第55話 天使と天使
『タスケ……うぐジャマ、スルナ……いやクルシ……ウルサイ!!!』
天使の苦悶の声が聞こえてくる。
私ティアはアクアとマリンに請われて二人を精神世界に送り込んだのだけど、なかなか苦しい戦いを強いられているようだった。
私も手助けできればいいのだけどよくわからないし、そもそもなんで私が選ばれたのかわからない……
どうしよう? と私が考えていると……
『ねえねえ、わたしの声が聞こえる?』
そんな声が、どこからか響いてきた。
「だ、だれ?」
『わたしだよ。まーくだよ』
言われてまーくの方を見ると確かにまーくの方から声が聞こえているような気がしてきた。
「え、まーく?」
『あの天使は敵がつくった存在だけど、確かにわたしの仲間なんだ。それに、精霊を見捨てると負のエネルギーが残って世界の破滅に繋がってしまうんだ』
「え? え?」
私はまだ戸惑っていた。
『だからみんなで力を合わせて、念じて。みんなを助けたいと』
「う、うん……わかった」
私はまだ話を飲み込めてなかったけど、この声は信じられる、なんとなくそう思った。
だから私は祈ることにした。
『……でも足りないものがあるみたいだね。キミ、天使化できる?』
天使……悪夢……なりたくない……なれるかどうかもわからないけど……
『一応ならないようにロックがかけてあるみたいだけど、その気になればいつでも解除可能なんだ。あとはキミの意思次第』
……それをすれば、助けられるの?
『うん、その方法を今から教えるよ。それはね……』
……
私はまーくに教わった通り、自分のやりたいことをイメージしようとしていた。
どうやら自分のやりたいことをやるのが、今の私に必要なことらしい。
でも、それが難しい。
私のやりたいことってなんだろう?
私は……
……みんなが笑っているところを見たい。みんなを幸せにしたい。
それはなぜ?
みんなが幸せになるところを見ると私は幸せになった。そういうことなのか?
そういうことなんだろう。
だから私は……
そう思って力を込めると、私は天使の姿になれた。
ただ、以前天使になった時とは違って優しいオーラに包まれているような気がする。
すると、天使は私に反応した。
『エ、アナタハ……ワタシトオナジ……?』
こ、これは……さっきまでと違う……もう少しでいけるか?
そう思ったらなぜか、天使の思念が私に流れてきた気がした。
私の頭に流れ込んできたのは様々な嘆き、悲しみ、怒り、恨み、妬み……多くの負の感情だった。
私の頭が焼ききれそうになる。
でも、私は耐えた。
だって、こんなことは前にもあったから。
それに、これを受け止めてあげなくては、私は幸せをつかめない。そんな気がした。
だから、
「大丈夫、私が一緒に戦ってあげるよ。だってそのためにここにいるんだもの」
そう言った。
『ア……アア……アア……』
天使が苦悩しているが、確かに手ごたえを感じていた。
もう少しでいけると。
「大丈夫だよ」
「私たちも一緒だから」
アクアとマリンも声をかける。
『アア……アア……アアアアアアアアアア!!!!!』
天使が叫んでいたが、泣いているように見えた。
だんだん人の形に近づいていき……
突然姿を消した。
「え?」
『精神世界を脱出したんだ! 戻るよ!』
「え? うん……」
私は訳がわからなかったけど、まーくの言葉に従って現実世界に戻ることにした。
アクアとマリンもそれに続いた。
―― ――
「あ……ああ……」
誰かの声が聞こえた。
どうやら天使が現実世界に戻ってきてしまったらしい。
だが、さっきとは様子が違った。
だいぶ人間の姿に戻ってきているような気がするし、殺意は感じられない。
これならいけるかもしれない。
「ルナ! 治癒の力を!」
僕はそう呼びかけたが、
「わ、わかった……」
と言ったルナは明らかに魔力切れでへとへとになっていて……
『うわー、あやとは女の子に無理をさせるんだー。きちくー』
みーむがからかってくる。
「……ぼ、僕の魔力をルナにあげれる!? 僕はまだ余裕があるんだけど」
『ルナとリンクをつないでみる!』
「ルナ! 無理をしないで!」
「彩人……! 助かる!」
こうしてルナが僕の魔力を受け取り、天使に向かって治癒の力をかける。
『ウ……ウアアアアアアアアアア、アアア、アア、ア……』
天使はしばらく絶叫していたが、やがて沈黙して動かなくなった。
そこで、ティアとアクアとマリンが精神世界から戻ってきた。
「ど……どうなったの?」
「助かったの?」
「死んでないよね?」
口々にそう言ってくる。
「今は動かないけど……神が目をつけて始末するかもしれない! その前に安全な場所へ……」
「あ、私が障壁を張り直したから大丈夫。それよりどこへ運ぼうか?」
僕が、魔力をルナに補充する段階で障壁を解除していたことに気づき、慌てていたところへ、アリアがフォローしていたことを報告する。
「解放隊の拠点に運ぶ。私が案内する」
「おーけー。じゃあ行くよー」
そこへキャンバスが現れ、解放隊の拠点への道案内を買ってでた。
そしてアリアとキャンバスは天使を連れてあっという間に姿を消してしまった。
「だ、大丈夫かな……」
「大丈夫だよ。アリアはしっかりしてるし、解放隊はいろんな技術を持ってるみたいだし……それよりこれから大変だね……」
「そうだね……」
心配するティアにルナは心配ないと言い、でもこれから大変だと呟いて僕は力なく同意した。
とりあえず王都で騒ぎを起こした連中はいなくなったが、このぼろぼろになった王都を建て直すのは大変だよなあ……
ともあれ、これで王都の騒ぎは一段落したのだった。
みーむ「そういえばあの天使って元の姿あるの?」
彩人「複数の天使が合体した状態だから……新しい人格ってことになるのかな?」
みーむ「人格ねえ……AIを搭載したアンドロイドみたいなものだと思ったけど……」
彩人「……なんで、みーむからそんなセリフが出てくるんだ?」
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