第43話 思わぬ再会
……なんで、ここにいるの……?
私は王都での思わぬ再会に驚いていた。
アリアは、とある国の王女で、冒険者パーティーを組んでいたこともある、親友と呼べる存在だった。
最終的に私が神であることを悟られないようにするため、私はアリアを国に帰してから別れた。
別れるのは辛かったが、敵の存在を考えると、いくら親友でも私の正体を教えるわけにはいかなかった。
だから私はアリアと別れて、それから二度と会うことはなかった。
それが、何千年も前の話である。
そう、何千年も前の話である。
……なんで……?
よく似た別人か? とも思ったけど、気配でわかる。同一人物だと。
私だって伊達に神様と冒険者をしているわけではないのだ。
え? 神と冒険者を同列に語るな? 自分に様を付けるとは何事? ……すみません。
アリアって実は神か精霊か、何か人を超越した存在だっけ?
でも私が捉えた気配は普通の人間のものだし、それは昔も今も変わらない。どういうことだろう?
私の思考がぐるぐる回って答えが出ない。
だから、「あ、ルナ! 久しぶりだね!」と声をかけてきたアリアに対し、
「え? あなたはひょっとして……いや、でも……」
と返すのが精一杯だった。
正直、情報が多すぎて処理できない。
私がぼうっとしている間に、アリアはみんなに自己紹介をしていく。
「私の名前はアリア! ちまたでは国の守護神と呼ばれているけど、正体はいたって普通の女の子だよ。よろしくね!」
……あれ? そうだったっけ? やっぱり別人? いや、でも気配は一緒だし……
私はほぼ確信していたが、やはり聞かずにはいられなかった。
「え……アリア? 本当にアリアなの……?」
と。それに対してアリアは、
「ルナが今まで何人のアリアという人と会ったのかは知らないけど、私はルナと一緒に冒険者をした、あのアリアだよ。正真正銘」
アリアがそう答えるのを聞くと、私はあふれる涙をこらえきれず、
「アリア~! 会いたかったよ~!」
そう言いながら、アリアに抱き着いた。
「えっと、ルナとアリアはどういう関係なの?」
しばらくして、彩人がそう聞いてきた。
私がどう答えたものか思案していると、
「ん~とルナはね、私の命の恩人なんだ! 私は小さい頃、悪い奴に誘拐されて閉じ込められちゃったんだけど、それを救ってくれたのがルナなんだ。だからルナにはすごーく感謝してるんだよ!」
アリアが正直に答えていた。
「い、いや……それほどでも……」
私は照れ臭くなって、口ごもった。
アリアは止まらない。
「それで私とルナはしばらく一緒に冒険者をやっていたんだ。それで私もいい歳になったから別れたんだけど、今日すごーく久しぶりに再会したというわけ。懐かしいね~」
「そ、そうだね」
……アリアもきっと大きな秘密を抱えているはずなのに、そこまで言って大丈夫なの? と思ったけど、それがいつなのかという、肝心な部分をぼかしているからいいのか?
……あとでどういうことか、話を聞く必要がありそうだ。はぐらかされなければ。
そして成り行きで、ソニカの保護と王都の事件を収めるための解放隊の作戦に、アリアが協力することになった。
そのことが決まった後で、彩人が絶望したような顔をしていたので、あれ? まずかった? と思った。そしてその感覚が正しかったことはすぐに証明されることになる……
なお、そのやりとりの途中で、
「あの……あなたってもしかして……」
ソニカが言いかけると、アリアが顔を近づけて、小声で、
「……そのことは、内緒でお願いするね? なんでも聞いてって言ったばかりで悪いけど」
というやりとりがあった。
すごく気になったけど、聞いてもはぐらかされそうだ……
――――
さて、私は王都でもう一人、昔の知り合いとの再会を果たしていた。
クリオである。
学園にカイトを見に行った時に、成長したクリオを見た時はびっくりした。
そして冷や冷やした。クリオは成長したのに、私は見た目が変わっていないから……
そこを突っ込まれるかと思ったが、クリオはそのことには何も触れなかった。……細かいことは気にしない性格なのだろうか?
しかも、昔助けてあげた私に好意を持っているらしい。
……恋は盲目というやつなのだろうか?
正直私の頭はいっぱいいっぱいで、それどころじゃなかったのだが。
そして彩人とクリオの決闘が始まってしまい、いつの間にか彩人の勝利で終わっていた。
しかも、それが私を賭けて勝負というものだった。わけがわからない。
「やめて! 私のために喧嘩しないで!」とか言った方が良かったのだろうか?
