第49話 精神世界パートⅡ
やばい! この状況をなんとかしないと!
どうしたらいいんだ?
「とりあえず、全員ぶっ飛ばす!」
僕はみーむと合体して嵐を巻き起こし……
「やめろ! アリアと同じことをしてるじゃないか!」
クリオに止められる。
「もーめんどくさいんだよ! みんな消えてしまえ!」
と僕がつぶやくと、
「やめろおおおおおお!!! アリアよりタチが悪いじゃないか!」
気がついたら僕は宙を舞っていた。
クリオに吹っ飛ばされたのだと理解するのに数秒かかった。
僕は慌てて体勢を整えようとしたがうまくいかず、何かの装置に吸い込まれるような感覚があった後、全身に痛みが走った。
「あ、彩人くん!!!」
ルナの声が聞こえたような気がしたが、気にしている余裕がない。
……何かの装置にぶつけた全身が痛いんだよおおおおおおおお!
僕が痛みに呻いていると、周りで動揺する声が聞こえてきた。
「こ、これは成功なのか!? 失敗したのか!?」
「わからん! どうなってしまったんだ!? 判断がつかないぞ!?」
「ど、どうしたらいいんだ!?」
僕たちの襲撃に動揺しているのかと思ったが、どうも様子がおかしい。どういうことだろうか?
どういうことかと思って周りを見回すが、特に変わった様子はない。
ろうそくの光だけで照らされる薄暗い空間に、何やら祭壇のようなものがあり、そこに黒づくめの集団がいるだけだ。
あ、ふと横を見ると、捕らえられたルーテシアがいる。すでに抵抗した後だったようで、ボロボロになって気を失っているように見えた。
『……いや、変わった様子あり過ぎだよね!』
僕が考えていると、体の中からみーむの声が聞こえてきた。……いたのか。
『いたのか、じゃないよ! ずっと合体して力を貸してあげてたのに! この恩知らず! 恥知らず! 役立たず! 罰をあててやるぞ!』
みーむが僕のことをボロカスに言ってくるが、いつものことなのでスルーする。それよりも黒づくめが騒いでいるのが気になった。
『……ねえ、なんだか暑くない?』
みーむが僕に聞いてきた。
……確かになんか暑いような気がする。地下だからマグマが噴き出しているのだろうか?
周りを見てみると、敵味方ともに、みんなが暑がっているようには見えない。
……それにしても黒づくめは、いつも真っ黒なローブだかコートだかを着て暑くないのだろうか? 夏もこんな格好するのだろうか? 特殊な訓練してるから大丈夫なのか? どうでもいいけど気になる……
いや、今はそんなことはどうでもいい! 問題は他のみんなが暑くないのに、僕とみーむだけが暑いと感じていることだ。どういうことだろう?
それにしても暑い。だんだん体が熱くなっていく。……熱く? 暑くじゃなくて? あれ? なんか眩しいぞ?
『あやと……なんか、体が光ってない?』
みーむに言われて自分の体を見てみると、確かに光っているように見える。これは一体……?
『みーむ、これがどういうことかわかる!?』
『……いや、わからないよ! どういうことなんだ!?』
わからないことだらけじゃないか! 高位の精霊だったんじゃないのか!?
『う、うるさいな! ボクでもわからないことがあるんだよ!』
それはわかってるけどさ……とにかくなにか手掛かりはないの!? このままだととんでもないことになるような気がする!
『…………おかしいんだ。さっきから合体を解除しようとしているのに、一向にできないんだ。何かが干渉しようとしている!』
どうやら、みーむもどうにかこの状況を抜け出そうと頑張っていたらしい。
……って、自分だけここから逃れようとしてんじゃないか! こうなったら道連れだ!
『なんだよ! ボクは合体を解いたらどうなるか、確認しようと、し、て……』
……ここで僕とみーむの意識は飛んだ。
……
『ふ、ふははははははは! ようやくだ、ようやく復活できたぞ! うおおおお! なんということだ、力がみなぎってくるぞ! これで世界の人類を蹂躙するのだあああああ!!!!!』
……なんか、体の内から、僕でもみーむでもない声が聞こえてきた。
……なんかうるせえな、静かにしろよ。
『……そうだね、うるさいね』
みーむも同意している。
『……ぬ? なにやら体の内が騒がしいな。そのうち静かになるはずだが……念のため消しておくか?』
『『消えるのは、お前だ!!!』』
僕とみーむのダブルパンチで、姿も見えない謎の存在は吹き飛ぶ。
『ぐ……なんだと? ここは精神世界。我が完全に掌握してお主らは動けぬはず……それに、二人? どういうことだ?』
説明ありがとう。とりあえず消えてね。
僕とみーむが、謎の存在をさらにボコボコにすると、謎の存在はさらに続ける。
『……ぐっ! 待つのだ! 我はかつてこの世界を震撼させた魔王にしてドラゴンの……だ! あれはいつだったか……忌々しい盗人に姑息な手段で封印されて以来、復活の時を待っていたのだ! そしてついに時は来た! 今こそ人類を滅ぼして、この世に楽園を築くのだ!』
……どこから突っ込んでいいのかわからない。
自分で魔王って言っちゃう? とか、忌々しい盗人っていわゆる勇者のこと? とか、楽園って誰のための? とか、肝心の名前が聞き取れなかったよ? とか……
まあいいや、うざいから消す。
『待て! こちらが教えてやったのに、なぜお主らが動ける理由を教えてくれぬのだ! 不公平ではないか! この卑怯者! 地獄に落ちるが良い!』
……なに言ってんだこいつ。別に頼んでないし。こんな状況で卑怯もクソもないよね。
というわけで、僕とみーむで謎の存在をボコリ続けるのであった。
……
しばらくして、僕とみーむにボコボコにされた謎の存在は、精神世界の中で正座させられていた。
『……すすすすすみませんでした。調子に乗ってました。わたくしが世界を制するなんて百年早かったで……』
百年?
