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第53話 天使の笑み

 さて、王都に戻ると……

 状況はまずいことになっていた。


 国の制服を着ているが、中身はゴロツキみたいなヤツらがゴロゴロいて、治安を悪化させている。


「か、返してください! それがないと生活が……」

「うるせえ! これはもらうぞ!」


 そいつらが街の人から泥棒している場面に出くわしたので、


 どごおおおお!!!


 殴って返させた。


『いや、あやとの方がチンピラに見えるんだけど……』


 みーむは何を言ってるんだろう?

 奪われた物を取り返させただけなのに。


「あ、ありがとうございます……?」

 街の人も感謝してるじゃないか。


『表情がめっちゃ引き攣ってたんだけど……あと語尾が疑問形になってた』

 みーむはうるさい。


 とにかくそんなわけで街の人を助けていたのだが、そんな騒ぎはあちこちであるのでキリがない。


 解放隊の人がなんとかしてくれると信じて僕たちは進むしかない。

 ないのだが……


 どうして目に付く場所でことごとく事件が起こっているのだろうか?

 マックスは頭がいいと聞いていたが、それも疑問に思えてくる。


 とにかく僕たちは、マックスがこもっているという場所に行ったのだった。


「で、どうするの?」

 僕は解放隊の人たちに問いかける。


「とりあえず包囲して追い詰めるしかないけど、飛び道具が出てくる恐れがあるんだよね……」


 そう、コンテが答える。

 とにかく厄介な状況ではあるらしい。


 どうやらマックスは立てこもりながら、配下にソニカを潰すように指示しているらしかった。

 それでどうにかなると思っているのだろうか?


 そんなことを考えていたら、突然声が聞こえてきた。


「貴様らは、地下の組織を潰してついでに俺の勢力も削いで調子に乗っていることだろう。そんな貴様らに教えてやる。全ては俺が仕組んだことだったのだ。今から特大の絶望を味わいながら、死んでいくがいい!」


 ええ……嘘くさ……


「な、なんだその目は! 本当だぞ! ……くっくっく、今から貴様らの絶望する顔を見るのが楽しみだ」


 今のマックスの声を聞いて確信した。


 あ、これ死ぬやつだ、と。


 すると、天から何やら背中から翼を生やした人間みたいなのが一体降りてきて……

 ああはいはい、天使ですね。


「ふはは、見たか! 今飛んでいるのは天使だ! 圧倒的な力だろう! 地下で貴様らが見たのは試作品で、これが完成品だ! これで貴様らを消し炭に……」


 マックスのそのセリフが最後まで言われることはなかった。

 セリフの途中で天使が光の攻撃をマックスのいた建物の上に落とし、その場所がクレーターになってしまったからだ。


 それ見たことか!


 ……なんて言ってる場合じゃない! あの天使をどうにかして無力化しなくては!


 ……しかしどうやって? 話し合いが通じる相手なのか?


「ルナ、あの天使は話し合いが通じそうか?」

「……試してみる」


 僕の呼びかけに応じる形で、ルナは治癒の力を掛けながら天使に向かって話しかける。


「あの! 君はどこから来たの? よかったら話を聞かせてほし……」


 どこおおおおおおお!!!!


 ルナが言い終わる前に、天使から生えてきた鞭? みたいなのに打たれて地面に叩きつけられる。


「ルナ!!!!」


 僕は慌ててルナのもとに駆け寄る。


 みーむやアリアたちの力を借りてどうにか治すことはできたが、もう少し遅かったら危なかった。


「ご、ごめん! ぼく……」

「無理するな! それよりも……」


 どうやら話し合いは無理そうだ。

 ……本当にそうなのか? 粘り強く話しかけ続ければもしかしたら……


『クスクスクスクス。むりだよ』


 どこからか声が聞こえてきた。


「だ、誰だ!?」

『こっちだよ。見えない?』


 そんな気味の悪い声を出したのは、もう一体の天使だった。

 天使が二体……


『本当はこんなことを教える義理はないんだけど、面白そうだから教えてあげる。あれは元々人間じゃないよ。最初から世界を破壊するために造られた道具なんだ。生き残りたかったら破壊するしかない』


 その天使は、人を小ばかにしたような笑みを浮かべて言う。


「で、でも……」

『い、いやだ、くるしい、たすけて……』


 もう一体の天使は苦しそうにうめいている。

 これは、もしかして……


『くすくすくす、ひょっとして人の心があるから助けられるとでも思ってるのかな? 無駄だよ。これは君たちがそう錯覚するように作られているだけなんだ。気持ちが通じることはないよ』

『た、たすけて……』


 胡散臭い天使が僕の考えを否定するが、もう一体の天使の苦しみ様を見ると、とても人の心がない様には見えない。……僕はどうしたらいいんだ?


