第46話 装置破壊大作戦
「ちょっと! どうするの!?」
ルナが動揺して、アリアをガクガク揺さぶってる。
無理もない。
アリアが目の前にある巨大な装置を破壊してしまったせいで、その装置にたまっていた瘴気が溢れ出してしまったのだ。
その結果、世界は破滅の危機に……これ、まじでしゃれにならないじゃん!!
「ごめん、ルナのところまで急いで駆けつけなきゃいけないと思ったから、爆裂を応用してここまできたらここに着地しちゃったんだよね~。ほんと、ごめん!」
まったく悪びれた様子のないアリアに、さすがに腹が立った。
なので、殴ってぶっ飛ばした。ルナが。
いや、そんなことしてる場合じゃない! どうしよう!? あ、そうだ!
「……とりあえず、この空間を隔離しなきゃ!」
「……! そ、そうだね!」
僕が咄嗟に言ったことで、ルナは何をすべきなのか察したらしい。
装置を巨大な空気と魔力の殻で覆っていく。
「すごい……」
「彩人も手伝って! 私だけじゃ足りない!」
僕が感心していると、ルナがそう叫んできた。
……ええと、どうやって?
「感覚でなんとかして!」
え、ええ……無茶をおっしゃる……
この時、合体していたみーむからのアドバイスがあった。
『風の力を応用するんだ! 風であたりを包み込むようにして!』
あ、そうか!
確かに風は空気の流れだから理屈に合ってる。
後はイメージを固めて……て、これが難しいんだよな……
それでも試行錯誤するうちに、だんだんコツがつかめてきた。
空気の流れを整えて……あと、魔力の流れもなんとなくわかるようになったので、それも整えておく。
すると、しばらく空気や魔力を外に出さないようにすることができることがわかった。
……よし、これでしばらく持つだろう。
僕が一息つくと、みんなが感心した表情で僕を見ていることに気づいた。
「……どうしたの?」
「いや、咄嗟にここまでやるのは凄いな、と思って」
ルナが感心していた。
「すごいの?」
「だって、さっきまでやったことなさそうだったのに、あの一瞬でそこまでやるなんて……」
なんか知らないけどすごいらしい。
「いや、まあやるしかなかったし」
「それにしても、何もしなくても効果が続くのはすごいよ。応用力があるのかな?」
なるほど、そういうことかもしれない。照れるね。
「いや、それほどでも……てか、今のは時間稼ぎだから、早くあの装置をなんとかしないと!」
「そうだった!」
そう、これは一時凌ぎなのだ。外の空気を取り入れないと、僕たちはいずれ窒息してしまう。
それに、この禍々しい“気”も行き場をなくしたわけで。より充満してやばいことになっている。
そして、倒れていた人が気を吸い込み、急に苦しみだした。
「う……ううう、うああああああああああああ!!!」
と、思ったら、唐突に起き上がって僕たちに襲いかかってきた。
ていうか……
「この人たち誰?」
「……! ……この装置を守っていた人だ! さっきぼくが倒した!」
ルナがそう答える。
……そうなのか。
ちゃんと倒しとけよ! と思ったが、これは仕方ないだろう。むやみやたらに殺すわけにはいかないからなあ……
とはいうものの、そんなことを言ってる場合じゃないかもしれない。目の前の人たちは完全に理性を失っており、倒しても倒しても、起き上がってまた襲ってくるからだ。キリがない。
仕方がない……そう思った時だった。
「待って! ここで殺したら、この人たちはずっとここに瘴気として留まり続けることになっちゃう! しばらく抑えてて!」
というルナの声が……
どんだけめんどくさいことになってるんだ! ここは!
とりあえず僕は、襲ってくる人たちを殴って倒し続けている。でもどんどん起き上がってくる。
く……どうすればいいんだ……考えろ……考えろ……
……
「ルナ! 精神を安定させる力って使える?」
考えた結果、僕はそう叫んでいた。
「力? 治癒魔法の一種で人の気持ちを落ち着かせることができるものがあるけど……」
「悪意を凝縮した“気”がこの人たちをおかしくしているなら、気分を落ち着かせればこの人たちは動きを止めるかもしれない!」
僕の言葉に、ルナは少し考えた後、
「理論上はできるかもしれないけど、全員やるには魔力が足りない! それにできたとしても、この人たちはもう助からない!」
そう言った。
「……魔力があればどうにかすることができるんだな?」
「え、そうだけど……何か方法があるの?」
「魔力を供給する方法なら……ある」
ルナの問いに、僕はそう答えた。
「え?」
「その方法なら知っているんだ。みーむが」
「そうなの?」
『ちょっと! 今はふざけている場合じゃない!』
え? みーむは知らないの?
