表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/56

第50話 獲物が、獲物が!

 精神世界から脱出して、現実世界で目覚めた僕とみーむだが……


 どうしてこうなった!?


 黒づくめがたくさん倒れているし、あたりには禍々しい気が充満しているし、ルーテシアが目を光らせつつ立ち上がっている。……状況が一変してしていて、ついていけない!


 僕が困惑していると、ルナが心配そうな顔で駆け寄ってくる。


「あ、彩人くん、起きたんだね! 大丈夫だった!?」

「僕は大丈夫だけど……それより僕が吹っ飛ばされた後、一体何があったの?」


 僕がそう聞くと、ルナは、


「……あれからあったことを説明すると、もうほんとカオスとしか言いようがなくて、正直ぼくもよくわからないんだ。ええとね……」


 ルナは僕が吹っ飛ばされた後に何があったのかを説明してくれた。


 ――――


 どかあああああああああん!


 彩人が吹っ飛ばされた先に謎の装置のようなものがあり、彩人がそこに衝突すして爆発が巻き起こった。

 彩人が衝突した装置は、王都の地下にあって破壊したものに似ていたが、爆発した仕組みがわからない。衝突したはずみでエネルギーが拡散したのかと思ったが、それにしては様子がおかしい。禍々しい“気”が彩人のまわりに集中しているような気がする。


 みんなから冷たい汗が流れる。


「あ、やべ……」

 と漏らしたのは、彩人を吹っ飛ばしたクリオだ。汗の量が尋常じゃない。


 そしてなぜか黒づくめたちも動揺している。


「ど、どういうことだ! この“魔王の魂”は“魔王の巫女”に定着するはずじゃなかったのか!?」

「わからん! だがこうなったらこの状況を利用するのみ!」

「でも、あふれる力の量が半端じゃないぞ! どうするんだ!」

「うろたえるな! 根性を見せろ!」

「ここにきて根性論!? 無理言うな!」


 ……どうやら黒づくめの方も相当混乱しているようだ。会話の内容がかなりカオスなことになっている。


 今の会話で黒づくめがうっかり(たぶん)漏らした情報によると、“魔王の巫女”とはおそらくルーテシアのことだろう。……魔王? 神じゃなくて?


 そしてもう一つ、“魔王の魂”というのは一体何なのだろうか? 精霊のようなそうでないような気配を感じるのだが……


 そんなことを考えていると突然彩人が立ち上がり、ふらふらと歩きだした。


「あ、彩人くん……?」


 私は彩人に駆け寄ろうとするが、何だか様子がおかしいことに気づいて足を止める。

 彩人の目は光っていて、足取りはおぼつかない。そのうえ、大量の禍々しい“気”を纏っている。

 そして彩人は手を前に突き出した。


「え? ……あ、危ない!」


 とっさに嫌な予感がしてその場を離れる。ティアやクリオも、アクアとマリンを連れて急いでその場から離れた。ほどなく、


 どおおおおおおおおおおおおおん!!!


 彩人の手から、衝撃波が放たれた。

 たったそれだけで、あたり一帯は焼けこげ、黒づくめたちの多くが吹っ飛ばされて戦闘不能になっていた。

 見たところ、重傷者はいるものの、死者がいないのが救いか。……でもどうやったんだろう? 地下でクレーターを作っておいて死者を出さず、天井が崩落する気配もない。どんな超絶技巧なんだ?


 て、感心(?)してる場合じゃない! どうにかしないと!

 今のところ彩人は人を殺そうとしていない。たまたまかもしれないし、どうなるかわからないけど。


「ティア! クリオ! アリア! アクア! マリン! 人質と、できれば黒づくめたちを避難させて! とりあえず人質を優先に、黒づくめも事情を聞きたいから、戦闘不能にしつつ連れてきて!」

 私はみんなに呼びかける。


「わかった!」

「了解!」

「頑張る!」

「らじゃー!」


 ティアとクリオとアクアとマリンが、口々に叫んだ。

「あ、もちろん自分の命は大事にしてね! ティアはアクアとマリンから離れないようにして!」

「了解です!」


 問題は全員を救助する時間を稼ぎつつ、彩人をどう鎮めるかなんだけど……


 ……そういえばアリアは?

