第37話 国の守護神?
外で爆発音が響いていた。
「ば、爆発!?」
衝撃で外に出た僕たちは、謎の男たちが魔法を使って爆発を起こし、『モーヴェ・カフェ』の壁を爆発したのを見た。
そして、拡声器に乗せたような大きな声が、あたりに響く。
『ソニカ王子、この近くにいることはわかっている。周りに危害を及ぼしたくなければ投降しろ。命の保証はする』
……こいつらソニカを殺すためだけにこんな爆発騒ぎを起こしてるのか?
正気!? それとも他に思惑があるのか?
どうする? ソニカを引き渡すなんて論外だが……
「まあ、逃げるしかないよね」
「そうだね」
僕の言葉にルナに同意し、他のみんなもうなずいたので、僕たちはこの場から逃げることにした。
「そ、そんな……ぼくのために……」
「いいから! 今は逃げることに集中して!」
ソニカが自分を犠牲に……と言い出したのを、僕が遮った。
外はひどい有様だった。
謎の集団が起こした爆発騒ぎを受けて、人々が逃げまどっている。
ソニカが自分のせいだと嘆きたくなる気持ちもわかる。もちろん口には出さないけど。
僕たちは逃げた。とにかく逃げた。そして……
目の前でおびえている子どもたちを見つけた。
その子どもたちに向かって、さっきの無法者集団(?)の一人が爆発させる魔法を放とうとしていた。
どうしたらいいのだろうか。この子たちを守るかソニカを守るか……
僕がそんなことを考えていたら、横から飛び出す影があった。
ソニカだ。
ソニカがその子たちを守ろうと、飛び出していく。
が、間に合わない。く……やむを得ない。
僕はソニカたちの目の前に立ちはだかって爆発から守った。
目をつぶって爆発の時を待っていた子どもたちやソニカが驚いている。
僕が魔法を放った男を睨みつけていると、目の前の男が口を開く。
「何をしている! やめなければお前も排除するぞ!」
「それはこっちのセリフだ! ……お前、何が目的なんだ?」
あまりにも身勝手な男のセリフに、僕は若干声を低くして言い返した。
「何がって? わかっているだろう? ここで言わなきゃわからないのか?」
男の態度がむかつくが、我慢だ。
「あいにく僕は頭が悪いんでね。言わなきゃわからないんだ」
僕は一瞬ソニカたちに、視線で逃げろと合図を送ってから、会話を引き延ばしてなるべく時間稼ぎをしようとした。
「そうか、言わなきゃわからないのか……じゃあ教えてやるよ。ソニカ王子を引き渡せ。じゃないと……こうなるんだよ!」
男はそう言うと、指を鳴らした。
それにどんな意味があるの? と疑問に思っていると、上空に竜や鳥の魔物みたいなのが集まってくるのが見えた。背中には人が乗っている。
そして、背中に乗る人たちは一斉に魔力を集めて魔法をこっちに撃とうとし……
……や、やばい! 辺り一帯を黒焦げにする気か!
てか、向こうに話を聞く気ないだろ! 形式だけでも話を聞いておかないと、後々困ることにならないか?
とにかくどうする? もうこうなったら、がむしゃらにでもやるしかない!
僕はみーむと合体して、あたり一帯を風のバリアで包んだ。
ルナ、コルニス、ティアと、例の三姉妹が戦ってくれるが、多勢に無勢だ。
だんだん押し切られていく。
く……ここまでか。
僕がそんなことを思ったその時だった。
辺りに漂っていた魔力が、一気に霧散した。
一時的に、その場にいた全員の魔法が使えなくなっていた。
もっとも、僕みたいに精霊の“力”を使っている人は影響がなかったが……
そして、僕たちの前を見えない影が通り過ぎていく。
と、思ったら空を飛んでいた魔物が両断された。
瞬時に、空を飛んでいた全ての魔物が、である。
てかこのままだとこっちに落ちてくる! と思ったらその魔物が突如、蒸発した。
「え……」
あまりの光景に、僕も、ルナも、ティアも、コルニスも、ソニカも、みーむまで、絶句して立ち尽くすしかなかった。
場を、静寂が支配する。
そこへ、一人の人物が降り立った。
年は十六ぐらいだろうか? 赤い髪を肩口で切り揃えた少女で、剣を提げた格好がよく似合っていた。
そんな少女があたりを見回し、言った。
「あれ? みんな、どうしたの? 固まっちゃってさ」
いやそんな、一瞬で戦況ひっくり返ったらみんな驚くよね。
あれ? でも解放隊の人は戦い慣れてるはずだよね? 固まっちゃって大丈夫なの?
と思って三姉妹の方を見ると、きちんと警戒していた。
それで、ふと気になってルナの方を見ると、こっちは純粋に、驚愕のあまり声が出ないという感じだった。
ただ、なぜだろう? 僕たちとは違う理由で驚いているように見えた。
まるで、会うはずのない人に会った、みたいな……
ひょっとして知り合いなのか?
