間一か所に留まることはあったが、どんなに長くても十年でその地を去って、その後数十年は姿を見せないようにしていた。私が神だということはまだ知られるわけにはいかないからだ。


 その間、私を襲撃した者たちの支配は着々と進んでいたようで、神ルアシスの名を騙って数多くの非道なことが行われているようだった。

 もちろん私は怒ったし、できる範囲で悲劇が起こるのを阻止したが、それでも気づかぬうちに悲劇が起こるのは止められなかったし、わかっていて止められなかったこともあった。

 私が無力感に苛まれたことが何万回あっただろう。


 ある時、私は神の偽物を倒すために人を集めて行動を起こした。相当な人数が集まり、もう少しというところまでいったが、ある裏切りをきっかけに疑心暗鬼に陥った味方の組織は壊滅してしまった。一部の味方が敵に洗脳されてしまったのが原因だった。味方が誰もいなくなった私はどうにか逃げ延びたが、心は完全に折れてしまった。


 今回起こった悲劇はすべて私のせいだ。すでに神としての権限は自分にはないし、もう死んでしまおうか。そんなことを考えていた時だった。


 私はそばで泣いている子どもを見つけた。私は気になって話しかけてみた。

「どうしたの?」

「えっと……ぼく、迷子になっちゃって……珍しい猫を見つけて追いかけていったら知らない場所に来ちゃって……大人に森へ行っちゃいけないって言われているのに……もしこのまま帰れなかったら……ぐすん」


 その子は五歳くらいの男の子だった。亜麻色の髪をしていて、素朴な雰囲気があるが、成長すれば美少年、美青年になりそうだった。どうやら森に入って迷子になってしまったらしい。


「大丈夫だよ。お姉ちゃんが送り届けてあげる」

「本当に? あ、でも大人たちに怒られる……」

「ぼくも一緒に怒られてあげるから、ね? みんな心配して捜してるよ? 大人たちが魔物に襲われたら嫌でしょ?」

「うん」

「じゃあ一緒に行こう」

「うん……?」


 なんか微妙に納得していないようだったが、ついてきてくれるようだった。なので、手をつないで引っ張っていく。


 その時だった。私は魔物の気配を捉えて身構えた。男の子もそれが伝わったのか、やはり身構えている。男の子が心配そうに聞いてくる。


「どうしたの?」

「魔物の気配がする……ちょっと待ってて。倒してくる」

「え!? そんなの無茶だよ! 大人たちだってやられてるのに!」

「大丈夫だよ。ぼくは強いから。それに今は君がやられたらぼくが悲しいから。だから、ね?」

「うん……」

 そう言うと男の子はちょうどそこにあった洞穴に身を隠した。


 私が外で身構えていると、魔物が姿を現した。白い狼のようなモンスターだった。赤い目を光らせて「がるるるるる……」とうなっている。いかにも狂暴そうだ。

 男の子も心配そうにこっちを見ている。長引かせると飛び出してきそうだ。だからサクッと終わらせてしまおう。

 私は魔物の突進を寸前でかわし、魔物の核がある場所に向かって魔力を込めたナイフを投擲する。魔物はあっさり絶命した。


「す、すごい……」

 男の子は感嘆の声を漏らす。


 私はそんな男の子を抱えるとさっとその場を離れた。男の子は困惑している。

「え、え?」

「近くに魔物の群れがきているんだ! 早くここを離れるよ!」


 私はルナになってから、アリアと冒険者をやったり、偽神様の軍勢と戦ってきたのでそれなり以上には戦えるし、一対多の戦闘も経験しているが、さすがに守りながらだときついので即座にその場を離れることにした。


 どうにか魔物から逃げ切った私たちが一息ついたところで男の子が話しかけてきた。

「ありがとう、お姉ちゃん。ところでお姉ちゃんの名前は何て言うの? ぼくはクリオっていうんだ」

「ああ、そういえば自己紹介がまだだったね。私の名前はルナ。人助けの旅をしているんだ」

「人助け?」

「君みたいに困っている人を助けるためにいろんなところに行っているんだ」

「なんで?」

「自分がやりたいと思ったからさ。人を助けると気持ちがいいんだよね」

「そうなんだ」


 そうらしい。言った自分も初耳である。相手が子どもだと思って適当なことを言っているのだ。罪悪感が湧いてくる。


 しかし、男の子改めクリオは急に目を輝かせて言った。

「すごい! ヒーローみたい! かっこいい!」

「かっこいい?」

「うん。ルナお姉ちゃんはシーフだよね? 人々を助けてまわる正義の盗賊の話があるんだ! それみたい! かっこいい!」

「そ、そう……」


 そう言われて私はむずがゆい気持ちになる。同時にこうも思った。いままでは世界を救うということにこだわり過ぎて多くの重荷を背負ってしまい、心が折れてしまったが、目の前にいる人を助けていくことならできるのではないか? と。要は今までが難しく考えすぎていたのだ。世界中の人を救うなんて私にはできなかったのだ。でも目の前の人を一人ずつ救うことならできると思う。そう思ったら気が楽になった。


「どうしたの? ルナお姉ちゃん、いいことあったの?」

「うん、ちょっとね」

 どうやら私は表情が緩んでいたようだ。


 すでに日が暮れていたので、念のためその日は野宿した後、次の日にクリオの村にたどりついた。クリオがいたという孤児院に顔を出すと案の定クリオは大人たちに怒られたが、それ以上に彼らは安堵して泣いていた。相当心配していたようだった。そして私は感謝された。暖かい気持ちになった。


 私は村に数日滞在した後、再び旅立つことにした。やはりというか、クリオは泣いて引き留めてきたので、再会を約束して別れた。やや不安だが、仕方がない。クリオは強くなると言っていたので、成長に期待しよう。

彩人「ルナとアリアの二つ名……なんだろう? 気になる……」

みーむ「ねえ、ルナの二つ名って――」

ルナ「わーーわーーわーー!!!」

みーむ(妨害された……)


彩人「そういえばルナの回想っていつまで続くの?」

みーむ「一応次回までの予定らしいよ?」

彩人「それって誰に聞いたの?」

みーむ「えっと……作者?」

彩人「作者を出さないで!」


お読みいただきありがとうございます。

明日も更新しますのでお読みいただけると嬉しいです。

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