表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/56

第51話 一緒

 僕の名前はクリオ。

 王立魔術剣術学園の学生である。


 でも、他の多くの学生とは違って僕は貴族ではない。元は孤児だった。

 僕は物心ついた時にはすでに村の孤児院にいたので、両親の記憶はない。


 僕の産着などの特徴から、おそらく両親の少なくともどちらかは高貴な身分の者だったが、事情があって生まれたばかりの僕を孤児院に置いていったのだろうと聞いていた。でも僕はそんなことはどうでもよかった。


 僕にとって本当に重要なのは、あの女神との出会いだった。


 あれは僕が五歳のころだった。僕は珍しい猫を追いかけて森に入り、最終的に見失った上に迷子になってしまった。


「み、みんなー、どこー? ねえ、どこー? ねえー!」


 あの時の僕はとても心細くて心細くて、泣き出さずにはいられなかった。


 その時だった。


「どうしたの? 大丈夫?」


 僕の前に女神が現れたのは。


「えっと……ぼく、迷子になっちゃって……珍しい猫を見つけて追いかけていったら知らない場所に来ちゃって……大人に森へ行っちゃいけないって言われているのに……もしこのまま帰れなかったら……ぐすん」

「大丈夫だよ。お姉ちゃんが送り届けてあげる」


 その女神はルナと名乗った。彼女はシーフの恰好をした十三歳くらいの少女だった。少女と言っても、当時の僕よりは大きかったので、大人に見えたのだが。


 ルナは、綺麗で神々しいオーラを纏っており、そして強かった。僕の知っている大人でも敵わないような強いモンスターを倒し、僕を孤児院まで送り届けてくれたのだ。

 しかも、しばらく孤児院に残って僕に戦う術を教えてくれた。


 ルナはしばらくすると用事があると言って出て行き、それ以来二度と孤児院には姿を見せなかったが、僕の記憶に大きく残り続けた。


 僕は鍛錬をやめなかったが、ルナの強さははかり知れないことがよくわかった。それでも僕は、ルナの領域にどうにか近づきたくて頑張った。


 詳しいことは省くが、とにかく僕の努力が実って、王立魔術剣術学園に入学することができた。

 周りにいた強者たちに打ちのめされながらもしつこく食い下がり、学園でトップの成績を取ることもできた。


 でも、ルナの領域にはまだ全然追いつけていない。僕はもっと強くならないといけないんだ。


 僕がもっと強くなるために剣の鍛練していた時だった。

「ねえクリオ。今日はどこに行ってたの?」


 僕に話しかけてきたのはルーテシアだ。

 ルナが孤児院からいなくなってからしばらくしたあと、孤児院に入ってきた一つ下の女の子である。


 とある理由から僕のことを気にかけるようになり、僕の後を追って王立魔術剣術学園に入学していた。

 僕のことを慕ってくれているのはわかるのだが……


「いや、剣の鍛練を、ちょっとね……」

「ほんとに? また女のところに行ったんじゃないよね?」


 ……僕のことを気にかけすぎなところが見受けられる。


 彼女は森で迷っていたところところを僕が助けたのだが、それ以来僕に懐いているようなのだ。

 僕が女の人と一緒にいると焼きもちを焼いてくるのだ。

 正直、何でそこまで僕にまとわりついているのかわからないが。


「また女の人と会ってきたんでしょ!」

「確かに女の人はいたけど、そういうことは一切ないから!」

「いーや、あるね! 許さない!」

「なんで!? てか、なんで僕のことがそんなに気になるの!?」


 ……いささか鬱陶しいという気がしないでもない。ただなぜか、僕に露骨にアピールする女の人が多くて、その人たちを追い払う役割を果たしているので、そういう意味ではありがたいのだが。


 後になって、そのことをルナと彩人に話す機会があったのだが、


「……すごいね、ルーテシアはクリオのことが大好きなんだね」

「……えっと、こんなことを言うのもあれだけど、嫌にはならないの?」


 ということをルナと彩人に言われた。僕はキョトンとした。


「……そういえば、嫌だと思ったことはないな……」


 なんでだろう?


 ルーテシアと出会った時の出来事が関係しているような気がするのだが、それがなんだったのか思い出せない……


 ――――


 あ、危な!


 今、ルーテシアが放った光の攻撃に危うく当たりそうになるところだった。


 そう、僕は何かの儀式がきっかけで暴走したルーテシアがルナに攻撃しようとしたのを防ごうとして、ルナとルーテシアの間に割り込んだところだった!


 過去を思い出している場合じゃない! 目の前の戦いに集中しろ!