『あ、嘘だと思ってる? 別に信じないなら信じなくてもいいんだよ? ぼくはどっちでもいいし。あともう一つ言うと、実はぼくは君たちの味方だった〜ってオチはないからね? ぼくはただこの状況を楽しみたいだけなんだ。そういう意味では敵だね。くすくすくす』


 いやらしい笑みを浮かべる天使。

 隣の天使は苦しみながら破壊を撒き散らしている。


『くすくすくす、まあ人工知能と同じだねえ。本当に意思はないのにそこに意思があるように錯覚させる。いや、そもそも意思とは何だろうね。もしかしたら意思があるということ自体が錯覚……』

「ごちゃごちゃうるせえ!!!!!」


 僕は手から光の力を出して、さっきからしゃべっている天使を消し去った。

 しかし……


『くすくすくす、私は全にして個。複数の体に一つの意識を持っている。黙らせようとしても無駄』

「くすくすくすくす、うるせえええええ!!!」


 新たにどこからか出現した天使がしゃべりだした。僕はすぐさまそれを消すが……


「くすくすくすくす」

「くすくすくすくす」

「くすくすくすくす」

「くすくすくすくす」


 うるさい天使は次々出現する。

 消しても消してもキリがない。


 どうしたらいいんだ……


 僕は考えた。考えて考えた。そして……


 今、人工知能って言った? この世界にそんな物あったっけ? とふと思った。


 いや、今はそんなこと考えてる場合じゃ……

 ……待て、だとするとこの手は使えるんじゃないか?

 しかし、できるのか? ……やるしかない! 他に方法も思いつかないし……


「ルナ! 一体の天使に治癒の“力”をかけるんだ!」

「え? 治癒の“力”? なんで?」

「説明してる時間はない! 頼む!」

「……わかった!」


 ルナは僕に言われた通り、近くに浮かんでいた一体の天使に治癒の“力”をかける。


『くすくすくす、ばかみたい! 敵を回復させるなんて!』

 ルナをあざ笑う天使。ルナは構わず“力”をかけ続ける。


『くすくすくす、本当に何やって……うぎゃああああああああああ!』

 今まで余裕の表情を崩さなかった天使が急に苦しみ出した。


『ど、どうしたの……うぎゃあああああああああ!』

 他の天使も同様に苦しみ出した。


『な、何が起きた!?』

「ふふふ、これはな、みーむに頼んで結界を展開してもらった後、過治癒で天使を暴走暴走させたんだ。なるべく苦しむように! ま、お前らに説明してやらないがな!」

 問いかける天使に、僕はそう答えてやる。


『いや、はっきり説明してるし……うぎゃああああああああ!』

 天使が何かを言っていたが、すぐに苦しみ出してそれ以上話せなくなってしまう。


 ルナの魔力量ははかり知れない。だからできた芸当である。


『『『うぎゃああああああああああ!!!!!』』』


 天使たちは苦しみながら、だんだん消えていった。


「……いなくなったの?」

 静かになったところで、ルナが問いかけてくる。


「いや、まだだ。気配が残っている」


 僕がそう言うのと同時に、辺りの禍々しい“気”が収束し……


 一体の天使を形作った。


『くすくすくす、どうやら面白いことになったようだねえ……』


 嫌らしい笑みを浮かべる新しい天使。一体だが、“気”の強さがこれまでの天使の比じゃない。


 どうやら僕たちは、とんでもない敵と戦わなければならないようだった。


みーむ「くすくすくすくす」

彩人「やめて! 無性にいらいらする!」

みーむ「……てか、マックスあっさり退場しちゃったけど、良かったの?」

彩人「いや、それを僕に言われても……」


お読みいただきありがとうございます。

次も、火曜日に更新する予定です。


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