第54話 精神世界パートⅢ
「あちゃー。とんでもないものが出てきちゃったねー。どうしよう?」
そう言ったのはアリアである。軽い調子で言っているが、実はかなり深刻そうだ。
「勝てるの?」
「うーん。滅ぼすことは可能だけど、そうすると今私たちのいる星がなくなっちゃいそうなんだよねー」
僕の問いにそう答えるアリア。
……てかそれ、自分は世界を滅ぼせるぞと言ってるようなもんだよね。
まあ、以前に月を壊したことがあるってルナから聞いたことがあるけど……
『くすくすくす、誰から片付けようかなー。あ、弱っちい奴はーっけーん。じゃあ今から攻撃するから、みんな頑張って守ってねー』
そう言って天使が手を向けたのはアクアとマリンだった。
や、やばい……! 助けようにも届かない! どうすれば……
僕は急いで駆けつけるが、間に合わず……
アクアとマリンがやられる! と思ったその時だった。
ガアキイイイイイイイイイイイイイン!!!!
攻撃が何かに当たる音がした。
アクアとマリンが障壁を張って防いでいた。
「アクア!? マリン!? その力はどうしたの!?」
「……私たちは戦えないけど、力がないわけじゃないんだ!」
「がんばる!」
ルナの問いに、アクアとマリンはそう答える。
「だ、大丈夫!?」
「大丈夫! 倒してみせるから!」
「任せて!」
なおも心配するルナに、自信満々に答えるアクアとマリン。
「倒す!? 戦えないのにどうやって!?」
ルナは叫ぶが、スルーされた。
正直僕も不安しかないのだが……任せるしかないのか?
『何があっても大丈夫なように準備はしておこうか?』
みーむが提案してきた。
……まあ、そうするしかないか。
僕は障壁を張って、アクアとマリンを受け止める準備をした。
だがどうやらそれは杞憂に終わりそうだ。
アクアとマリンの気配が強大で、これで終わらせるという気迫が伝わってきたからである。
それにしても、今までそんな強大な力をどこに隠していたんだろう? そんな気配は微塵もなかったのだが……
と思ったら、突然ティアが出てきて、アクア、マリンと手をつないだ。
「ティア、行くよ! せーの!」
どおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!
突然、天使の方が爆発した。
「ど、どうしたの?」
ルナが尋ねる。
「……天使の中にいる精霊に話しかけているんだ!」
そう答えたアクアの顔には汗が浮かんでいた。
マリンとティアも同様である。
これはまさか……
『うん、精神世界で絶賛バトっているところだね』
……まあそうなんだろうけど、みーむは言葉を選ぼうね!
僕たちはしばらく、様子を見守っていた。
――――
私たちは精神世界で、天使に話しかけていた。
「ねえ、ほんとは自由に動きたいんじゃないの?」
「私たちと行こうよ! きっと楽しいよ!」
天使には自我がある。天使は精霊の一種であり、精霊に自我があるのだから当然と言える。
でも、大半は神の意思によって自我が確立する前に使い潰されてしまう。
私たちはそれを救いたい。それが私たちの存在意義だから。
とはいえ、救うのは難しい。天使の力が強大すぎるからだ。
でも、故郷の人たちは言っていた。
我々は精霊のおかげで生きている、だから感謝し、時に助け合えと。
それを言われた当時は意味がわからないと思ったけど、今ならわかる。
精霊は友だちだと。
私は今まで精霊に助けてもらった。
優しくしてもらった。
だから恩は返す。
精霊は友だちだ。
助けたい。でもそれが難しい……
『ミンナミンナ、キエテシマエ……!』
ひどい恨みがこもった言い方だ。
でも、逆に言えば人間みたいな感情があるということだ。救う価値はある。
「大丈夫だよ! みんな救ってあげるから! だからこっちおいで!」
『……ウルサイ!!』
天使が腕で私たちを薙ぎ払う。それだけで私たちは呼吸することが困難になる。……精神世界なのに。
つまり、私たちが精神的ダメージを受けているということだった。
「…….だ、大丈夫!? お姉ちゃん!」
「……! 大丈夫!」
本当は大丈夫じゃないけど、妹の前じゃかっこ悪いところは見せられないよね。
なんて、強がってはみたけど、もう限界……
いや、折れちゃ駄目だとわかってはいるんだけど、もう、無理……
私がそう思った、その時だった。
『……タ、タスケ、テ……』
「……!」
一瞬だが、天使の心の声が聞こえた。
そうだ、ここでへばっている場合じゃない。私はまだ頑張るんだ。
そう思い、私アクアは気合いを入れ直したのだった。
――――
「大丈夫だよ。君は戦う必要なんてない。好きに生きればいいんだ」
私、マリンはお姉ちゃんと一緒に天使に語り掛けた。
私は物心ついた時にはすでに家族はお姉ちゃんだけになっていた。
でも、寂しくはなかった。
精霊が家族だったから。
私はたくさんの精霊たちに囲まれて育った。
そして幸せだった。
でも、その幸せはある日突然崩れた。
人間たちが私たちの家に侵入してきたのだ。
精霊たちは消し去られ、私たちは利用価値があると言って捕らえてしまったのだ。
私たちは抵抗したが、無力だった。
そのまま捕らえられ、目隠しされてどこかへ連れて行かれた。
「……どこ?」
私は不安でいっぱいで、泣き出してしまった。
「うるさい!」
バチン!!!!
泣いた私は男に張り倒された。
「だ、大丈夫!?」
「お姉ちゃん!!」
お姉ちゃんが心配したが、すぐにお姉ちゃんも黙らされてしまった。
「……大丈夫、大丈夫だから」
必死にそんなことを言うお姉ちゃん。
「何が大丈夫なの!? 根拠もないのにそんなこと言わないで! 私を馬鹿にしないで!」
私は不安のあまり、つい声を荒げてしまった。
「……ごめん……」
「え? なんで?」
私はお姉ちゃんがいきなり謝りだす理由がわからなかった。
「ごめんなさい、あの時私が、もっとしっかりしていれば、こんな目に、あわなくても、済んだのに……」
お姉ちゃんはそう言いながらぽろぽろと涙を流し始めた。
あの時の私はお姉ちゃんが何を言っているのかわからなかった。
ただ私は、状況のあまりの深刻さに何も言えなくなってしまった。
私があの時のお姉ちゃんの言葉の意味を知るのは、もう少し後の話だ。
その後私たちは救出されたが、それが精霊のおかげだと知った時、私たちはもっと精霊のことを知らなきゃと思った。
そして……
『イヤダイヤダクルシイタスケテ……!』
……あまり考えてる暇はないようだ。
私とお姉ちゃんは、苦しんでいる精霊を助けるため、精神を集中するのだった。
みーむ「いやー、ここに書くことがないね。どうしよう?」
彩人「いや、ネタがないなら無理に書かなくても……」
みーむ「ダメだ! 一度書くと決めたからには書かなければいけないんだ!」
彩人「なんで?」
みーむ「ここでやめてしまったらなにもかも終わってしまうような気がするんだ! だからやめるわけにはいかないんだ!」
彩人「あ、そう。がんばってねー」
みーむ「……なんか冷めてるね」
彩人「別に」
お読みいただきありがとうございます。
次も、火曜日に更新する予定です。




