第39話 新国家樹立?
僕たちがそんなことを話していたら、再び謎の集団がやってきた。
さっきソニカを殺そうとしたのと同じ集団か。妙な殺気を放っていて、黒づくめも混じっている。
さすがに数が多い。
どうすれば凌げるか、考えていた時だった。
「どうやら私の出番のようだね!」
アリアが何故か嬉々として言った。
「ああ、お願いするよ」
僕はそう言ったのだが……
「やめて! この町がクレーターになっちゃう!」
ルナが割り込んできた。
「え? いやでも、そんなことを言ってる場合じゃない! 今は生き残ることを優先しないと! 頼む!」
「うん、わかったー」
……アリアがあまりにも軽い調子で言ったので、嫌な予感がした。やっぱり止めるべきかと僕は考えて何か言おうとしたが、その前にアリアが敵に向かって攻撃を放った。
クレーターができていた。
あれ? ここってこんな景色だっけ? 確かあそこには……
「山がなかった?」
そう、山があったところがクレーターになっていたのだ。
当然、敵がいたところもである。
「ちょっと! ちゃんと抑えてって言ったじゃん!」
ルナがアリアの肩をつかんでゆすぶっている。
「いや~ごめんごめん。敵の親玉だけを狙うつもりだったんだけど、山ごと吹き飛ばしちゃった! 本当にごめん~」
え、ええ……
「本当に抑えたの!? ねえ!?」
「いや、1%くらいしか出してないんだけどね~」
……うそ……
あれで1%?
全力出したら世界滅ぼせるじゃないか? いや、足りない?
なんてことを考えていたら、いつの間にかルナが僕の肩を揺さぶっていた。
「彩人もちゃんと考えてよ! いやしょうがなかったけどさ! アリアに本気ださせたらとんでもないことになるから!」
「ごめん、わかんなくて……」
そこでふと思い出して言った。
「てかさ、あんなに強いならルアシスも倒せるんじゃないの?」
僕がそう言うと、ルナは一瞬はっとした表情になって、しばらく考え込んだ後、首を横に振って言った。
「いや、難しいと思う。確かにパワーだけなら圧倒できるかもしれないけど、神は狡猾で、逃げ隠れするのが得意なんだ。それに、周りの被害も甚大になってしまうし……」
……確かに……神は滅ぼしました、世界を道連れにして、じゃ本当にシャレにならない……今までなんのために頑張ってきたの? って話になる。
「ちなみにアリアの全力は見たことがあるの?」
「よくわからないけど……一回、アリアは月を壊してしまったことがあって、月を修復するのに苦労した記憶があるな……」
「嘘でしょ!?」
ルナの表情からして、これは本当のことなのだろう。まじかよ……
アリアはギャグマンガの住人か!?
……ん? てかルナって月直したの? 一体どうやって?
僕がそれを聞こうとした時、見計らったようなタイミングでアリアがカットインしてきた。
「ちょっとそこの二人! 何を話してるの?」
「え? いや、天気が良いですね~って。あはは~」
ルナは誤魔化し方が雑過ぎるだろ。
「ひょっとして私のこと、バカだと思ってる?」
「いや~そんなことないよ~」
「アリアはすごいねって話をしてたんだよ、ね?」
アリアに問い詰められた僕とルナが汗をだらだら出しているのが、体感でわかった。
「そうなんだ~」
そう言いながらアリアは笑顔を向けてくるが、目が笑っていない。
こわい。
「わかった。そういうことにしてあげる。……次はないぞ」
……こわい。
小声で付け足された「……次はないぞ」が特に。
アリアには十分気を付けよう。
それにしても、僕は一瞬、アリアがこんなに強いなら僕が戦う必要はないのではないかと思ったが、強すぎるのと、性格がアレなのでやはり任せるのは不安だとも思った。でも、できれば戦いたくないなと思う。なので、
『ねえみーむ、アリアが手加減を覚えるのと僕がパワーアップしてルアシスを倒すの、どっちが早いと思う?』
僕はふと思ったことを、みーむに思念で聞いてみる。
『確実にキミがパワーアップする方が早いと思う。てかアリアが手加減することを覚えるかな?』
