表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/56

第38話 王

「で? ソニカってどういう子なの?」


 アリアはルナに協力することを決めたあと、こんなことを言った。


 てか、え? アリア、それ知らないで引き受けたの? 調子良すぎだろ!


 と、思っていたら、ソニカがおずおずといった感じで前に出てきて、アリアに話しかけた。

「ぼくの名前はソニカ=アリアランズ=クラウン、このクラウン王国の第一王子です。この度は協力感謝します」

 さすが、ソニカは礼儀正しいね。


「あ、君がソニカだね。よろしく! ああ、いーよいーよ、そんな堅苦しくしなくても! 私のことは気軽にアリアと呼んで! 敬語はいらないよ!」

 アリアはどこまでもノリが軽い。強者の余裕というやつだろうか。


「あ、あの……質問いいですか?」

 ソニカがなおも遠慮しながらアリアに聞いてくる。てか敬語が取れてないぞ。別にいいけど。

「い~よ~! なんでも聞いて!」

「あの……あなたってもしかして……」


 ソニカがそこまで言うと、アリアが顔を近づけて、小声で言った。

「……そのことは、内緒でお願いするね? なんでも聞いてって言ったばかりで悪いけど」

 アリアは人差し指を口にあてて注意する。

 ソニカは納得したように、こくこく頷いていた。


 ……内容丸聞こえだけどね! まあ聞かないけど。


 そういえば、アリアとソニカって髪の色が一緒だし、顔立ちもどこか似ているような気がする。

 姉と弟……いや、姉と妹に見える。……なぜ言い直した? ……そういう風に見えるからだけど……


 遠い親戚か? それにしては何か秘密があるような気がするが……今は何も聞くまい。


 それからしばらく、アリアはソニカの話を聞いていた。

「え! ソニカって男だったの!? 美少女にしか見えないよ!?」

「あはは……よく間違えられます……」

 まあ、確かに……初見でわかる方が珍しいだろう。

 あれ、でも……

「でも、ぼくさっき、第一王子って名乗ったんだけど……」

「そうなの? 聞いてなかった」


 ……


 まあそんなことがあって。


 アリアがソニカの護衛に加わることになったが、大きな問題が残っていた。

 僕たちが今からどこへ行こうという問題である……


 ソニカの安全を優先するならここから移動すべきだろう。

 だが、目の前の惨状を見て、ここを見捨てることができるだろうか?

 何よりソニカがここを離れたくないと言っている。


 ただ実際問題、ソニカを逃がすことと、この町を救うことが両立できそうにない。


 これは……覚悟を決めなければならないか。


「ソニカ、話がある」

 僕はソニカに話しかける。


「なんでしょう?」

「ソニカはこの町を救いたいと思っているんだよね?」

「……うん」

「でも、今のままじゃ難しいということもわかってるんだよね?」

「…………うん」

「……落ち着いて聞いてほしい。君は、王になる気は、ない?」

「ない、けど……」

「君は王になりたい?」

「……わからない……ぼくは、周りの人に言われて王にならなきゃって、思ってたけど……」


 自分の意思がわからなくなってしまったのか。いや、そもそも自分の意思というものがないかもしれない。これは厄介だぞ……


 僕は意を決して肝心なところを言う。

「あまり、こんなことは言いたくないけど……この騒ぎ、君が王にならないと収まらないと思うんだ」


 できればこんなことは言いたくなかったが……もうこうなっては仕方がない。

「ソニカ、王になるんだ。この町を救うにはそれしかない」

「え、いやでも……ぼくには王としての資質が……」

 ソニカは逡巡していた。が、しばらくするとこんなことを言ってきた。


「……ごめんなさい。ぼくは王の器じゃないと思うんだ。だから引き受けられない」

 そんなことないと思うが……しかしここで無理してもろくな結果にならなさそうだ。どうしたものか。


 それでも僕はしばらく説得を試みるが、ソニカは首を縦に振る気配がない。

 そして、時間もない。時間がたてばたつほど状況は悪化していくだろう。


 もう、こうなったら仕方ない!


「じゃあ、僕が王になる! だから協力してほしい!」


 うわあ、何言ってるんだ僕!

 と思うが、止まらない。


「それなら協力するよ。頑張ろう」

 ソニカが同意してしまった。それに対して僕は、

「あ、ああ……」

 と答えるしかない。


 ……なんで僕はこんなことを言ってしまったのだろう……


『……』

 みーむがどうしようもないやつを見る目で僕を見ているような気がする。

 悪かったよ!


「それじゃー決まりだね! わたしもがんばるよー!」

 アリアが元気良く言った。

「あ、ああ……」

 僕はさっきと同じ返事しかできない。


「ご主人様の野望、絶対に成就させる。頑張る」

「……」

 コルニスもやる気を見せているが……

 僕に野望なんてないんだよ! 僕は別に王様になりたいわけじゃないんだ……


 僕は頭を抱えていた。

 今更やっぱやめたなんて言える雰囲気じゃないよな……


 とはいえ、こうなっては仕方がない。なので、

「やっぱり今のなし! 僕に王様なんて無理だしなりたくもないから!」

 と、叫んだ。


 空気が凍り付く。

 そして、一部を除いて、周りにいる人たちが僕にゴミを見るような目を向けてきた。


「……ねえ、人として恥ずかしくないの?」

 ルナがそんなことを言ってきた。

 ……き、きつい……!