『すみません、千年……いや、一万円早かったです。許してください』
一万円? ふざけてんのか?
『す、すみません! 言い間違えました! 一億年……』
『いいから話を聞こう? このままだと進まない』
みーむに言われて気づく。
そうだった。この謎の存在を生かしておいたのは、何か手掛かりを知っているのではないかという理由からだった。
で? 今回の事件について何か知ってる?
『いや、知らぬ。我は求めに応じてやってきただけ……』
なんだよ、使えねえな。やっぱり処分するか。
『待つのだー!! そ、そうだ、思い出したぞ。我は初め、ピンク髪の小娘に憑依するはずだったのだが、寸前でお主らが来たので、そっちに吸い込まれてしまったのだ』
あとからあとから思い出すのな。まあいい。じゃあなんでこっちに吸い込まれたんだ?
『我の進路上に立ち塞がったのが最大の理由だが、お主らからより大きな魔力を感じ取ったというのもある』
つまり偶然か。
『……それでより大きな力を使えると思ったのだが、まさかここまで強いとはな……精神世界でも力が振るえるとは、お主ら一体何者だ?』
教えてやる義理があるのか?
『ボクたちはお前よりもっと強いやつと戦ったことがあるからな! お前みたいなザコなんか、念じただけでボコボコにできるんだよ!』
僕がもったいぶってたら、みーむが代わりに答えた。
『そうか……む? 何やら意識を引っ張られるような感覚があるような……』
と謎の存在がつぶやく。
気のせいじゃない?
『な、なんだ、急に眠く……あ、ピンク髪の小娘の方に引っ張られるような気がする……』
なんで嬉しそうなんだ?
『それはむさくるしい男よりも若い女の方が……ごほんごほん! ……もし、我がお主ら敵対したら、容赦なく滅ぼしてほしい』
急に何言ってんだ? もともとそうするつもりだったけど?
『……そ、そんなことを言わないでくれ! わ、我は騙されていたんだ! 冷静に考えてここ数千年の我の様子はおかしかった。まるで何者かに洗脳されていたかのような……』
それってもしかしてルアシスじゃないの?
『……ぬ、確かそんな名前だったような気がする……う、もう駄目だ。我はここを離れる。後は頼んだぞ』
そう言って、謎の存在は姿を消した。
……で、どうする?
『ま、まあ最後の方は悪意は感じられなかったし、一応助けに行った方がいいんじゃない? あとあと役に立つかもしれないし』
みーむがそうアドバイスしたので、とりあえずそうすることにした。次反抗したら即座に消すという条件を付けて。
こうして僕たちは、みーむの合図で、精神世界から現実世界に帰還したのだった。
みーむ『あの、謎の存在さん。いい加減名前教えてくれない?』
謎の存在『我は構わぬが、ここで教えていいのか?』
みーむ『教えてくれないと変なあだ名付けるぞー』
謎の存在『やめてくれー! わかった、内緒で教えるから! 我の名は――』
みーむ『それにしても何で教えてくれないのかな? ひょっとして考えるのが面倒くさいから――』
謎の存在『そっちから聞いてきたのに無視!? 我の名乗りを聞いてくれー!』
みーむ『別に公開してくれないならいいや。つか、口調が崩れてるよ?』
謎の存在『な! こ、これはだな……とにかく名前はいつか絶対出すから、それまで待ってくれ!』
みーむ『いーよ、どーでも』
謎の存在『どーでもって言うなあああああああ!』
彩人『あの、二人とも僕と合体したまま僕を無視して会話しないくれる? ……あ、でも親睦を深めるのはいいか』
みーむ『それはどういう仕組み?』
彩人『ここで言うとネタバレになっちゃうから……』
お読みいただきありがとうございます。
次も、火曜日に更新する予定です。




