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第42話 みーむ、便利ー

「それで、お姉ちゃんはどこにいるの?」

 僕は少女に聞いた。


「……わかんない。でも今、大変なことになっているのはわかるの」


 ……どういうことだろう? 意味がわからない。


 僕は頭が混乱しそうになったが、どうにか気を落ち着けて、改めて少女に問いかける。

「……そ、それはど、どどどどういうこと、なんだね……?」


 ……駄目だった。全然落ち着いてなかった。

 しかし言い直している時間が惜しいので、そのまま行く。


「……大変なの! わたしが行かないとお姉ちゃんが大変なことになると言われたの! だから行かなきゃいけないの!」

 なかなか空気が読める子だ。ただ突っ込む余裕がなかっただけかもしれないが。


 とりあえず僕は突撃して、手当たり次第に人質を助けていった。

 それにしても人質になっている子どもが多いな……

 いつの世界でも真っ先に犠牲になるのは子どもなのだろうか? ……まあ大人も同じか……


「エッセちゃん! ソアラ君!」


 僕は檻を破壊し、周りにいる黒づくめたちを昏倒させ、後から来たティアとクリオに人質を引き渡した。


 でもこの中に少女の姉はいないという。


 とりあえずこれで全てではないと二人に言い残して、僕は先に進んだ。


 僕はアジトの中を探し回った結果、怪しい祭壇みたいな場所にたどり着いた。そこには、


「おお神よ。我らの願いを叶えたまえ」

「どうか我らに、力をお与えください」


 ……なにか言ってる怪しい黒づくめたちがいた。


 祭壇の中央には得体のしれない液体の詰まった巨大な容器が置かれていた。

 その周りを黒づくめたちが一心不乱に祈りを捧げている。

 ……なんだ、あれ?

 何やってんの?


 その液体ははじめ緑色だったが、徐々にピンク色に変わっていく。

 黒づくめたちから歓声があがった。

 そして、黒づくめの一人が高らかに宣言する。


「見よ! この聖水を! 我らは神から祝福を受けている! 我らの成功は約束された!」


 うおおおおおおおおおおおおお!!!


 黒づくめたちから歓喜の声があがる。祭壇は熱気に包まれ、盛り上がりは最高潮となり、そして――


「そんなわけあるかあああああああああ!!!!!」


 僕の超特大突っ込みが炸裂する。

 さらに――


 ガシャアアアアアアアアアアンンンン!!!!!


 僕の飛び蹴りが液体を満たしている容器に直撃し、容器が砕けて液体がこぼれる。


 この瞬間、その場にいる誰もが時間を止めた。


 唖然とする黒づくめ。なにがあったのかわからないという表情をする少女。

 静寂が場を支配する。

 そして、僕は――


 ……やってしまった……!


 いや、何やってんの僕!? 思わず突っ込みたくなったからってそれはなくない!? いくら僕の大嫌いな神を崇めているところを見てイライラしたとしてもさ!? それが何なのかわからないのに!


 少しの間僕もフリーズしていたが、先に黒づくめたちが動き出した。


「神聖な儀式の邪魔をした奴を捕らえろ!!」

「生きて帰すな!!!!」

「よくもおおおおおお!!!!!!」


 黒づくめたちが血走った目で(顔は見えないけど、目が血走っていることはわかった)、大声で叫びながら僕に襲いかかってきた。

 なのでとりあえずぶっとばす。

 面白いように吹っ飛ぶ黒づくめ。生きているかどうかは知らない。


 めんどくさいな、全部吹き飛ばすか。

 そんな、アリアみたいなことを考えて、手を前に突き出した時だった。


「やめて! みんなを殺したいの!?」


 少女が僕を止めてきた。

 こ、これはまさか、ルナの時と同じ――


「やめて! 中にお姉ちゃんがいるかもしれない! だからやめて!!」


 ……そうだった。僕はこの娘の姉を助けるためにここに来たんだった。


 危ない危ない。僕はアリアみたいな破壊の権化になるところだった。以後気を付けよう。


 それにしても、少女の姉はどこにいるんだろう?

 あらかた探したような気がするが、見当たらない。

 まだ探してない場所といえばどこだろう?

 そう思って周りを見渡すと――


 祭壇の横に、白い服を着ている少女が立っていることに気づいた。

 ……何で今まで気が付かなかったんだろう?

 明らかに浮いてるじゃん。


 僕が連れてきた少女はおろおろしている。ひょっとして……


「お、お姉ちゃん!?」

 ……そういうことらしい。


 お姉ちゃんと呼ばれた少女はこっちに振り返って何かを言おうとしているが、声にならない。両脇にいた黒づくめに押さえつけられたからだ。

(いい加減少女の名前を教えて欲しい。呼びにくい)


 そして気持ち悪い笑みを浮かべる黒づくめの男(顔は見えないのになんとなくわかった)に、少女は取り押さえられている。少女は涙を浮かべて……


 まずい! このままだと取返しのつかないことになってしまう!