迂闊に動くのは危険だと思ったが、このままだと埒があかないし、相手に敵意を感じなかったので、警戒しつつ話をしようとした、その時だった。
「あ、ルナ! 久しぶりだね!」
赤髪の少女がそんなことを言ったのは。
対するルナは、
「え? あなたはひょっとして……いや、でも……」
困惑していた。
一方で、赤髪の少女はそれを気にした様子はなく、みんなに目を向ける。
「あ、自己紹介がまだだったね。私の名前はアリア! ちまたでは国の守護神と呼ばれているけど、正体はいたって普通の女の子だよ。よろしくね!」
え、ええ……
僕は気になって恐る恐るアリアに尋ねてみる。
「えっと、国の守護神というのは?」
「私は普段は街で普通の女の子として暮らしているんだけど、人々がピンチになった時、みんなの前に駆けつけるんだ! そんなことを繰り返していたらいつの間にか国の守護神と呼ばれるようになっちゃったんだよ。ほんとはもっと可愛い呼ばれ方をして欲しかったんだけどね~」
僕は直感した。
こいつはやばいやつだと。
普段から絶対普通じゃないだろ!
そしてどういうわけか、こいつとはいやでも関わり合いになるような気がしていた。
あとなんか、リーザとキャラがかぶっているような気がするんだよな……え? リーザが二人になるの? いやだな……
僕がそんなことを考えていると、ルナが困惑しながらアリアに聞いてきた。
「え……アリア? 本当にアリアなの……?」
「ルナが今まで何人のアリアという人と会ったのかは知らないけど、私はルナと冒険者をやってたことがある、あのアリアだよ。正真正銘」
アリアがそう答えると、ルナは大粒の涙をぼろぼろと流し始める。
「アリア~! 会いたかったよ~!」
そしてアリアに抱きついた。
まさに感動の再会といった雰囲気である。それにしてもルナはそればっかりだな。
しばらくして、ルナが落ち着いたところで、僕は気になったところを尋ねてみた。
「えっと、ルナとアリアはどういう関係なの?」
僕が問いかけると、ルナはどうしようと、困惑して目を回していた。
しまった、これは答えにくいやつだったか、どうしようと考えていると、アリアが答えてくれた。
「ん~とルナはね、私の命の恩人なんだ!」
……意外な言葉が出てきた。いや意外は失礼か。ルナは今まで多くの人を救ってきた。だからアリアを救っていたとしても不思議ではない。……ルナが、あの強いアリアを? どうやって? 想像がつかない。やっぱり意外だ。
「私は小さい頃、悪い奴に誘拐されて閉じ込められちゃったんだけど、そこを救ってくれたのがルナなんだ。だからルナにはすごーく感謝してるんだよ!」
「い、いや……それほどでも……」
とても信じられないが、ルナの反応を見る限り本当っぽい。まじか。
「それで私とルナはしばらく一緒に冒険者をやっていたんだ。それで私もいい歳になったから別れたんだけど、今日すごーく久しぶりに再会したというわけ。懐かしいね~」
「そ、そうだね」
そうだったのか。
でも、ルナの歯切れが悪いのが気になる。なにかまずいことでもあったのだろうか?
……そういえば、ルナとアリアは何歳なんだ?
聞けないけど。
「いやあ、本当はこのまま去るつもりだったけど、どうやら命の恩人のピンチらしいし、なんか帰れなくなっちゃったね。まあいいけど」
え? 僕はよくない。
でも戦力としてはあてになりそうだし、仕方がないのか?
ものすごく厄介な予感がするんだけど……
「いや、悪いよ、巻き込むのは……」
ルナもそう言ったが、
「大丈夫! 私がしたいだけだから! むしろここで断ったらいたずらしちゃうぞ~」
アリアのいたずら……シャレにならない……
「わかった。あそこにいるソニカって子がピンチなんだ。助けてほしい」
「オーケー! 任せてよ! 私がいるうちは、ソニカを危険な目にはあわせないよ!」
結局、ルナが依頼してアリアが受ける形で、アリアの同行が決まった。
なぜだろう。心強い味方ができたはずなのに、なぜか不安が消えない。……アリアがやらかしそうだという意味で。
どうか、何事もありませんように……
みーむ「ねえ、なんか出てくるはずのない人が出てきたような気がするんだけど」
彩人「……第9話に出てきたあの人だよね?」
みーむ「そう! しかもなんかキャラ変わってるし! 設定ミス?」
彩人「……一応設定ミスではないそうです」
みーむ「そうなんだ……でも、本編のボクたちは第9話の内容を知らないから、このことにも気づいていない、と」
彩人「そういうことになるね」
みーむ「一体どんな辻褄合わ……げふんげふん、せって……ごふんごふん、衝撃の事実が待っているんだ! ……ちゃんと考えてる?」
彩人「どうなんだろう……」
お読みいただきありがとうございます。
次も、火曜日に更新する予定です。