というみーむからの回答が。
……デスヨネー。
結局僕は逃げられないか。逃げる気もないけど。
まあここで話していても仕方がない。せっかく時間が稼げたのだ。
ここで状況を整理しよう。
現在僕たちと敵対していると考えられるのはソニカの弟で第二王子のマックスだ。ソニカを抹殺するために手先の者を動かしているらしい。そして、ルアシスの手下であると考えられる黒づくめもそこに加わっている。
なぜ、この国で見た黒づくめがルアシスの手下だと考えているかというと、やはり黒づくめの一員だったコルニスが、元の仲間と同じ匂いを感じると言っていたからである。
さらに、国王の動向も不明である。
正直、ソニカを追放した時点でマックスは勝利しているわけで、こんなに騒ぎを大きくしてまでソニカの抹殺を急ぐ理由がわからない。
とにかく僕たちはこの戦いを終わらせて、マックスを王位から引きずり降ろさなければならない。それもなるべく犠牲を出さずに。
犠牲を出さないようにするのは、僕が人が死ぬところを見たくないというのもあるが、あまり犠牲を出すと神の思う壺になるからという事情もある。
そもそも神は多くの犠牲を出させるためにこの戦いを扇動している可能性が高く、さらに犠牲者の遺体は人体実験に使われる恐れがあるからだ。
……なんとしてでも阻止しないと。
僕は自分にできることがないか考える。
ええと、今やるべきことは……
「よし、新国家を樹立することを宣言しよう! 彩人が!」
「「「なんでそうなるの!?」」」
アリアの突然のセリフに、僕とルナとみーむが即座に突っ込んだ。
「だって彩人はクラウン王国を継ぐ気はないんでしょ? それに新国家を樹立すれば彩人は初代国王だ。初代っていいよねー。伝説に残るよ」
アリアがそんなことを言うと、なぜかみんなが、僕の方へ呆れた視線を向けてくる。
いや確かに、一度はそういうのに憧れたけど! でも僕はそんなことを言ってないよね? みんなが痛い人を見る目を僕に向けてくる意味がわからないんだけど!
「それで新国家の名前はどうするの?」
アリアは構わず続ける。
こいつ面白がってるな。覚えてろよ。
「確かにそれは大事。名前には魂が宿る」
コルニスも同調する。こっちは目つきが真剣そのものだ。
余計なことを言うな!
「だから僕は王じゃないの! あの時は気の迷いで……」
僕は抗議するが、
「それで? どういう国をつくるの?」
と、コルニスは続けてくる。
……聞いちゃいねえ。
アリアは僕をからかうし、コルニスは期待するまなざしで僕を見ている。
このまま問答していても話が進まなさそうだし……とりあえずここは誤魔化してうやむやにしよう。
「思いつかないから後にする! どうせならとびきりかっこいい名前を付けたいから!」
「「「ダメじゃん!」」」
何人かの声がハモった。
「しょうがないじゃん、僕はネーミングセンスがないし、安易な名前は付けたくないんだよ!」
みんなの視線がますます冷たくなっていく。これはもう仕方がない。
問題の先送りとも言うが、その間にみんなこのことを忘れてくれるだろう。多分。
だから僕に為政者としての資質はないんだよ!
……これはどうにかしてソニカに王様になってもらわなければならないな。そのための計画を練っておこう。
こうした騒動があった後、僕たちは今までにないくらい忙しい日々が続いた。
何をやっていたのかというと、一言で言えば人助けである。
みーむ「いや、国の名前くらい考えろよ!」
彩人「いや……思いつかなくて……じゃなくて、このネタまだ引っ張るの?」
みーむ「思いつかないって、誰が?」
彩人「誰がって? ……いや、そんなつくらない国の話をされても……」
みーむ「てか、あやとは国が何をするものなのかわかってるの?」
彩人「その話はもうよくない!? ……そういえば国って何だろうね……」
みーむ「……うーん……」
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次も、火曜日に更新する予定です。