 本当は戦いたくないのだけど……


 とりあえず僕は、強力な魔法障壁を展開して、体をひねることでかろうじてルーテシアの攻撃を逸らすことに成功したが、それでも肩の一部が焼けた。


 暴走したルーテシアは恐ろしく強い。

 その後も僕は攻撃を逸らすので精一杯だった。


 どうしたものか……そう考えていた時、さらに悪いことが起こる。


『ルナ……ズルイ、クリオニアイサレテ……アナタサエ、キエテシマエバ、イイノニ……』


 ルーテシアの方からそんな声が聞こえたかと思った直後、突然僕を無視してルナの方に腐敗攻撃が飛んで行った。

 僕は必死にルナを守ろうとしてルナの方に駆け出したが、間に合わない。ルーテシアがルナを消滅させるという、悪夢の光景を幻視した、その時だった。


 彩人が割り込んできたのは。


 あいつはルナが好意を寄せる忌々しい存在で、僕は彼に対して、ついついぶっきらぼうな口調で話してしまう。

 ただ、彼のおかげでルナが助かったという話は聞いたし、今も彼のおかげで助かったのは事実だ。


 彼がほんの少し時間を稼いでくれたおかげで、僕に考える余裕ができた。この間に僕は思考をフル回転させる。


 謎の存在に囚われているルーテシアを救うためにはどうすればいいか……僕に何ができるのか……


 僕は考えた。考えに考えた。


 そして……


 ――――


 僕は再びルーテシアに立ち向かっていた。


「あ! クリオ、危ない!」

 ルナがそう呼びかけるが、僕は止まらない。


 僕はそのままルーテシアのもとに向かう。

 すると、ルーテシアは僕を狙って攻撃してきた。

 僕はそれを防いだり避けたりせず、そのまま受けた。


「クリオ!!!」


 ルナが心配する声をあげる。


 今僕が受けたのは、浴びる者を腐敗させる攻撃である。

 受ければ身体が蒸発するのは避けられないが、心配はいらない。

 ルナに心配してもらえるのは嬉しいけど。


 僕は、浄化の魔法をルーテシアに向かってかけた。

 なぜかというと、浄化魔法には人を安心させる効果があり、今のルーテシアを落ちつかせるためには安心させてあげる必要があると思ったからだ。


 しかし……


 やはり、僕の魔力では全然足りない。じりじりと僕の魔力と体力が削られていく。なのに、ルーテシアにはダメージが与えられたようには見えない。


 このままだとジリ貧だ。どうすれば……


 僕がそんなことを考えていた時だった。僕の心に、誰かが語り掛けてきたのは。


『ボクの声が聞こえる?』


 誰だ!?


『あ、聞こえたんだ! 良かったぁ~。あ、そうそう僕はね、キミの精霊なんだ』


 ……精霊?


『精霊というのはね、自然の力のことなんだ。普通は人間には声が聞こえないんだけど、ある条件を満たすと聞こえるようになるんだよ』


 ある条件?


『自分の思いを強く念じて、自然と心を通わせることだよ』


 ……どういうこと?


『クリオは今、強く願ったよね? あの娘を助けたいって』


 確かにそうだけど……


『ボクはその声を応えてあげることができたんだ。いやあ、妬けるねえ。そんなに想ってもらえるなんて……』


 い、いや、そういうことでは……


『と、いうわけで力を貸してあげるよ。ありがたく受け取るがいい!』


 急に上から目線!?

 まあいいや。今は使えるものは使おう。ここはありがたく受け取ることにする。


 それでふと思ったけど、君は初めて会った気がしないんだよね。なんでだろう?


『それはね、今までもキミの使い魔として、力を貸していたからだよ』


 え、それってどういう……


『そういうわけだから、じゃ!』


 お、おい!


 それきり声が聞こえなくなったが、すぐにそれどころじゃないことに気づく。

 僕の魔法がルーテシアに押し切られそうになっていたからだ。


 僕はあわてて力を込めると、これまで体験したことがない量の魔力が自分に流れ込んできて、浄化の魔法が強化された。


 僕の浄化魔法がルーテシアの腐敗魔法を押し返し、ルーテシアに迫るものの、あと少しというところで止められてしまう。


 ぐ……どうしたものか……


 精霊とやらの声は聞こえない。僕は必死に考えを巡らせた。


 その結果……僕はルーテシアに語り掛けてみることにした。


「ルーテシア! 聞いてくれ! 君は寂しくないのか!」


『サビ……シイ……?』


 よし、応えてくれた。


「君がなんで僕たちを攻撃しているのか、僕はずっと考えていたんだ。それで思ったんだ。僕は最近あまりルーテシアと会ってあげてなかったって!」

『……』


 この時、ルナや彩人はぎょっとした顔をしていたが、この時の僕は気づかなかった。

 その時、ルーテシアは何も言わなかったが、何かを考え込んでいることはわかった。


「君はずっと孤立して困っていたのに、僕は相談してあげられなかった! 本当にごめん! これからずっと一緒にいるから! 仲間もたくさんいるから! だから、戻ってきて!」


『……ズット、イッショ……?』


「そう、一緒!」

『モウ、ハナレナイ……?』

「離れない! 約束する!」

『ホントウ?』

「本当だ! 約束する! だから戻ってきて!」


『……わかった』


 ルーテシアはそう言うと、腐敗攻撃を止めて、僕の浄化魔法を受け入れた。


 そして、周囲が眩い光に包まれ……


 光が収まった後には、ボロボロだが、元の状態に戻ったルーテシアが、気を失って横たわっていた。


みーむ「いやー、クリオが主人公してたねー」

彩人「そうだね」

みーむ「でも正直これ、需要あるの? って思うけど」

彩人「それを言うな!」

みーむ「でもなんでこれを書いているんだろう、意味あるのかな、うまいアイデアが出ないし、って作……」

彩人「言うな!!」


お読みいただきありがとうございます。

次も、火曜日に更新する予定です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