 と思ってアリアの方を見ると、


「よっしゃあ! ぶっ飛ばしてやるぜええええ!」


 ……妙なやる気を放ち、彩人の方に向かっていくところだった。


「やめてええええええ!!! 彩人が消し炭になっちゃう!」

 私はアリアを羽交い絞めにした。


「は、離せ! 獲物が、獲物が待っているんだ!」

「獲物じゃないよ!? どうにか助けてよ!」

 私は冒険者として活動している時に手に入れた超強力なスキルを使ってアリアを拘束したが、今にもほどけそうである。これがほどけたら、私自信なくすんだけど……


「待っていろ! 私が今、ばくはしてあげるから!」

 アリアの目が完全にいっちゃってる。てか、アリアってそんな人だったっけ? 確かに私と冒険者をやっている時でもすでに人格が壊れかけていたような気がするが、ここまでではなかったような……最初は素直ないい子だったのに、どうしてこうなったんだろう……


 ……て、いつのまにかアリアがいない! 拘束を抜け出して彩人の方へ走ってる! ショックだ……


「やるぞ! 尋常に、勝負!!!」

「じゃなあああああああいいいい!!!!!」


 私はアリアをぶっ飛ばした。


「クリオ! アリアを見張っといて! 私は彩人を助けるから!」

「そ、そんな無茶な……」


 私はクリオに、アリアの監視を頼んだ。

 クリオは渋い顔をしていたが、一応引き受けてくれるようだ。あとはどれだけ時間を稼げるかだが……


 私が彩人に接近できればなんとか……

 そう思って私が機会をうかがっていると……


 彩人の動きがいきなり止まった。


 もしや彩人が自力で解決した? と思ったが……


「う、なんだ? 気が……」

「う、うわあああああああああ!!!」


 数人の黒づくめが突然うめき出したかと思ったら、みるみるうちに黒くなってボロボロになり、動かなくなった。


 どうやら彩人に集束していた禍々しい"気"があたりに拡散してしまったようだ。


「みんな! 魔法障壁を張って“気”を浴びるのを防いで!」

 私は味方に呼びかけた時には、もうクリオもティアも障壁を張っていて、アクアとマリンは保護されていた。


 とりあえず安心したが、クリオが焦った表情でどこかへ駆け出そうとしているのが見えた。

 一瞬何事かと考えてすぐに気づく。

 黒づくめの人質になっていたルーテシアが無防備であることに。


 そして同時に、禍々しい“気”がルーテシアのもとに集まってきていることに気づいた。


「危ない!!!」


 私は咄嗟に駆け出して、クリオを跳ね飛ばしていた。


「何をするん……え?」

 クリオが抗議しようとして、すぐに様子がおかしいことに気づいたようだ。

 顔が青ざめていた。


 禍々しい“気”を吸い込んだルーテシアが苦しみだし、異形の怪物へと変化を遂げたのだ。

 肌は浅黒く変化し、背には翼を、頭には角を生やし、異様な“気”を纏っている。

 その姿はまるで……


「魔王様……」


 そう、黒づくめの一人が呟いたとおりだった。


「おお! 魔王様! 是非我らの願いを……ぐえべ!!!」


 ……変化したルーテシアに話しかけようとした黒づくめは、その途中でルーテシアに踏みつぶされて、息絶えてしまった。


 え、ええ……


 普通はしもべの話くらい聞くんじゃ……と思ったけど、うん、これは話が通じないやつだ。つまり、これを利用しようなどということは最初から不可能だったということである。


 つまり……どうしよう……


 そんなことを考えていたら突然、


 どごおおおおおおおおお!!!