『方法はあるけど、難易度が高くていまだに習得できてないんだよ! そんな土壇場でできるわけないだろ!』
え? そうなの? できるはずだけどなー。
『え? どうやって?』
みーむ、一旦合体を解いてみて。
『……? 解いたよ?」
みーむが僕との合体を解いたことを確認する。
「それで?」
「みーむはルナの手を繋いでくれ」
「? わかった」
みーむは言われた通りに、僕とルナの手を繋いだ。
ルナが若干恥ずかしそうにしているが、どこに恥ずかしがる要素があるのだろうか?
……まあ、今は気にしてる場合じゃないだろう。
「みーむは、ルナと契約しようとするとどうなる?」
「いや、できないよ! 精霊は基本的に一人としか契約できないんだ。無理にしようとすると弾かれちゃうんだ!」
「そうか。でも確かより力を引き出すために信じることが大事だって言ってたよね? ルナにも同じことができないかな?」
僕がそう言うとみーむははっとした表情になり、何やらブツブツ言いだした。
「……そうか、そうだった……何で忘れていたんだろう……あやとに言われるまで気づかなかったなんて……」
ほんとだよ! 何が高位の精霊だ! 抜け過ぎじゃないか!
と思ったけど黙っておこう。そんなことを言ってる場合じゃないし。
「いや、ちゃんと聞こえてるからね! ボクはキミの心の声が聞こえるってこと忘れたの!?」
ああそうだった。悪い悪い。
「……全然悪いと思ってないよね。それに忘れてないみたいだし……まあいいや、とにかくやってみる」
そう言うと、みーむは目を閉じて集中し始めた。
ルナの方を見ると、僕とみーむの話についていけずに戸惑っている様子だったので、僕は声をかけた。
「ルナも僕たちから魔力を受け取るイメージをしてみて。信じることが大事なんだ」
「わ、わかった」
ルナはそう言うと、みーむと同じく目を閉じて集中し始める。
僕も同じく目を閉じて集中する。
……実はちょっと恥ずかしかったけど、今は余計なことを考えている暇はないので、感情はシャットアウトする。
……。
「――凄い。これが、彩人の、魔力――とても、綺麗――」
ルナが何やら感嘆の声をあげている。どういうことかはわからなかったが、とにかく僕は集中する。
……。
「――すごい、力があふれてくる……これがあれば浄化できると思う……けど……」
ルナが言いかけて、途中で止める。
「もしかして、今僕たちを襲ってきている人たちのことを言ってる?」
「――そう、だけどどのみちやらなきゃいけないんだ。やってみせる!」
ルナはそう言うと、精神を安定させる魔法を使い始めた。
確かにこれは、多くのエネルギーを持っていかれる。
僕は、みーむの手を握っているのと反対の手で『神滅ぼしの剣』を持ち、地面に突き刺して、周りにいる霊たちに力を貸してもらっていた。
……なんだか、ぼくが『この娘に力を貸してください』と語りかけたら『またかよ』という霊たちの苦笑する声が聞こえたような気がするが、それでも力は貸してくれた。
後でお礼をしないと。お礼の仕方はみーむが知ってるかな……
しばらくすると、辺りを覆っていた瘴気が晴れてきた。
そして、僕たちに襲いかかっていた人たちが急にその動きを止める。安らかな表情になると同時に、泣き出しているように見える。
「――来世で安らかな生があらんことを」
ルナがそう呟くと同時に瘴気は完全に晴れ、僕たちに襲い掛かっていた人たちは遺品を残して消滅した。
謎の巨大な装置は動きを止めたように見える。
なんだかさっきまでの息苦しさは消えて、空気がおいしくなったような気がする。
「……終わったか」
「とりあえず装置を止めることはできた。けど――」
ああ。
ルナが何かを言いかけていたけど、だいたい察した。
どうにか装置を止めることはできたけど、犠牲は大きかった。勝利とは、虚しいものだったんだなあ……
「……感傷に浸ってるところ悪いけど、まだ終わってないよね?」
みーむがそう指摘する。
確かにそうだ。黒幕はまだ仕留めてないし、今回の後始末もまだ……まてよ……
「……今頃この装置からのエネルギーが断たれたことで、地上は混乱してない?」
僕のそのセリフにルナははっとした表情になり、みるみる青ざめていく。
「とりあえず地上の様子を見に行くぞ! 王都の様子を確認する!」
「あ、待って!」
こうして僕たちは、アリアが空けた穴から、地上へ舞い戻るのであった。
みーむ「結局、今回この装置を破壊した意味はなんだったんだろう?」
彩人「いやいやいや、世界を破滅から救ったじゃないか!」
みーむ「そうなんだけどさ、敵はなんでこの装置を運用していたのかなって……」
彩人「それはそのうち明らかになるんじゃない?」
みーむ「本当に?」
彩人「多分……」
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次も、火曜日に更新する予定です。