「いや、そんなこと言っても、無理なものは無理だし! ごめんなさい! やっぱソニカさんは王になってください!」

「……え、ええと……」


 僕の言葉にソニカは戸惑っていた。

 ちらと周りを見てみると、ルナはゴミを見る目で僕を見ていて、コルニスは何か期待しているような様子で、ティアはおろおろしていて、アリアはこのやり取りを面白がっている様子だ。


 そして、誰かが口を開きかけた、その時だった。


 ドオオオオオオオオン!


 何かが爆破される音がした。


「!? 今、何が……」

「あ、あれ……」

 ソニカが困惑しながら指さしたのは、王城の方だった。この国の城は遠くからでも見えるように、とにかく高くつくってある。そんな高い建物は元の世界でも見たことがない。どうやってつくったんだ? いや、周りに高い建物がないからそう見えるのかもしれない……


 で、そっちの方を見ると……燃えていた。どうやら今爆破されたのは王城らしい。まじか。


「ど、どうなってるの? だって……」

 ソニカが絶句していた。僕もわけがわからな……あれ、ひょっとして?


「まさか、王都で不穏な動きがあるって言ってたけど、それと関係があるの?」

 ルナがコンテに問いかけた。

「その可能性が高いけど……早すぎる。こんなに早く準備ができるなんてことが……」

 僕もルナと同じことを考えたが、ありえないらしい。


「どういうこと?」

「王都で不穏な動きをしている連中は準備を整えてから行動を起こすはずなんだ。準備が整わないのに実行なんて真似をするはずがない。やつらは慎重なんだ」

 そうなんだ。

 僕の問いに、コンテは丁寧に答えてくれた。……それにしてもそんな情報はどこで手に入れたんだろう? 解放隊はスパイ活動をしているのだろうか? すごくね?


 ……いや、コンテもわかってないということは結局役に立ってないじゃん! ……なんてことを言える立場じゃないけど。


「とにかく、今は情報を集める必要がある。なんでもいい、誰か有効な情報を持っている人はいない?」

 ……なぜか僕が仕切ることになってしまったが、仕方がない。

 と言っても、一応聞いてみただけで、有効な情報が出てくることは期待してなかったのだが……


「あ、それなら」

 意外にも手を挙げる人がいた。

 今手を挙げたのはキャンバスである。

「王城に裏から入っていく黒づくめの集団を見つけた。たぶんやつらの仕業だと思う」


 黒づくめというと、ひょっとして……?

 そう思って僕はコルニスの方を見る。

 するとコルニスは察したのか、僕が何かを言う前に、彼らの特徴をキャンバスにいろいろ質問していた。

 コルニスはキャンバスに一通り質問した後、僕に言った。

「間違いない。黒づくめの人たちは私の仲間だったやつらだ。背後にはルアシスがいる」

 やっぱりか……

「そうか、ありがとな」

「大丈夫、私はご主人様の野望のために動く。これくらいは当然」

 僕がお礼を言うと、コルニスは何かを言っていたが、めんどくさいのでスルーした。


 それにしてもかなり有用な情報だ。僕はキャンバスにお礼を言おうと思ったが……


「ねえキャンバス、なんで私に報告してくれなかったの?」

 キャンバスの姉であるコンテがキレた。

「いやだって……タイミングが……」

「報告と連絡と相談は基本だって言ってるでしょ! そんな大事なことは最初に言いなさい!」

「うわあああああ!」

 言い訳しようとしたキャンバスをコンテが捕らえて、頭をぐりぐりする。

 うわあ……こんなことが日常的に行われているのだろうか? なんか手馴れているような気がするのだが……


 僕がドン引きしていると、彼女たちの姉であるラテが口を開いた。

「言ったじゃない、黒づくめが動いてるって。聞いてなかったの?」

「え?」

 ラテの言葉にコンテが凍り付く。

 まじか。

 ……コンテって三姉妹の中じゃ一番まともかと思っていたけど、認識を改めないといけないのかもしれない。


「ちょっと、コンテも知らなかったじゃないか! 一体何やってるの!?」

「うるさい! 口答えするな!」

「理不尽だああああああああ!」

 自分のミスを指摘されてもなお、キャンバスをぐりぐりするのをやめないコンテ。

「仲が良くていいわね〜」

 そんな呑気なことを言って、妹たちの喧嘩を止めないラテ。

 いや、止めろよ!


 仕方がないので、僕は止めに行くことにした。

「ねえ、その辺にしたら……」

「うるさい!」

 説得しようとしたら、コンテに殴り飛ばされた!

 理不尽!!!

みーむ「いや、なに言ってるの! 王とか!」

彩人「いや、ごめん……あのときの僕はどうかしてた」

みーむ「いやいやいや、これからもっと面倒なことになってくから! 自分の発言には責任を持って!」

彩人「助けて、みーむ!」

みーむ「反省しろ、女の子に殴り飛ばされた王!」

彩人「だから僕は王じゃないって……ぐはあああああああ!!!」


彩人「……」


みーむ「彩人を吹き飛ばしたら、うごかなくなっちゃった……命に別状はないようだけど……」


みーむ「まあ、さすがにかわいそうな気がするから、どうしても困った時は助けることにしよう……すでにボクとあやとは運命共同体だし……」


お読みいただきありがとうございます。

次も、火曜日に更新する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