という、大きな衝撃音が響いた。


 一体どこから? と思う間もなく自分が宙に浮いていることに気づく。

 攻撃されたんだと気づいた瞬間、全身に急に痛みが襲ってきた。


 そして立て続けに、私を謎の攻撃が襲う。

 最初、炎の攻撃だと思ったが、それだけではないことに気づく。体がどんどんぼろぼろになっていくような……


 まずいと思った私は、すぐさま自分に回復魔法をかけた。

 なお、服までは回復できていなかったことに気づくのは、少し後のことである。


 それはともかくとして私は逃げようとしたのだが、すぐに私は逃げられない状況であることに気づく。周囲にはクリオ、ティア、アクア、マリン、そして彩人と、守るべき人が多くいたからだ。

 ……みんな死ぬかもしれないことは承知で来ているはずなので、私は甘いと思うのだが、それでも私は、もうこれ以上仲間が死ぬところを見たくなかった。

最悪私が囮になって、みんなが逃げる時間を稼がないと……


 その時だった。クリオが私の前に出てきたのは。


「ルナ! ルーテシア! 僕が絶対守る!」


 そう叫びながらも戦うクリオ。

 正直、今のルーテシアの力はクリオの手に余ると思うのだが、それでもクリオはよく戦っていた。

 超強力な攻撃を、見事な身のこなしで受け流している。


 それでもクリオが決め手に欠けることは疑いようもない。

 実際、彼は苦し気な顔になっていた。


 私が加勢しなければと思い、参戦しようとしたその時だった。


『ルナ……ズルイ、クリオニアイサレテ……アナタサエ、キエテシマエバ……』


 ルーテシアの方からそんな声が聞こえたかと思ったら、突然クリオを無視して私の方に腐敗攻撃が飛んできた。


 私はとっさのことに対応できず、できるだけ障壁を張って身を守ろうとしたが、それでも守りきれないことはわかっていた。


 もはやこれまでか……なんて思っていた時、不意に彩人が手を前に突き出して、


 ぐわああああああああんん!!!


 手のひらから謎の衝撃波を出し、ルーテシアの攻撃を相殺、ついでに彼女を吹っ飛ばしてしまう。


「あ、彩人くん……?」


 彩人は最初、目は虚ろで足取りもふらついていたが、しばらくして目に光が戻り、いつもの彩人に戻ったことがわかった。


「あ、彩人くん、起きたんだね!」


 私は彩人が無事なことを確信していたが、それでも心配と安堵と、彩人ならどうにかしてくれるんじゃないかという期待もあって、彩人のもとに駆け寄ったのだった。


 ――――


 いや、どうしたらいいのだろう?

 ルナの説明を聞いてもわからない。


 とりあえずルーテシアを止めなければいけないのはわかるが、ルナでもどうにかできないとなると、僕がどうにかできるとは思えない。


 てか、僕はいつの間にルーテシアを吹っ飛ばしたのだろうか?

 精神世界にいる時か?


 その時にクリオとは一瞬距離が離れたはずだが、彼は再びルーテシアに接近して戦っている。


 正直クリオのことは気に入らないし、ルーテシアも正直どうでもいいのだが、だからと言ってここで見捨てられるほど僕の神経は太くない。


 助けた方がいいのだろうか? どうやって?


 ルナは助けて欲しそうにしているが……僕はどうすればいいのだろうか?


 どうしよう……


みーむ「見捨てちゃえば?」

彩人「いや、ここでそれを言うなよ! 別に悪い人たちじゃないし、ルナの関係者だから見捨てたら後味が悪そうだし……」

みーむ「そうだよね、ここで見捨てたら物語の進行的にまずいもんね」

彩人「どういう納得の仕方!? いや、普通この状況で見捨てるなんてできないよね!?」

みーむ「はいはいわかったわかった」

彩人「絶対わかってないよね!?」


お読みいただきありがとうございます。

次も、火曜日に更新する予定です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