 しかし少女と僕は絶望的に距離が離れている。僕が駆けつける間に取返しのつかないことになる可能性が非常に高い!

 く……どうすれば……


『……あれ、あやと。どうしたの?』


 みーむの声が聞こえてきた。

 ……あれ? ひょっとしてみーむは、僕と合体しながら寝てた?

 こんな大事なときに……?


 ……そうだ。


「みーむは流れに身を任せていればいいから、安心して逝ってこい!」

 僕はそう言うと、強制的にみーむと合体を解き、出現したみーむを、少女に襲いかかっている黒づくめの方へ投げつけた!


「うわああああああああああああああああああ!!!!!!!」


 みーむが絶叫する。

 みーむが黒づくめに直撃すると、なぜかみーむを中心に爆発が起こった。


 え、えええええええええ!?

 なんでそうなるの!?


 ここで爆発したらだめでしょ!

 少女は……?


 粉塵が晴れると、そこには黒焦げになった黒づくめと、やはり黒焦げになったみーむと、無傷の少女がいた。とりあえず少女が無事で良かった。てか、黒焦げの黒づくめって……


 とりあえず僕は少女の元に駆けつけて、声をかける。

「大丈夫?」

「え、あなたは……?」

 少女は戸惑っている。そして警戒しているようだ。

 さて、どうしたものか……


 僕がそうやって思案していると。

「お姉ちゃーーーーん!」

「マリン!?」

 今まで僕に抱えられていた少女が姉に声をかけてきた。

 そうか、この娘はマリンっていうのか。


 当然ながら、マリンの姉(早く名前を教えてほしい)は混乱している。

「だ、大丈夫なの!?」

「うん! この人はわたしを助けてくれて、お姉ちゃんも助けてくれた、とーーても、いい人なんだよ! だから、一緒に行こ!」

「う、うん……」

 姉妹で、そんなやり取りをしていた。

 てか、僕に対する「いい人」って評価がちょっと……いや、いいんだけどね!

 あと僕って、明らかに不審者だよな……


「ねえ、さっきからボクのことはスルーなの? キミからの理不尽な仕打ちに耐えて頑張ったんだよ? もっと褒めていいんだよ?」

 僕との合体中に寝るという便利スキルを獲得したみーむが、ここで空気を読まない発言をしてきたが、スルーする。

「あ、あれ、もしかして相当根に持ってる? ね、ねえ無視しないでよ。ごめんって!」

 別に怒ってはいないが、無視する。

「おーーーーい!」

 みーむが何か叫んでいた。


「え、あ、あの、あれ……」

 僕がふと気が付くと、姉の方が、どこかを指さして震えている。


 一瞬、僕とみーむの言い争いのことかと思ったが、そういえばここはまだ敵地だったことを思い出す。

 そして、姉が指さした方を見ると、妹が、満身創痍の黒づくめに捕らえられて、ナイフを突きつけられているところが見えた。

 や……やばい!


「く……まだだ、まだ希望がある、清浄の巫女がいる限りは! おい、お前たち、言うことを聞け! この娘がどうなってもいいのか!」

 黒づくめが何か言っていた。


 なので、

「うわあああああああああ! 高位の精霊に向かって罰当たりなあああああ!!!」

 またしても僕に投げられたみーむは、そんな寝ぼけたことを言いながら黒づくめに突撃し、


 どかああああああああああんんんんん!!!!!


 爆発を巻き起こした。

 結果はさっきと同じで、黒づくめは黒焦げになり、マリンは無事だった。


 そういえば、さっき黒づくめは咄嗟にみーむを避けたような気がするけど、みーむは急に進路を変えて突撃を成功させてたな。


 すげー。みーむ、便利ー。

 これからもどんどん使っていこう。


「ボクは爆弾じゃない! 精霊でそんなことをするなんて罰当たりな! いつか罰を当ててやるぞ!」

 さっそくみーむからの抗議が。

「ごめん。さっきは余裕がなくて……確かにこの方法に頼っているとこれから先厳しいよな……わかった、これからはあまり使わないようにするよ」

「そういうことじゃない! わかってて言ってるでしょ! てか、あまりってなに!? どういうこと!? ねえ、ねえ!」


 僕とみーむがそんなやりとりをしていると、まわりにいる黒づくめたちが唖然とした顔でこっちを見ているのがわかった。

 どういうことかわからなかったが、とりあえずみーむを投げて黒づくめをぶっ飛ばす。

 みーむがうち漏らした奴は僕が火や風の力を使ってぶっ飛ばしてやった。


 黒づくめたちが「せ、精霊だと!? どういうことだ! 奴らは――」とか、「罰当たりな! こんなことがあっていいの――」とか聞こえていたが、僕がぶっ飛ばしたのでよくわからなかった。