まったくそれどころじゃなかったのだが。
……だって、「生きる意味だ!」とか言われたらさ、恥ずかしすぎるよ……
ただ、困惑しながらも、一応決闘は見ていた。
彩人とみーむが喧嘩して、唖然としているクリオを不意打ちしておいて「作戦通りだ!!!」と言った時はさすがに、
「うそつけーーーー!!!!」
と突っ込んだし。
その間も私はどうしたらこの不毛な決闘を終わらせられるか考えていた。
考えている間に終わってしまったが。
そうしたら今度は、ルーテシアというクリオの幼馴染らしい女の子が出てきた。
らしいと言ったのは、私も知らないからである。
話を聞くに、ルーテシアはクリオのことが大好きらしく、私に嫉妬しているという。
私にしてみれば、いや、そんなこと言われても、て感じなんだけど……
困惑していると、ルーテシアは親の仇を見るかのような目で私を睨み、剣で私の方を指して、言った。
「ルナ! 決闘よ! 受けなさい!」
「え、ええ……?」
私は思わずそんな声を漏らした。
すると、ルーテシアはそんな私の態度も気に入らなかったらしく、
「何よ! いかにも私は関係ないという態度は! 私は気に入られてるというその余裕が気に入らないわね! 受けなさい! 吠え面かかせてやるんだから!」
大声で捲し立てる。
完全に誤解なのだが、こうなってはもはや向こうの引っ込みがつかなさそうなので、私は決闘を受けることにした。
……
しまった。
私が勝ってしまったのは失敗だったかもしれない。
いやだって、隙だらけだったし、そこにちょっと手刀を落としたらどうなるかな、と思ってやってみたら、こんなにすぐに倒れるとは……
それに勝負に手を抜くのは相手に失礼だと思ったし。
でもそのおかげでルーテシアの敵意がさらに高まってしまった。誤解を解こうにも既に手遅れな感じ。時間が解決するのを待つしかないのだろうか……?
倒れた後も、
「私は、負けていない! まだ戦える! こんなところで負けるわけにはいかないの!」
と言いながら、立ち上がってくる。
……でも、残念ながら勝負は既についている。
審判だったカイトが、ルーテシアは既に戦闘不能という判断を下しているからだ。
実際もう戦える状態じゃなさそうなのだが……
「私は、負けない。だって、私はクリオの――」
ルーテシアはなおも食い下がろうとするが、
ビターーーーン!!
足を盛大にもつれさせ、倒れてしまった。
そしてそれ以降、起き上がる気配がない。
……。
……それにしても、手刀を叩き込んだだけで、こんなにダメージが入るようには見えないよね? 私はただ、手刀に魔力を込めて、体の内側までダメージが入るように叩き込んだだけ……
……うん、それが原因だね。なにやってるんだろう私。やりすぎだ。
とにかくこれで決闘は終わった。後で話をするのが面倒だったけど……
ルーテシアは目を覚ました後も、私への敵意を隠そうとしていなかった。
何が一体彼女をそこまで駆り立てるのだろう? そう思った私は、何とかルーテシアとの会話を試みようとするけど、うまくいかなかった。
結局、話がかみ合わないと判断した彩人は、とりあえずこの学園を離れた方がいいと私に言った。
私も、一旦頭を冷やした方がいいと思って、彩人の言う通りにした。
彩人には、何か他の思惑があるような気がしたが……
――――
まあそんなことがあって。
話を今に戻すと、私はアリアと再会した後、再びクリオに会っていた。
私はそこで、クリオからルーテシアがいなくなったことを聞いた。
……どうしよう。私はまだ、ルーテシアときちんと話ができていない。このまま会えないなんていやだよ。きっとずっと後悔する。
そう思った私は、彩人にどうするかと聞かれた時に、協力した方がいいと答えていた。
それを聞いた彩人は意外そうにしていたが……そんなに意外だっただろうか? まあ、私たちの今の状況から見れば、見捨てるのもアリだったかもしれないが……
そんなわけで、ルーテシア救出のために作戦を話し合い、その結果、彩人、みーむ、ティア、まーく、アリア、クリオが陽動している間に、隠密行動が得意な私、コルニス、キャンバス、コンテが王城に潜入することになった。
問題はどうやって入るかである。
ここにいるのは、隠密行動においてはトップクラスの実力を誇るメンバーたちだが、王城は警備が厳しく、潜入は非常に難しいらしい。だから陽動が必要とのことだが……
私たちが頭を悩ませていると、ソニカがひょっとしたら参考になるかもといいながら、王城の秘密を教えてくれた。
なぜかアリアも同意して、補足してくれる。
どういう事情かはわからなかったが、私たちはそれを信じて王城に向かうことになった。
クリオはソニカに凄く感謝していた。もちろん、私たちも大事なことを教えてくれたソニカに感謝した。
こうして、私たちは動き出した。
その場所でとんでもない事実が待ち受けていることも知らずに……
ルナ「アリアって一体何者なんだろう……?」
アリア「それを後書きで言っちゃっていいの?」
ルナ「うわ、びっくりした! いたんだ!」
アリア「ひどいよ! 私のことを忘れるなんて! このままルナの記憶からいなくなるなんてそんなの……いやだ……」
ルナ「ウソ泣きはやめて! あと、忘れてないから! てか、自分の昔のセリフを弄って恥ずかしくないの!」
アリア「ちっ、ばれたか……てへっ」
ルナ「てへっ、じゃない。てか舌打ちしたのが聞こえたんだけど、わざと?」
アリア「ふっ……秘密を抱えているのはルナだけじゃないんだよ」
ルナ「アリア、キャラが変わって……ないのか? って、アリアも何か重大な秘密を抱えてるの?」
アリア「それをここで言っちゃっていいの?」
ルナ「冒頭に戻った!」
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次も、火曜日に更新する予定です。