 そんなこんなで、祭壇の部屋にいた黒づくめたちは一掃された。


 そこで、茫然としていた姉妹の姉の方が、僕たちに向かって歩み出てくる。

「た、助けてくれてありがとうございます。あの、あなたは――」

「僕の名前は三好彩人。通りすがりの旅人……じゃなくてこの争いを終わらせ……でもなくて、神を倒す者だ!」

「それ言っちゃうの!?」

 みーむはそう言うが、仕方ないじゃないか。僕が自己紹介で適当な肩書を言おうとするたびにみーむが白い目を向けてくるんだから。

 別にそんなことを気にする必要はないんだけど、さすがに自分でもどうかと思ったんだよね。……正直すぎたか。


 僕があれこれ考えていると、姉妹が自己紹介を始める。

「私は精霊を信仰するスピリシャル王国の女王、アクア=スピリシャルです。そして――」

「わたしがアクア姉ちゃんの妹でスピリシャル王国王女、マリン=スピリシャル! よろしくね!」

「あ、うん。よろしく」


 そうか、女王と王女だったか。スピリシャル王国――聞いたことのない国だな。僕が知らないだけか? みーむの説明にもなかったような気がするけど……

 てか、さらに状況がややこしくなるの? やめてくれない? 収拾つかなくなるよ?

 そんなことを言っても仕方ないけど。


 とりあえずどんないきさつでこうなったのか、姉妹から聞き出そうとしたところで――


 僕は急激な魔力の変化を感知した! やばい!


 僕は咄嗟に、アクアとマリンの姉妹を抱えて上空に飛び上がった。


「え、ちょ――」

「わあ――」

 姉妹が何かを言おうとしたところで、


 どかあああああああああああんんんんんん!!!!!


 敵の拠点を、超巨大な爆裂が包んだ。

 間違いなく、アリアの仕業だろう。


「いやあ、敵の数が多くてさ、めんどくさいからまとめて吹き飛ばしたんだよね」

 地上に降りた後、アリアはそんなことを言っていた。

「ねえ、ティアとクリオは!?」

「それは大丈夫。ちゃんと避難するように伝えたから」

「あれ、僕には?」

「忘れてた」

「おいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 僕はアリアを揺さぶる。


 ほどなくして、ティアとクリオが戻ってきた。多くの人質になっていた子どもたちを連れていたが――

「あれ? これで全員?」

「いや、まだいるはずだけど……」

「そこのアクアとマリンを入れても?」

「……まだいるはずだけど……」


 クリオの話を聞いた僕は、アリアの方を振り返る。

「あの、人質は」

「……………………あ」


「ばかあああああああああ!!!!!!」

 僕は人質救助のために、駆け出していった。

「あ、待って! わたしたちも!」

「私にできることならなんでも……」

 アクアとマリンも僕を追いかけて――


 現在(前回の冒頭)に至る、という訳だった。


 ――――


 ようやく救助活動は終わり、人質たちは全員の無事が確認された。けが人はいたけど、どうにか治した。もっとも精神的なケアがこれからの課題だが。

 ついでに息のある黒づくめたちは全員縛り上げておいた。


 ……陽動のはずが、いつの間にかアジトを制圧していて、計画が大幅に狂ったような気がするが、仕方がない。


 とりあえず、

「さて、と。辛いだろうけど、答えてほしいことがあるんだ。実は僕たちはこの状況がよくわかっていない。できれば君たちのことを教えてほし――」

 ここまで入り込んでおいてそれはないかと思いつつ、必要なことなので、人質だった人たちにこの状況を聞き出そうと話しかけた時だった。


 ブルルルルルルル!!!!


 僕がルナに持たされていたケータイカード(通信できる紙切れ、僕が勝手に命名)が振動したので、僕は応答する。


「ええと、どうし――」

「あやと! 大変なの! 早く来て!」

 カードからはルナの切羽詰まった声が聞こえてきた。


 状況はさらに複雑になりそうだ……


みーむ「なんであの時ボクを投げたの!? 別の方法もあったよね!?」

彩人「いや、あれしか思いつかなくて……何か方法あったっけ?」

みーむ「あるよ! 以前獲得した炎とか、光とか、分解の“力”があるじゃん! あれの範囲を絞って威力を高めて狙撃すれば良かったんじゃないの!?」

彩人「…………………………あ」

みーむ「なんで思いつかなかったんだよ!!!」

彩人「……いや、“力”を使えば敵に察知されるかもしれないじゃん? その点みーむを投げる方法なら、敵の意表を突けるんじゃないかなって……」

みーむ「その理由、絶対後付けだよね!?」

彩人「ていうかさ、みーむって投げられた後、爆発してたよね? あれどういう仕組みなの?」

みーむ「……せめて敵にダメージを与えられるようにと思って、敵にぶつかった瞬間に炎の“力”を使って爆発させたんだよ……」

彩人「へえー、気が利くじゃん。またよろしく」

みーむ「二度とやるか!!!!!」


お読みいただきありがとうございます。

次も、火曜日に更新する予定です。


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